空中庭園·指揮官宿舎、11:20。ビアンカとのデート開始まであと1時間――
(50分後——)
(30分後——)
雨は今朝方上がったばかりだ。少し湿ってはいるが、清々しい空気の中、散歩している人もいる。ふと、遠くの街灯の下に、背の高い女性が立っているのに気づいた
ビアンカがこちらに振り向いた。いつもと変わらない機体のはずなのに、どこか少し違うように見える
指揮官殿……
今日は特に用事もありませんでしたので、早めに参りました
少し冷えますね。指揮官殿のいつもの服装では、寒いかもしれません
こちらをどうぞ。夜になれば風も出ますし、風邪を引かないよう、このスカーフを巻いてください
当然のことです
それでは、参りましょうか
ビアンカは近くの公園に入ると、荷物からピクニックシートを取り出し、湿った芝生の上に丁寧に広げた
指揮官殿、昼食はまだですよね?
ビアンカはシートに座り、荷物の中から大量の弁当箱を取り出した
指揮官殿の好みを存じ上げないので、得意料理を片っ端から詰めてきました
ええ
かつても……よく人のお世話をしていましたので
大したことではありません
消化を助けるお茶もお持ちしました。どうぞ、ごゆっくりお召し上がりください
私……笑っていましたか?
昔のことを思い出したからでしょうか……
本当に長い間、誰かとこんな風に過ごすことはなかった……
なんだかとても……穏やかな気持ちです
た、ただ人の世話を焼くことで昔を思い出しただけですよ
ですが、指揮官殿がそうお望みになるのであれば
ご指示に従うことも、やぶさかではありません