Story Reader / Affection / ヴィラ·灼魍·その2 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.

ヴィラ·灼魍·その1

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あの日……魔王が闇の城に降臨した……

その魔王を誰も直視することはできないの。だって、ひと目見ただけで怪物に変えられてしまうんですもの!

私たちは先祖代々暮らしてきた故郷を離れるしかなかったの!

幸いなことに、予言の「あの人」が現れた。生まれながらにして全ての闇を打ち破る力を持っている「あの人」なら、きっと魔王の圧制を終わらせてくれるはずだ!

大袈裟な調子で歌う3人の村人たちは「あの人」を一斉に持ち上げ、高く胴上げした

どうかお願いです。恐れを知らぬ強き勇者よ――

我が村に伝わる至高の剣を手に、城へと向かい、魔王の討伐を!

そぉれ!

脇で鍛造に集中していた鍛冶屋は低い声で唸り、真っ赤に焼けた「勇者の剣」を火床から挟み上げ、水の中に入れて冷やした

それを見た勇者は考え込んだ

システム

質問は禁止されています。モデリング素材、制限あり。私の言葉がルールです

微かな頭痛とともに、頭の中で機械的な音声が響いた

システム

ルールに厳格に従ってください。『勇者と魔王城』のシナリオ及びキャラ設定の崩壊は厳禁。さもなくばペナルティが与えられます

システム

ゴールドフィンガーシステム、完全開放

システム

[player name]、すぐに旅へ出てください

勇者は「村に伝わる至高の剣」を携え、3日間の苦難の旅の末に、ついに荘厳な城の前までやって来た

茨に覆われた巨大な城は、夜の闇の中でいっそう不気味に見える。噂によると、ここに魔王が住んでいるらしい

問題は――城の正門は確かに目の前にあるのに、どれだけ茨を切り払っても大きな門に近付くことができない

「ひと目見ただけで怪物に変えられてしまう」という魔王が一体どんな存在かわからないが、手にした武器を握りしめ、直接対決する覚悟を決めた

茨の茂みから、システムによって音量を上げられた「ひそひそ声」が聞こえてきた

<size=30>兄貴、あれが「あの人」?</size>

<size=30>間違いねぇ。手に持っているのはまさに「村に伝わる至高の剣」だ。あいつが魔王様のターゲットだな</size>

<size=30>合図を出すまで待ってろ。あいつが俺たちに近付いてきたら、飛び出して……</size>

うわあああ!

「兄貴」の言葉が終わらないうちに、ひと筋の眩しい剣光が空中から現れた。勇者の顔がふたりの悪役の前に突如現れ、手に持った「村に伝わる至高の剣」が燦然と輝いている

勇者は鋭い眼差しで、茨の茂みに隠れたふたりに武器を向けた

兄貴、魔王様の計画と違――

黙ってろ!

勇者はふたりの護衛を瞬時に観察し、たどたどしく話す方の護衛に武器を向け、対等に話せる方の護衛と交渉することにした

……俺はティクノス、こいつは12号だ

ザザ――!

激しい耳鳴りが頭の中で鳴り響き、勇者の言葉を強制的に中断させた

システム

不要な質問は禁止されています。勇者は余計なことをせず、魔王の居場所を訊いてください

突然の激しい頭痛に苦しむ勇者――バーチャルシナリオで勇者を演じる者は、苛立ちを抑えてシステムの指示に従うことにした

い、いないよ?

12号の目が泳ぎ、勇者の背後にちらりと視線を向けた

頭の激痛が勇者の感覚を鈍らせることはなく、勇者はすぐに異常を察知した。足下にゆっくりと広がる蔓、そして背後から吹く風の音――

しかし、すでに手遅れだった

これが魔王様の命令だ。お前をここに誘い込むだけで、十分だったんだよ!

アハ。やっぱりノコノコやってきたわね

ま、魔王様!

黒と赤の激しい風が背後から吹き荒び、一瞬でこの茨の茂みを平らにした

勇者は反射的に「村に伝わる至高の剣」を振り上げて抵抗しようとしたが、同時に黒と赤の影に胸を強く殴られた

胸から窒息感が広がり、一気に視界が暗くなった

意識を失う前――最後に見たのは、あのふたりの護衛の得意げな顔だった

さすが、魔王様

ハァ?これは俺が魔王様に提案したアイデアだろ!

ふたりとも黙りなさい。さっさとこのおバカさんを城に連れていって

思考が完全に中断され、意識が遠のく前に頭をよぎったのはただひとつ――「ゴールドフィンガーをもっとがっつり使うべきだった」

でも……まあいい。ただのバーチャルシナリオだ。想定外の失敗をしたのだから、強制退出させられるだけ――

ポタッ

ポタッ

どれくらい時間が経ったのかわからないが、意識が少しずつ戻ってきた。暗闇の中から微かな音が聞こえてくる

単調な水滴の音が響く暗闇の中、まとまりのない思考が少しずつ形を成した

必死に意識を集中させ、目の前の微かな光に目を凝らす。わかったのは、目の前の光景に見覚えがないということだった

狭い空間、頑丈な鉄の扉――どう考えても、ここは世界政府芸術協会のバーチャルシナリオ体験エリアではない

頭のバーチャルリンク装置が機能しているか確認しようと手を上げたその時、手首に違和感を覚えた

――頑丈な手錠で拘束されている

先ほどのプロセスで失敗し、魔王に会えなかった時点で強制退出させられたはずだ

しかし今、自分はまだバーチャル空間にいる。しかも、どこかの「牢屋」に閉じ込められているようだ

ジェスチャーで操作しても、手錠はビクともしなかった

目の前の光景には何の変化もない

おかしい、何か問題が起きたに違いない。世界政府芸術協会で聞いた言葉が頭に浮かんだ

『勇者と魔王城』は芸術協会が作った最新のバーチャル体験プロジェクトよ。ストーリーは単純だけど、戦闘プロセスが面白いの!

シナリオ内の体験は全部リアルに作られてるわ。没入感が高いから、きっと指揮官の期待を軽く超えるはず!

体験時間もそう長くないわよ。城に行って魔王を倒すだけ

もし戦闘に負けても大丈夫。システムが自動的に退出させてくれるから

途中で問題が発生した場合も、強制退出することになるし……とにかく、[player name]にこのシミュレーションシナリオのテストに協力してほしいの!

面倒だが、少なくとも自分に実害は及ばない。これはあくまでバーチャルだから

周囲を見渡すと、目の前の全てが細部まで鮮明に再現されていた。高度なシミュレーション技術によって、現実との区別がつかないほどリアルに演出されている

鉄格子、地下牢特有の湿ったカビ臭、手錠から伝わる圧迫感……全てがリアルに迫ってくる。没入感たっぷりだ

強制退出もできず、ゲーム内のインタラクションボタンも全て無効になっている。つまり、この状況を脱するには別の方法を考えるしかない

手首のとてもリアルな擦り傷を観察した。微かな痛みの感覚までシミュレートされている

システム

賢くて機転が利く勇者は、手首の擦り傷を見て新たなアイデアを思いつきます

システム

アイラが言っていました。あなたがシナリオを終わらせてくれると。時間はそうかかりません、頑張ってください

システムは感情のない声で、意味不明な言葉を投げかけた

頭を下げて、手首の擦り傷をもう一度見る

アイラの「体験はリアル」という言葉通り、これを「リアル」な困難として解決するなら……

すぐに、地面の瓦礫の中から1本の針金を見つけた。ファウンスの「開錠技術」講義を思い出す

慎重に針金を手錠の鍵穴に通して動かすと、すぐに開錠される音がした

手錠が床に落ちると同時に、網膜に初めて見るシステム通知が浮かび上がった――拘束を解いたことで、クエストの進度が更新された

メインクエスト目標:地下牢脱出 進度(1/2) 魔王好感度:0 クリア目標:魔王好感度100 カウントダウン:52時間

テキストを読んだ瞬間、違和感が湧き上がってきた。何か変だ

アイラの説明によれば、これは勇者が魔王を倒して世界を探索するシナリオのはずだ。いつから好感度を上げる恋愛ゲームになったのだろう?

しかも好感度を上げる対象が、魔王?

しかし、反応はない

うるせぇなぁ……何を騒いでんだ?

ティクノスと12号が姿を現し、警戒した目でこちらを見ている

兄貴、こいつは空中で何を押してるの?

何ブツブツ言ってんだ……気でも狂ったのか?さっき、魔王様が殴ったのは胸だったよな?

12号は手を伸ばし、こちらが熱を出していないか確かめようとした

おい、触るな。勝手に動くなって。罠かもしれないぜ?もう手錠を外してるみてぇだし

残念だが、策略する人間には慣れっこでな。どんな病気に罹ってても関係ねぇ。警備を強化するだけだ

護衛はチェーンを持ってきて、牢屋の扉を雁字搦めにした

メインクエスト目標:地下牢脱出 進度(0/2) 魔王好感度:0 クリア目標:魔王好感度100 カウントダウン:52時間

苦労したのに、進度が0に戻ってしまった

「バーチャルシナリオ」の形でインタラクションを試みる計画は完全に失敗した。こうなると現実を受け入れるしかない

これまでの経験でわかったのは、物も人も便利なバーチャルインタラクション方式では目的を達成できない――つまり、それらを「リアルな存在」とみなすしかない

こうなった以上、本当の実力で「クリア目標」を達成するしかない――そう、魔王の好感度を100に上げることだ

魔王が何者であれ、前に進むためにはまず目標と接触しなければ

お前の企みなんてわかってんだよ。黙っておとなしくしてろ。でないと痛い目見るぜ?

……はぁ?誰がそんなデマを流したんだ?俺たちは「魔王様は太陽のように眩しくて直視できない」って言っただけだ

忌々しい人間が、魔王様に嫉妬して、くだらない嘘をついた

魔王様が慈悲深いからこそ、お前はここで目覚められたんだろ?

魔王様は慈悲深くて、威厳があって……

太陽のように眩しくて、直視できないんだぜ……

ふたりの護衛は自分たちの世界に浸り、主人について延々と賛美し続けた

その時――遠くで足音が響き、この独りよがりの寸劇を中断させた

護衛たちは固く口を閉じ、恐怖に満ちた表情で後ろの暗闇を見つめた

ま、魔王様……!

……敬礼!

足音の主が暗闇から姿を現さないうちに、護衛は冷や汗を流しながら敬礼して固まっていた

近付いてくる足音が風を起こし、地下牢の松明の光がそれに合わせて揺れる。足音はどんどん近付いて大きくなり、狭い空間で反響した

??

どうして……

ここで不満を言う資格があると思うわけ?敵意を持った「来客」のくせに

私に直々に出向いてきてほしかったの?それとも、私がこの手であなたに与える死を渇望しているとか?

こちらに向かって、暗闇の中を歩いているのがはっきりとわかる

目に見えない威厳のオーラに怯えるように、護衛は敬礼の姿勢を保ったまま、視線を上げる勇気もないようだった

地下牢の薄明かりの中で、顔は見えないが、その赤い髪は闇夜に咲く薔薇のようだった

彼女は顔を横に向け、牢屋にいる勇者に意味深な視線を向けた

??

<M>彼</M><W>彼女</W>を出して

かしこまりました

護衛が牢屋の扉を開けると、錆びた扉がギィーっと音を立てる。勇者は1歩踏み出して、ついに自由を手に入れた

??

私の城に侵入したネズミ……

名前は?

答えを聞いた彼女は勇者に1歩近付いた。微かな光がようやく彼女の顔を照らした

彼女は冷たい笑みを浮かべて目の前の光景を眺め、脇の護衛は恭しく頭を下げている

しかし、勇者は彼女に頭を下げず、ただ唖然と彼女の顔を見つめていた

彼女の口元に笑みが浮かんだ

勇者は何度も想像した。「ひと目見ただけで怪物に変えられてしまう」という魔王が、一体どんな姿をしているのか――

ザザザザ――!!

再び激しい頭痛が襲ってきた。前回よりも何倍も激しい

システム

警告、重大なキャラ設定崩壊が発生。勇者は魔王を知りません

システム

再度警告します。シナリオ及びキャラ設定に、厳格に従ってください

勇者が激痛に苦しんでいるのを、魔王は目を輝かせながら眺めていた

ヴィラ

私の名前を口にしただけで、そんなに大きな反動がくるの?大袈裟ね

私の名前を呼ぶ……それが何を意味するかわかってるの?

勇者はもがきながら顔を上げ、対立する立場にある魔王に手を伸ばした

パンッ!

魔王は勇者の震える手を払いのけた

ヴィラ

……黙りなさい

先ほどの一瞬は幻覚だったようだ。魔王はすぐに隙のない横柄さを取り戻した

ヴィラ

アハ、答えたくないの?どうやら、ただの口八丁なネズミじゃないようね

ヴィラ

それなら、もっと楽しいことをして遊びましょう

彼女の手に銃が現れた――それは「村に伝わる至高の剣」だった。魔王を倒すための宝刀が、魔王に没収されていた

銃を持った彼女は銃身を頬に滑らせ、楽しげな表情で目の前の人間を見つめた

そして、ゆっくりと目の前の人間に銃口を向ける

ヴィラ

私に敬礼しなさい

ヴィラ

フン……やっぱり私を喜ばせる気がまったくないのね

ここでは、私に従わない人間は無用のクズよ。代償を払ってもらわないとね

さよなら、[player name]。地獄で自分の過ちをよく反省するのね

このヴィラが自我を持っているのか、どのような行動を取るかを予測するのは不可能だ。勇者は彼女が向けた銃口を本能的に避けるしかなかった

このヴィラが自我を持っているのか、どのような行動を取るかを予測するのは不可能だが、微妙な予感が心をよぎった

勇者は微動だにせず、ただ冷静に彼女の銃口を見つめている

バンッ!

大きな音とともに、銃口から色とりどりの紙吹雪が飛び出し、ひらひらと人間の周りに舞い落ちた

紙吹雪が舞い落ちる中、魔王は再び満足げな笑みを浮かべた

彼女は人間に近寄り、指で人間の頬を軽くなでた。まるで、ゲームの始まりを告げるかのように

ヴィラ

本当に肝が据わっているのだと思っていたけど、ただの虚勢だったのね

そうでしょう?私の戦·利·品?

アハ……囚われの身として、私の遊び相手になるのよ。覚悟しておいて

……あなたを見くびっていたようね。いい度胸してるじゃない

ますますあなたに興味が湧いたわ、私の戦·利·品

アハ……囚われの身として、私の遊び相手になるのよ。覚悟しておいて

彼女の言葉とともに、再び勇者の網膜にシステム通知が現れた

メインクエスト目標更新:地下牢脱出 進度【完了】 魔王好感度:-10 クリア目標:魔王好感度100 カウントダウン:51時間

「勇者」――グレイレイヴン指揮官は初めて見る塗装をまとったヴィラをまっすぐに見つめ、大きくため息をついた

「魔王好感度100」という目標を達成するのは、想像以上に難しいかもしれない

傍らで敬礼の姿勢を保っている護衛は、勇者の軽率な行動がトラブルを招くのを恐れて、何度も勇者に目配せをした

何か言いたいことがあるみたいね?

メインクエスト目標更新:指定好感度目標【魔王ヴィラ】に接触 メインクエスト進度:【完了】 魔王好感度:-10 クリア目標:魔王好感度100 カウントダウン:51時間

『勇者と魔王城』のクエストは、今やアイラが言った「魔王を倒す」という単純なものではなく――

システムが定めた時間内に「魔王」ヴィラの好感度を上げることに変更されている

このバーチャルシナリオの中では、彼女が全ての支配者だ

シナリオ内の体験は全部リアルに作られてるわ。没入感が高いから、きっと指揮官の期待を軽く超えるはず!

「期待を軽く超える」……本当に、あらゆる意味で期待どころか想像を絶する

これが芸術協会恒例の自由なスタイルか……

答えなさい、[player name]

勇者が黙っていることに苛立ったヴィラは、手を伸ばし、勇者の顔をぐっと強引に自分に向けさせた

まともな会話もできないの?何とか言いなさいよ

護衛の「受け売り」の言葉を口にした時、少し後ろめたさを感じた

へぇ……

ヴィラは目を細めた

歯の浮くようなお世辞だこと。本当にくだらないわね

口先だけの薄っぺらい言葉じゃ満足しないわよ

証明してみせなさい。「戦利品」として、私の手の中で生き抜く覚悟を

ヴィラは背を向けて歩き始めた。去り際に言い放った戦利品への言葉には、温もりなど微塵も感じられなかった

<M>彼</M><W>彼女</W>を一番高い塔の屋根裏部屋に閉じ込めておきなさい

私の許可がない限り、部屋から1歩も出ることは許さないわ

そうだ……明日目覚めた時、真っ先に<M>彼</M><W>彼女</W>の顔が見たいわね

少しでも不手際があれば、命はないものと思いなさい。わかった?

かしこまりました!

勇者はふたりの護衛に地下牢から引っ張り出され、果てしない階段を上り、城の塔の上にある部屋に連れてこられた

小さな部屋には簡素な調度品しかない。窓に格子はないが、高さからして窓から脱出できないのは一目瞭然だ。それに、城の外壁は茨で覆われている

おい、[player name]……だったか?妙な真似はするなよ。俺たちがずっと扉の前で見張ってるんだからな

少しでも妙なことをしたら、俺の拳が黙ってねぇぞ!

兄貴、かっこいい

目の前で扉がバタンと大きな音を立てて閉まり、システム通知が再び表示された

メインクエスト目標更新:指定好感度目標【魔王ヴィラ】に接触 メインクエスト進度:【完了】 新クエスト目標:ベッドで休憩 進度【進行中】 魔王好感度:-10 クリア目標:魔王好感度100 カウントダウン:50時間

勇者は再び「囚われの身」となった。システム設定により、休憩以外の操作が一切できない

そして、ずっと緊張していたせいで眠気が襲ってきた。勇者はバーチャルシナリオのルールに従い、今日を終了することにした

ふかふかの羽毛のベッドに横になり、目を閉じた途端、意識がぼんやりし始めた

深い眠りに落ちる前、最後に頭に浮かんだのはヴィラの言葉だった

ヴィラ

そうだ……明日目覚めた時、真っ先に<M>彼</M><W>彼女</W>の顔が見たいわね

口先だけの薄っぺらい言葉じゃ満足しないわよ

証明してみせなさい。「戦利品」として、私の手の中で生き抜く覚悟を