Story Reader / Affection / ヴィラ·緋耀·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ヴィラ·緋耀·その5

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指揮官、生き延びたいのね

教えたあの事実のためにも、絶対に死なせない

――気がつくと、光が見えた

優しい光ではなく、少し眩しく、強烈で、そして少し……乾燥している

光の方向はさまざまだった。しかし、しばらくして徐々に集まってきた

それは人の顔を形作った

やがて、ヴィラの顔が視界全体を占めた

アハ、[player name]、気がついたのね

瞳孔の状態からして、そろそろ目を覚ますころだと思って、ちょっといたずらしようと思ったのよ

いいわね。質問できるんなら、回復しているということね

あなたはもう死んだの。ここは天国なのよ。ご気分はいかが?

アハハハ、でもなんて運が悪い指揮官なのかしらね。この天国で迎えてくれるのは、天使ではなく死神だなんて

ヴィラは笑いながら、横のベッドに腰かけた。そして目をしかめるようにしてこちらを見た

言ったじゃない?天国よ

……はぁ、興ざめね。ここは医療テント。さっきまで数十人いたけど、今はあなただけよ

正確には、あなたが目覚める前、数十人に囲まれていたの。でも、私が患者には静養が必要だって言ったら、彼らは自ら去って行ったの

彼女の話を聞いて顔を横に向けると、ベッド脇の地面に足跡がたくさんついているのが見えた

足跡はベッドの周りを取り囲んでいた。枕元には数本の小さな花が置かれている。遠くの方にも数十本の花が落ちていた

新しく建設された保全エリアで生活する住民たちにとって、花はお見舞いの気持ちを表す最善の方法なのだろう――ヴィラはそのほとんどを雑菌がいるといって処分していたが

かなりの人気者なのね。あなたって

知り合って数日なのに、皆かなり心配していたわ。アハハ、空中庭園の言い方だと、これって「ピュア」っていうのかしら?

そう?

ヴィラはそれ以上何も言わず、ただ横に座って、指に髪を絡ませていた

……なぜあの薬を使うことを拒んだの?

突然、彼女は手を下ろし、低い声で言った

あの強心剤よ、忘れたとは言わせないわ

あの時、周りには廃棄された構造体だらけだったわ。1、2体をちょっと壊して自分の命が救えるなら、十分割りに合ったでしょう?

あの時、薬を使ってれば、キャーキャー叫ぶような痛い手術を受けなくて済んだのに。今、バカみたいにベッドに縛りつけられることもなかったのに

アハ……まさか、真に受けたの?

ヴィラは顔を上げて微笑み、いかにも楽しげな表情になった

こんな風に命を救える重要な薬剤、当然人間に持たせるべきだと思わない?構造体の体に隠すなんて変じゃない?

軍医もバカじゃないから、本当にそんな薬があるのなら、隠す医者なんていないわよ。こんな重要なことが永遠に秘密になるわけがない

戦場で後方支援をする医者が「死者の尊厳」のために、人を命を救うことを拒むなら、すぐにクビね

ふふ……賢いわね

確かに、もっと早く気づくべきだった

本当に命を救う薬なら、人間に持たせるべきで、構造体の機体中に隠すなど不自然極まりない

戦場では兵の命が何よりも重要だ。もし、人を生き返らせる術があるのなら、それはすぐに広まるだろう。あれが事実だとして噂にすらなっていないのは奇妙すぎた

逆弁膜スケール抑制剤はただのジョークよ。あれは、ここのスカベンジャーたちから構造体へのプレゼント。一種の装飾品ね。アハ、液体のアクセサリーなんてロマンチックだわ

そうねえ、なぜかしら?

戦場で全力を尽くさずに、天から何かが降りてきて命を助けてくれることを期待している様子を見て、なんだか馬鹿らしくなっちゃったのかもね

人に振り回されるのが好きみたいだから、ちょっとジョークで話を盛ってあげようと思って。楽しかったでしょ?

ふふ、どうかしらね?あなたが悩んでいるのを見て、話してみるのが楽しみになったわ

予想外だったのは、あなたの反応――思ったよりつまらなかったわ

命の危機に瀕して、グレイレイヴン指揮官が泣いてあの薬を乞い求める姿が見たかったのに

ふん、そんなことしないってわかってるわよ。あなたは[player name]なのよ、あの空中庭園の「首席」さん

ヴィラは両手を広げ、首を傾けて再び笑ったが、いつものようにもったいぶっていなかった。口角を少し上げて、保全エリアで演じた「同行の構造体」と同じ表情をしている

深い意味などなく、自然に口から出ていた

ヴィラは目を大きく見開いて、意味不明な質問をされたというような表情を見せた

そして、大きな目に冷やかな笑いを浮かべた

もちろん、助けるわよ

あなたに、あんな愚かな希望を与えたんだから、助ける責任がある

どこに行こうとも、どんなに面倒な手術であろうとも、手術中にどんな悲鳴をあげようとも、助けるわ

もちろん、あなたがあの逆弁膜スケール抑制剤のために命を顧みない行動をしていたら、面倒だけど、ルール知らずとしてあなたを排除したわね

そう話しながら、ヴィラは指を1本立てて、首を切る仕草をした

彼女の言葉は、まるで宣告をするように重々しかった。彼女の表情はなおも冷たく、見ているだけで背筋が凍るほどだった

これは、ヴィラの最も本質的で真摯な考えだろう――いや、彼女はいつも率直に表現する。ただ、その薔薇のような真の心に、人が触れない棘が存在するのだ

しかし今、自分は少しずつ手探りながら、その棘の根の部分、細い花の枝に触れようとしている

……どうしたの?怖くなっちゃった?他の仕事が終わる前に命を落とさないよう、ここで横になってれば。あのデカいのは排除したから、もうあなたの仕事はないわ

この任務が終わったら、あなたもアットホームな小隊に戻ることができるし、またあなたと同じように間抜けな構造体のお仲間に、秘密を話すことができるわね

あらら、口が滑っちゃったわね

ヴィラは微笑みを浮かべ、再び楽しげな表情になった。本当に口を滑らせてしまったのか、それとも、わざとこう質問をさせるように仕向けたのか、その区別は難しい

せっかく考えたんだから、ちょっとでも多くの人で試したいじゃない?

あなたが何人目の指揮官かは覚えてないけど、でも、あなたより前にこの話を聞いた人たちは、誰ひとり生き残らなかった――アハ、嘘よ嘘、全員元気よ

でも、あの人たちは皆あなたと同じく、殴ってやりたいくらいに退屈だった

そうね……彼らは皆、この話を忘れることを選んだわ

自衛のためなんでしょう。この話をすると、誰もがおとなしく、誰にも言わない、そして使わないと言った

彼らは、この秘密を胸に、どんなに危険な目に遭っても話さなかった。そしてあなたのようにベッドでじっと横たわる。アハハ、本当にバカで、退屈なの

それに、その理由にとして――ふふ、あの人たちのうち、何人かはあなたの名前を口にしたわね

なかなかのリーダーシップじゃない。というよりは、あなたは彼らの「旗印」なのよね?

そうね、確かに、馬鹿馬鹿しくて退屈だけど、別に悪くはないわ

でも、楽しみが減るのよね……

カチャン。ベッドが下げられ、上半身が急に下がった。しばらく眩暈がする。薄暗い光の中で、ヴィラの影が自分の前に迫ってきた

私の楽しみを奪ったあなたから、取り戻さないといけないわね?指揮官の間抜けな「旗印」さん?

さぁ、患者さんはもう消灯時間よ。明日まで絶対に安静。動かないでね

言っておくけど、ここにはあなたに使える麻酔剤はないの。覚悟してね、愛しい指·揮·官

巨大な影が覆いかぶさってきて、脳が髪の毛の感触と医療機械の匂いを感じとった

それに続いて、激しい眩暈が襲ってきた。やがて、意識を失った