Story Reader / Affection / ルシア·深紅ノ影·その4 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.

ルシア·深紅ノ影·その1

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果てしなく広がる雪原。身を切り刻むような冷たい風が吹きつけている

略奪されたあとの保全エリアはひどい状況だった。廃墟の上に灰色の救護テントが建てられている。悲痛な泣き声と鉄錆の匂いが風に乗って荒廃した街に漂っていた

ルシアが審査中であることを司令部が考慮した結果、自分はグレイレイヴンとしばらく離れて行動することになった

ウィンター計画の極秘資料を回収する緊急任務を受け、マンティス小隊のメンバーが自分の配下として派遣され、最短で任務を完遂せよと命じられた。それが最も効率的らしい

命令を受けてすぐに、マンティス小隊を率いて出発したが……一歩遅かった

武装した暴徒がこの保全エリアを襲撃し、浄化塔を破壊してしまったのだ

異重合塔の周囲はすでに安全エリアが形成されていたが、その範囲は限られており、全てのエリアをカバーできていなかった

異重合塔から更に離れた保全エリアでは、生き残るためには浄化塔に頼るしかない

空気中のパニシングの濃度が徐々に上昇している、おそらく……

指揮官、浄化塔の検査が終わりました。分離機配列の中の部品の損傷が激しく、修理に時間がかかります

ここまでの被害を……予想していませんでしたので。それに……浄化塔を修理した技術スタッフがフィルターを守ろうと……

間に合いませんでした……

簡単な情報収集の任務と聞いていた。こんなにも複雑な状況に陥るとは、誰も想像していなかった

それと、もともとこの保全エリアで暮らしていた住民が……

浄化塔がすぐに再起動できなければ、生存条件はますます厳しくなっていくばかりだ

どこから来たのか、白いペルシャ猫がゆっくりと後をついてきた。クロワは足早に2、3歩進んで猫を避けながら、端末を見て報告を続けた

保全エリア内で、まだ動けるスタッフと集計してみました。ここは免疫血清と防寒具が圧倒的に不足しています。大勢に軽い侵蝕の兆候が見られていますし

私たちは……どうすればいいのでしょうか?

交換するための部品が調達されるには、かなりの時間がかかるだろう。修理条件も過酷だ……

およそ230kmです。修理できた大型車両は1台だけで、途中で、突発的な事態に陥る可能性も考えられるので……

老人と子供を車両で別の保全エリアに向かわせた。小隊をふたつに分け、1組は車両へ、もう1組は自分とともに住民を護衛しながら、武装集団の追跡調査をする

保全エリアの住民たちに状況を説明すると、ほとんどの住民は事態を理解し、すんなりと協力してくれた。先頭一行は素早く隊を作って出発した。次の組も、すぐ荷物をまとめた

待っている間、ふと昨日のことを思い出した……

夜の雪原、身を切るほどの冷たい風が吹き荒れている

湧き出るように襲ってくる侵蝕体を撃退した。慣れない雪の中での戦闘で、疲労が蓄積していく。最終的には勝利を収めることができたが、皆それぞれに傷を負ってしまった

負傷者を横たわらせ、クロワと今後の計画を練っている時、突然マインドビーコンに異常な負荷がかかった

……指揮官?[player name]指揮官?

途切れる電流の音に紛れて、どこか懐かしい声が頭の中に響いた

???

……[player name]?

脳裏に突如として浮かんだのは、風が吹き荒れる雪原の中を歩く、白い姿――

この声……もしかして……

α

グレイレイヴン指揮官の記憶力は、なかなかのものね

α

どうかした?私じゃ駄目なの?

空中庭園はどういう算段かしら、あなたみたいな貴重なエースを来させるなんてね

α

空中庭園で優雅にコーヒーでも飲みながら、技術者が私から昇格者の新しい情報を引き出すのを待ってるんじゃなかったの?

また私のところへ来るなんて、何を知りたいの?言ってみなさい、教えてあげてもいいわ

それとも空中庭園が、指揮官と昇格者が個人的に接触する機会を与える、なんて致命的なミスを犯した?

α

……ふん

一陣の風が吹いて、テントの側に置いていた検知器が倒れそうになったので、慌てて手で支えた

α

……地上ね?

どうやら強制的にリンクしても、αはこちらの位置を把握することまではできないようだ。しかし、たった今の行動と風の音で察したのだろう

しばらく沈黙が続いたあと、微かな電流がαの冷たい声とともに響いてきた

α

私?私は……命知らずのネズミ狩りってところね

じゃあ、次はそちらの回答よ。何に対処するために、地上に来たの?赤潮?昇格者?異合生物?

しばらく考えて、曖昧な返事を返した

α

……ふん

鼻を鳴らして、αは黙った。何かを考えているようだ

α

そう?

しばらく沈黙が続いたあと、αは一方的にリンクを切断した

αの気まぐれなのか、それとも、彼らがまた何か企んでいるのか?

αはこちらの地上での任務内容を知らないようだが、ウィンター計画の極秘資料を捜索中、偶然にもαとリンクしたのだから、万全を期す必要がありそうだ

指揮官、今のは……何ですか?

昇格者!?

簡単に、クロワに状況を説明する

強制リンク、ですか……昇格者はそんなこともできるんですか?

それ、ものすごく危険なことでは!?

そう、もしかすると、これは絶好のチャンスなのだ

αから、ウィンター計画の新しい情報、あるいは他の昇格者の情報を得られるかもしれない

――ひょっとすると、彼女の具体的な位置がわかる可能性だってある

だが、今はいつでも相手からリンクできる状態だ。むやみに出撃あるいは計画を変更すると、相手に気付かれてしまうかもしれない

任務レポートを作成して、昇格者の情報と一緒に空中庭園へ送った。しばらくすると返事がきた

「了解、すぐに応援を派遣する」

「注意して行動せよ。常に連絡し、報告を滞らせるな」

あとは、彼女からの2回目の連絡を待つだけだ。それまで、任務を続けないといけない

改めて武装集団が現れる可能性のあるルートを確認すると、保全エリアの住民たちを連れて、長い移動の旅へと出発した

雪原の風は決してやむことはない。αの通信から、似たような音が聞こえたことを思い出した

吹き荒れる風の音が通信チャンネルから響く。騒々しい音なのに、意外と穏やかな気持ちになっていく

冷たく乾燥した空気の上に長い間留まっていた雪が、はらはらと地上に舞い降りてきた