PM. 02:46 西海岸、廃棄された港
最近、複数の拠点で倉庫の補給物資が立て続けに破壊され、偽物が混入されている。ある協力要請に対し、空中庭園側としても出動せざるをえなかった
他の小隊は長期任務についており、この支援任務をグレイレイヴンが引き受けることになった
手がかりを追って、ついにこの廃港にたどり着いた
潮の香が混じる夜風の中、民家の間を通り抜け、無人の港に向かっていたはずだが……真夜中にもかかわらずあたりが騒がしくなってきた
IDは?
守衛らしき男が行く手を阻む
確認してください
ルシアは事前に準備したIDを差し出したが、守衛はそれをひと目見て鼻で笑った
ここで待て
しばらくすると守衛はIDを持って4人のもとに戻ってきた
最近IDの情報漏洩があったらしくてな。これだけじゃだめだ。他に何か身分証明はあるか?
もちろん4人がIDの情報を盗んだ張本人だ。まさかすでにばれて対策されているとは思わなかったが
集会の参加者には全員に例の物を配ってあるはずだが
ボスが配ったと言ったら配ったんだ
守衛は武器に手をかけ、疑いの目で4人を睨んだ。このまま言い争いを続けるとただじゃ済まないと言わんばかりだ
ここでバチバチやりあっててもしょうがない。さっさと帰りな
グレイレイヴンの4人は一歩下がり、身をひるがえして帰ろうとした
その時、風が吹いて後ろの通行人が深々とかぶっているフードがめくれ上がった。どこかで見たような目だ
少年の隣にはひとりの男が立っていた。その名を聞いて、男はフードの少年を見る
少年の隣にはひとりの男が立っていた。こちらの視線に感づいて足を止め、フードの少年を見る
顔見知りか?
男が少年の胸ぐらを掴むとかぶっていたフードが落ち、少年のとってつけたような笑顔があらわになる
常……
今は名を呼ぶべきではないと気づいたリーフはあやうく口をつぐんだ
おい、喧嘩はやめろ。あいつらは例の物を持っていない。お前らは持ってるか?
ここにある!ほら、手を放してくださいよ。ちゃんと見せるから
男は常羽から手を放した。ふたりは九龍風の古銭を取り出して見せる
なるほど、どうやらここは九龍と関わりがあるようですね
もとは夜航船の人たちかもしれません
守衛は念入りに古銭をチェックしており、こちらのささやき声には気付いていないようだ
問題ない。しかし2枚だけか?じゃあこいつらは何者だ?
あー、それはわかんない
守衛と男は常羽を疑いの目で見ている
俺たちは商人だぜ?あちこち仕入れで奔走してる。顔を覚えられることだってあるさ。この人たちの「事情」までは知ったこっちゃないけど
常羽は不愛想に振り返りつつ、こっそりとウィンクを寄越した
悪い、このおじさんとまだ用事があるんだ。商談なら、また今度にしてくれ
いいか、もし嘘をついていたら、お前らは——
はいはいはい、スパイ200人で押しかけて列車をぶっ壊すんだろ?
いいか、アディレがここにいたら、俺たちの出番はないだろ?
彼はつま先立ちでその男の肩を叩き、笑いながら血清を1本渡した
ほらあげるよ、落ち着けって。ここはお前の方が慣れてるだろ?案内してくれよ
こいつらは?
常羽はグレイレイヴンの4人に視線を向けながら、またもやウィンクした
さぁね。家に帰るしかないんじゃん?
空を覆う厚い雲から雷鳴が轟く。暴風雨の前兆だ。4人は互いに視線をかわし、廃港を後にした
せっかく掴んだ糸が切れましたね
今は勝手に行動しない方がいいでしょう。列車を爆破するとか言っていましたし
あの古銭の入手方法を探します……なんとかして常羽と合流しましょう
待って……常羽からメッセージです
「俺の秘密基地で待っていてくれ」
秘密基地?
……座標もあります……ここから45km離れた地下倉庫のようです
ええ。行きましょう