Story Reader / Affection / ナナミ·遥星·その4 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.

ナナミ·遥星·その1

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とある困難な任務後、議会はほぼ全員の指揮官に数日間の休暇を与えた

そのお陰で外勤はしなくてよかったが、テーブルにはファイルが山のように積まれている

そう簡単に休めるはずがない。前からため込んでいたファイルを処理しないといけない

特に面白いこともない、挑戦も逃げもできないこんな日に……

ナナミ

指揮官!

指、揮、官!

指揮官、いないの?

姿は見えないが、先に声が聞こえてきた。さすが、ナナミらしいというか。でも、どうしてこんな時に……

ドォンッ!

慣れた手つきで扉の横にある修理申請書にサインしたあと、元気いっぱいのナナミが走り込んできた

指揮官、やっぱりここにいたっ!

今日はナナミが指揮官のアシスタントをしてあげる、ゴホンッ……

ナナミはキリッとした顔で咳払いをした

ナナミ隊員、参上!指揮官、何かお手伝いすることはありませんか?

じゃあ、ナナミからお願いがありまぁす

今まではアシスタントじゃなかったけど、今そうなったの。だってナナミからお願いがあるんだもん

それはアシスタントと呼べるのだろうか?心では疑問に思いながら、素直に返事してしまう

???

対象の人間の口調と体温変化を分析した結果、その人間の現任務に対する熱意は0.543%です

廊下から、初めて耳にする電子ノイズ混じりの合成音声が聞こえた。この声を聞いたら誰でも驚くだろうと思われる異質さだ

キャハハハ、指揮官、面白いでしょ~。この子、ナナミの新しいお友達!マーボーっていうの

キャハハハ、指揮官、マーボーにびっくりした?

このオフィスの持ち主の許可も得ずに、ナナミは堂々と外から大きな「オフィスチェア」を引っ張ってきていた

一見オフィスチェアに見えるが、その脇から複雑なコードが伸びており、モニターとコントロールパネルがついている

だがそれらはボロボロで、塗装が剥がれ、錆びてしまっているようだ……

ナナミが持ってきたのは、数世紀前のコックピットだといわれても納得の状態だった

近くで見ると、ひとつの小さなモニターに緑色のスマイルマークが点滅していた

ちがーう!

正確には、マーボーは……

マーボー

マーボーは、エルゴノミクスを元に作られたスマートホログラフィックチェアです。指揮官の生活をより豊かにするために、ナナミちゃんが作ってくれました

こんにちは、[player name]

あなたは僕のことを知らないと思いますが、僕はあなたのことをよく知っています

ちょっと、ゲームでもしませんか?

マーボー!クイズなんかしなくていいよ!?

マーボーはショボーンという電子音を鳴らした。モニターに映っている目も、だらんと垂れ下がったものになり、落ち込んでいるようだ

マーボー

ザザッ――申し訳ございません。マーボーが悪かったんです。ナナミちゃんの話を中断するべきではありませんでした

ゴホン……とりあえず、マーボーが言ってるみたいに、色んなシーンを再現できるんだよ

VRだけじゃないよ。ナナミは、ナナミの素晴らしい知識の一部をマーボーに入れ込んだんだ

だから、マーボーは今のVRデバイスより、もっともっと高性能なんだよね~

でも空中庭園の物資管理部門はケチだから、ナナミが申請したパーツは全部却下されちゃった……

ナナミ、一生懸命、リサイクル部品を探したんだ。それでやっとマーボーに十分な演算能力を搭載できたの!

指揮官、ナナミとのデートを覚えてる?

その言葉を聞いて、ある思い出が脳裏に蘇った――

まずはメリーゴーランド!乗りながら空を飛べちゃうらしいよ!

次はお化け屋敷!……でも魂とか何とかって、全然現実的じゃないよね

次はジェットコースターに乗るよ!レールが途中までしかないからスリル満点!

全部途中で壊れちゃったけど、すっごく面白かったね!

もう!早く指を開いてったら!

あ……折れちゃった

あの時握られていたのがマネキンの指でよかった……

指揮官、思い出してくれた?

でも、あのデートだけじゃ、ナナミは物足りない!

ナナミもよく覚えているけど、でーも、まだ足りない!

指揮官とのデートは楽しかったけど、何かが物足りないんだよね

あの後、ナナミは必死に考えて、やっとその理由がわかったんだ

デートの場所のせいだよ!

データベースで見たけど、デートスポットって大体ビーチとか、映画館とか、テーマパークでしょ?でも、今はそんな場所、どこにもないじゃん

だからその問題を解決するために、ナナミはマーボーを作ったの

ナナミね、指揮官と一緒に行きたいデートスポットをマーボーにたくさん入れといたの。全部で……うーんと……どれくらいだったかな

マーボー

報告です。ナナミはマーボーのメモリに、スポットを4294967296カ所、気候変化65536種類、突発的イベント18446744073709551616種を搭載しました

あれ、そんなに入れたんだっけ?

まあいっか、思い立ったが吉日、指揮官、ちょっと座って?

ナナミがマーボーをぽんと叩いた。すると、入り乱れたコードは電流が流れたことで光り出し、椅子がギィーッと不快な音を立てた

マーボー

^_^

えええっ――?

ナナミは信じられないというように声を上げた

そんなのほっとけばいいよぉ。指揮官、ファイル作業なんて大っ嫌いでしょ?

安心して、マーボーは100%安心安全ナナミ製だから。それに何かあったとしても、ナナミがここにいるし!

指揮官、ナナミにつきあってくれたっていいでしょ~。指揮官のこと、もうちょっと知りたいもん

ナナミは有無をいわせず、自分をマーボーの方へ引っ張っていく。人間が構造体の力に対抗できる訳がない。仕方なくマーボーに座った

一見ボロボロだが、案外、座り心地はいい

しかし、その感想が一瞬にして変わった。ナナミが突然、頭全体を覆う金属のヘルメットを被せてきたのだ

「ガシャン」

光が完全に遮断され、重々しい金属の中では鉄の匂いしか感じない

ナナミ

指揮官、準備はいい?

音がヘルメットの中で反響し、鼓膜に不快な振動を与えている

その不快さと対照的に、ナナミの溢れんばかりの喜びがひしひしと伝わってくる。すると、不安が少し和らいできた

運命を受け入れるかのように、声がする方へグッと親指を立てた

ナナミ

よーし、リンク開始!

じゃあね指揮官、あっちで会おうね~!

耳元でブーンという音がした。錯覚かもしれないが、椅子から背中を押される感覚がある。海だか空だかわからない空間へ意識が飛んだかと思うと、大きな白い光に包まれた