Story Reader / Affection / 常羽·遊麟·その6 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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常羽·遊麟·その6

——ポタッ

温かい液体が頬に流れる。耳鳴りの中、目を開けるとそこにあるのは月の光だけだ。先ほどまでいた部屋は跡形もなく消えていた

辺りを見るため体を起こそうとしたが、何かが体に乗っていてできない。頬に落ちた液体はどうやらそこから滴っているようだ

見下ろすと常羽が体の上に倒れ込んでいた

指揮官ッ!!

よく知る声が聞こえる。力を振り絞ったルシアが最後の守衛を倒すと、3人はこちらに向かってきた

さっきのは閃光弾でした。全員無事です

チェック開始……意識海損傷なし、機体にも致命的ダメージはありません。この循環液はおそらくさっきの戦闘の傷かと……

おい、指揮官の上にいつまで倒れている?

リーはしかめっ面で常羽の襟もとをつかみ、その身体を持ち上げた

……繊細な少年への優しさとかってないの?

繊細な少年?誰が?

リーが手を放すと常羽は少しよろけながら壁に手をついた。更に手で目を擦り、循環液を拭き取ろうとした

閃光弾だったのか……カウントダウンを聞いた時はあいつがイカれて俺たちを道連れに自爆したのかと思った

逃げました。閃光弾にビビった誰かさんが、壁を全部破壊しましたからね

ハハ、誰だってミスはするさ

構造体だろうが、細かいことをいちいち気にかけてたら意識海がごちゃごちゃになるぞ

そんなことあってたまるか!

立ち上がると、先ほどの守衛ロボットが全部倒れていることに気づいた

指揮官と常羽が気絶している間、我々で守衛ロボットは全部片づけました……そもそもあまり数は多くなかったんです。ここは本部じゃないのかもしれません

あいつらにとって、ここはただの臨時拠点さ

状況を説明してもらえますか?

え、と、それは……

常羽は申し訳なさそうに頭を掻いた

黙っててごめん

実はみんなが初めて港に来た時から、見張られてたんだ

商人同士のイザコザに、まさか空中庭園が介入するとは思わなかったんだろう

俺が知り合いだとわかると交換条件を出してきた。「空中庭園のやつらを始末してくれたら、不平等条件をいくつか解消する」って

ま、もともとはその不平等な条件に同意しないと、ブツがもらえないって話だったんだけどさ

常羽はかたわらのスーツケースをあけ、中にある識別器を取り出して仔細にチェックした

うん……大丈夫。守衛ロボットに襲われた時も、しっかり守ってたからな

大事なもんだから

大切なもんには優先順位があるんだよ……

それに、俺の目的はお互いの利益だ。どうしてもひとつしか選べないなら、これはいらない

常羽は手に持っている識別器を指して小声で言いながら、崩れた廃墟の瓦礫の上に座った

教えたらやってくれた?

だろ?絶対断られるから、言わなかったんだよ!

指揮官がやってくれても、他の3人はどうかな?

計画とは一体何のことです?

待てよ!無事にすんだだろ?

計画なんてどうでもいい。大事なのは[player name]が無事に戻ることだ

欲しいのはこれだろ?

常羽は資料を転送してきた

さっき届いた。ソフィアが「掃除」したあとにまとめた名簿だってよ。これがあればあいつらの本部を調べられるだろう?

そう。倉庫にある混入品をチェックできれば、取引も無事再開できる

え?忘れたの?俺が言った3つ目

常羽は3本の指を上げ、手を振った

[player name]を守ると言ったら守り切る。約束だから

利益にしか目がない「商人」のことを言ってる?

確かにアディレだけを考えれば、さっさと撤退すべきだったかもしれない

だけど任務を実行するのは俺だ。俺にとって識別器より指揮官が重要で、その安全は最優先だ

指揮官を信じてるし、自分の力にも自信がある。だからきっと双方にとっていい結果になると思った

えっと……うん

常羽は少し照れながら笑った。早とちりを恥じているようだ

とりあえず、無事でよかった

ボスは逃がしたけど、追跡すんのを手伝ってくれるだろ?

よし、今回の作戦は一石二鳥だったな

いや、一石三鳥か……

不思議に思って常羽に視線を向けると、常羽は慌てて視線を外した。何かぼそぼそと言っているようだ

しっかり収穫はあったんだけど、商人ぽくないか……

いや、なんでもない。任務も終わったし、先に報告に戻る。バイバイ!

常羽は皆に手を振り、瓦礫の上に飛び上がった。そこで足を止め、振り向いた

じゃ、また会えることを期待してるよ、[player name]

常羽は微笑んで、そして手を挙げて別れの挨拶をしてきた

次に会う時は、手に何も隠してないことを約束するよ

そう言うと常羽は何か重荷を下ろしたように軽快に飛び降り、あっという間に全員の視界から消えていった……