Story Reader / Affection / ルシア·誓焔·その2 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ルシア·誓焔·その6

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最後の侵蝕体が倒れ、放たれた炎は空中にひと筋の輝きを作って消えた

倒れた敵の動力コアに照準を定めて、1発撃ち込む

硝煙が晴れると、辺りには音声装置に引き寄せられたたくさんの侵蝕体が床に転がっていた。今のが最後の1体だったようだ

ルシアは引き続き警戒して周囲を見回しながら、カエルちゃんの頭についた埃をそっと払っている

駆けつけた応援の警備隊員たちが敵の信号を確認して、残骸を調査しようとしている

すぐ側にいるルシアは、改めて周囲に警戒の目を向け、自分を守る体勢に戻った

わぁ……さすがグレイレイヴン!空中庭園の精鋭小隊が戦うのを見たのは初めてです

スムーズでエレガントな連携プレイ!

わかったから!大声を出すな、おふたりを少し休ませてあげて……邪魔してすみません!

冷静な隊員が、興奮状態の隊員の頭を押さえた

以前に聞いた任務指令に従いますと、このショッピングモールを一掃したら、おふたりの任務も完了です

わかりました、残りの任務もしっかりと遂行します……

最後まで言わせてくれ!たとえ今日任務を完了しても、輸送機が空中庭園に戻るのは明後日です。その間は自由に行動してくださいぃぃぃぃ——

冷静な隊員が、興奮して話す隊員の頭をより強く押さえつけた

まぁ、そういうことです……私たちはスカベンジャーの物資を回収して返してきますので、おふたりはご自由になさってください

彼はまだ何か言いたそうな隊員を引きずるようにして、足早にその場を離れた

本当におしゃべりなやつだな……おふたりにすれば、お前の話を聞くのも疲れるんだぞ!

そんなことはない!グレイレイヴンの人たちだって、俺ともっと話したい感じだっただろ……

周囲の警備隊員たちは手早く侵蝕体を処理し、さっさと移動していった。ざわついていた雰囲気は一変し、辺りは静まり返った

突然、休日が降って湧いてきた

そうですね……

突発的な戦闘にはためらいなく対処できるルシアだが、突如として訪れた休日には少し戸惑うようだ

もしルシアが特にやりたいことがなかったら、警備隊長が言っていた保全エリアの特産品を楽しむのもいいかもしれない……

指揮官、温泉はいかがですか?

意外に早く、ルシアの答えが返ってきた

はい、あの温泉は源泉かけ流しだそうです。だから、簡単に掃除すれば入れるのかも……

我に返った時にはすでに、ルシアと一緒に木々で覆われた小道を抜け、廃墟となった温泉にたどり着いていた

何年も誰も使っていないのに、湧き出る源泉のお陰で思っていたより状態がよかった。湯に浮いた落ち葉を掃除すると、辺りに湯気が立ち込め、視界がぼやけてきた

両足を浸すと、温かい泉水が感覚を刺激する。長い間の疲れが徐々にほぐれていく

少女が背後から自分の肩にそっと手を置いた。心地いい力加減で、こわばった肩と背中を揉みほぐしてくれている

図書館でマッサージに関する本を何冊か読みました

指揮官はしょっちゅう徹夜で働いているので、これが疲れを取るのに役立つ方法かと……

静かな森の中、聞こえてくるのは湧き出る温泉の音だけだ

まるで夢を見ているようです

なんだかこの数日間、夢を見ているようでした

指揮官と一緒にかつて戦った場所に戻り、虹を見て、そして、長い間探しても見つからなかったカエルちゃんを手に入れて……予想外の出来事の連続で

更に、温泉の話を聞いた時は指揮官と一緒に行けたらいいなと一瞬思いましたが、まさか本当に……

あまりにも順調にことが運ぶのが続くと、夢ではないかと疑ってしまう

指揮官?

ルシアは少し恥ずかしそうにうなずき、自分の隣に座って、温かい湯の中へ足を入れた

森に入る前、ルシアは水中での戦闘を想定して、あらかじめ防水処理を施していた

はい……とても気持ちいいです

センサーモジュールは意識海に感覚を忠実に伝送しているようだ。少女は目を伏せながら、流れる温泉の波を静かに見つめていた

え?

彼女は少し驚いた表情を見せた

……やっぱり、指揮官に隠し事はできませんね

私には、空中庭園で機体に適応するための待機時間があります。でも、その間も指揮官はずっと地上で任務を行っています

今回の任務だけでなく、前回やその前も……

指揮官はもっとしっかりと休暇を取るべきです

私はいいんです……

空中庭園に戻ってルシアの待機中の記録を確認した。できるだけ早く適合を終えるために、彼女は必要最低限の休眠と待ち時間を除いて、ずっと科学理事会ですごしていた

私はただ少しでもお役に立てればと……

その言葉への返事は、実にルシアらしいものだった

仰る通りです、指揮官

……

きっと私のせいですね、指揮官

一緒にいる時間が長くなればなるほど行動が似てくるというのは……まさにこういうことですね

ただ……指揮官がこの任務を選んだのも、私に休暇を与えるためでしょう

お互いに、素朴な願いを抱いていた。相手の心身の疲れを少しでも和らげたいという、仲間を思いやる心から出た願い

任務が始まった時から、ふたりはずっと相手を休ませるチャンスを探していたのだ

せせらぎの中で、胸の内に秘めた想いがお互いの心に流れ込んでいった

温泉がふたりの心を溶かし、交わらせ、真実が明らかになった時、抑えていたある感情が湧き上がってきた

指揮官……

指揮官

[player name]

全てうまくいきますよね、指揮官

はい……

[player name]と出会えて、本当に嬉しいです

少女の瞳は、湯気に包まれながら隣に座っている人間を真っすぐに見つめていた

私の最高の幸せは、あなたのお傍にいることです

睫毛が下がり、彼女のルビーのような瞳を僅かに覆った

指揮官、ひとつ約束してくれますか?

心地よい温かさが疲労を和らげてくれたお陰で、豊かな感情が戻ってきた。そして、今はもう抑えきれないほど膨れ上がっている

ルシアは言葉を口にする代わりに、湧き出る感情を最も直接的な行動で示した

彼女は両手を自分の首に回した。そして、ゆっくりと顔を近付けて額を合わせた。ルシアの温かな吐息を感じる

額が触れた瞬間、一瞬で心を満たす感情が伝わってきて、魂を震わせた

頬に親密な感触が伝わったかと思うと、流れるように自分の唇の縁へと移動した。まるで花びらがふわふわと水面を滑るように滑らかに

水の音も、風の音も、呼吸の音も、全てが消えた

今、世界にはふたりしかいない。聞こえてくるのは、ふたりの心臓の鼓動だけ。それらは同じリズムで響き合い共鳴する二重奏を奏でている

ドクンドクン、ドクンドクン。心音の調べがクライマックスを迎える。ルシアは少し目を伏せ、もう一度、もう一度と唇を求めた

耳元で柔らかな声が囁いた。まるで小鳥の羽で頬をなでるような優しい声

それは、先ほど彼女が音にしなかった言葉

たったひとつ……永遠に離れないと、約束して