ソフィアがボーッとしている。ここはブリッジへ向かう通路だ
…………言えない
アディレの、ことだから
……
待って
失敗を犯した罪人は……死ぬしかないと思う?
……
話した方がいいのか、わからない
うん、指揮官の意見なら参考になるかもしれない
ソフィアは少しためらったあと、ポケットからしわくちゃになった手紙を取り出した
私の忠実な護衛殿へ
お久しぶりね、変わりはない?次回の燃料輸送には同行してくれるのかしら?
昨日ようやく、反王政派が列車内に仕掛けた全ての爆弾を処分することができたわ。王立近衛軍の面目躍如ね
反王政派の首魁であるヒースには逃げられてしまったけど、行方は掴んでいるの。実は、つい先ほどまで諜報部員からの報告を読んでいたのよ
……いつでも捕らえることはできるけど、頭を悩ませているのは、捕えたあとの処遇のこと
自衛武装隊は彼の罪状を並べ立てて、王族の伝統的な刑法を適用したうえで一族郎党を処刑しろと要求してきている。近衛軍の隊長やアストンも同じ進言をしてきた
けれど……私は悩んでいる。果たして、それは本当に正しいことなのかしら?
現体制を維持するために歯向かう者を殺し、王位を退くまで生き続けるの?
もし私が、あるいは私の子孫がヒースのようになった時、それを糾弾する者がいるのかしら?
そこに考えが至った時に、改革が必要だと思うようになった
どうか、教えて欲しい。私の忠実な護衛殿。もし、あなたが私なら、彼と彼の家族にどういう処遇を与えるかしら?
From JA(王族の封蝋)
……
私、どうやって指……ジャミラに答えればいいか、わからない
……
……すごく、憎い
でも、簡単に死刑にしてしまったら、面倒なことがいっぱい起こると思う
どうしてジャミラは、私に訊くんだろう……
ジャミラなら、他人に訊かなくても自分で決められるのに
……?
……
私の……答え?
ジャミラは……
私の答え、が欲しいの?
……わからない
「わからない」を、答えにしていいの?
そうなの?
……よく、わからない