Story Reader / Affection / バンジ·明晰夢·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.

バンジ·明晰夢·その1

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夏の始まりには、きまって激しい雨が降る

すでに蒸し暑いというのに気温は上がり続け、軒下で雨宿りをする皆の我慢も限界に達していた

今回の新兵訓練は特別な申請の下、地上の戦場で行っている。以前「シミュレーション訓練を実戦訓練に変えよう」という提案があったからだ

しかし、全員が重要な点を見落としていた――初夏、それは雨が最も激しく降る季節

この雨天ではあらゆる訓練の効果が得られないどころか、訓練装置が錆びるリスクさえある。今できることといえば、軒下で早く晴れるよう祈るくらいだ

噴き出る大粒の汗がまた地面に滴ると同時に、不満の声が上がりそうになった寸前――静かな声がぽつりと呟いた

雨、やみそうにないから一旦中止にしよう

先ほどまで必死に暑さに耐えていた訓練兵たちは、まるで赦免されたかのように歓声を上げた

明日のスケジュールは……ああ、明日から休暇か。じゃあ残りの訓練は休暇明けにね

じゃあ、これで解散。お疲れさま

興奮する訓練兵たち

よっしゃ――!!!

どうやら、バンジは厳しい指導者ではないらしい

中止と解散を告げられた訓練兵たちは慌ただしく散り散りになった。エネルギーに満ち溢れた若者がいなくなると、それまでむんとしていた訓練場が一気に冷え込む

今、ここに響くのは屋根をたたく雨の音だけ

バンジは荷物をまとめながら、こちらに声をかけてきた

君も基地に戻るの?送ろうか?

うん。前に教わったから大丈夫

了解。ふわぁぁ……

あくびを頻発する白い構造体を見ていると、少し心配にならざるを得ない

バンジはまた軽くあくびをした

問題ないよ。君が隣にいたら、そう簡単に……眠ることは……

バンジは瞑りかけていた目を開け、気怠げに背伸びをした

ふわぁぁ……そうだね

……やめて、その話は禁止

そうだな……静かな場所で籠りたい、かな。多分他の任務を振られるだろうけど

君は?

その答えを肯定するかのように、バンジは小さく頷いた

パニシングがなかったら実現できただろうけどね

目を伏せながら呟いたその言葉が、真剣に言ったものなのか、口にしただけのものなのかはわからなかった

でも、そんな変化のない毎日は……

退屈だと思う?

だよね。僕もそんな生活が楽しみだよ

そう?僕は結構楽しみなんだけどな

静かで、平穏な未来がひと目でわかるような……そんな当たり前の安寧が愛おしいんだ

……

バンジとの世間話は、あの後すぐにやんだ雨のように一瞬の出来事だったように思える

空中庭園に戻ってからというもの、多忙を極め――

あれよあれよという間に地上での合同訓練は終わり、無事に全ての訓練任務を終えた

訓練報告書を持ち、会議室のドアをノックしようとした矢先に勢いよくドアが開かれる。驚いた様子のカムイの後ろには、ストライクホークのふたりが立っていた

びっっっくりした!!!指揮官!?何してんの!?

指揮官?君も報告書の提出に?

相変わらず苦労が絶えないな

ここにいる構造体は3人――いつもの白い構造体が見当たらない

バンジならまだ任務から戻ってないぞ

任務に出て、しばらく経っているのですが……最近は映像もあまり送られてこないので、何をしているのかもわからない状況で

その返事を聞き、いつぞやのバンジとの会話を思い出さずにはいられなかった

そうだ!昨日送られてきた映像があるからさ、見ていけば?

その問いかけに反応する前に、カムイは端末のホログラム再生画面を開いていた

映像はとても鮮明で、古代九龍の建築構造が確認できる

バンジはカメラに背を向け、子供たちに囲まれて遊んでいた。映像越しにでも、その人気っぷりが伝わってくる

しばらくして、バンジは横目でカメラを見遣ると、あくびをしながら手を伸ばした

よし……これで報告は十分かな……

ブツッ――

ホログラムは終わった

……ま、映像っていってもこれだけなんだけど!これじゃあ任務報告っていうか、安否報告だよな?アイツって本当にマイペースというか何というか……

俺たちにまで秘密主義を貫く必要はないと思うがな

もしかして、バンジに急ぎの用でもおありでしたか?

クロムは小さく微笑んだ

確かにそうですね。「冬眠休暇」を私に却下されて以来、完全に休めた様子はありませんし……

今回の任務から戻ってきたら、その時に――

セリカ

やっと見つけた……!!!

ドタバタと大きな足音を響かせながら、作戦報告書の束を抱えたセリカが入ってきた

[player name]、ここにいたんですね

「目標」である自分にまっすぐ向かってくるセリカ――自然と溜息が出る

確かに新たな任務をお伝えするために来ましたが、今回の任務は「心身養生の短期休暇」ともいえるほどに気楽なものですよ

え……何ですかその疑いの眼差しは……

俺たちの神聖な「休暇」は、どう足掻いても「任務」と結びつかないんだって!

休暇が取れないのなら、いっそのこと休暇を与えるな

百聞は一見に如かず、ですよ!まずは任務概要をご確認ください。今回は大丈夫ですから

他の3人の熱い視線を浴びながら、セリカから渡されたファイルに目を通す

任務詳細:原生林の植物サンプル採取のため地上へ向かう科学理事会メンバーの補助

難易度:極めて容易

期間:1週間~数カ月(未定)

確かに見た感じは気楽そうな任務だけど……

指先で文字を追っていると、右下に小さく任務地が書かれていた。そこは誰も話題にしないような未知のエリア――

任務地:九龍付近の保全エリア、南蕴古町内