Story Reader / Affection / リー·超刻·その3 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.

リー·超刻·その1

>

地上は、珍しく晴れている。降り注ぐ太陽の光とそよ風が、指の隙間から流れ落ちる金色の砂のように、地面を温かく染めていく

戦闘がひと段落し、ほとんどの小隊が保全エリアの簡単な清掃任務に就いていた。激しい戦闘を続けてきたグレイレイヴンにとっては、ゆったりとした休暇に等しい時間だ

木の葉がカサカサと音を立てる。聞き慣れた足音がこちらに近付いてきて、ルシアとリーフが現れた

保全エリアの監視小屋の後ろにいた侵蝕体は全て片付けました。もうひとつの方向はまだ偵察できていません

今日中には戻って指揮官に夕食を取っていただけると……あれ、リーさんは?

ここは保全エリアとしては初期の建設だ。空中庭園は定期的に物資を投入して機械設備をメンテナンスしているが、人手不足のせいで一部のハードウェアに支障が出ている

今にも揺れ落ちそうな安全監視施設を見て、リーは口先では面倒だと言っていたが、保全エリアに戻ってすぐに修理用の部品を申請し、作業を始めた

では、できるだけ早く残りの仕事を終わらせますね

指揮官、何かあればすぐに連絡しますから

そう言うと、ルシアとリーフは別々の方向へ去っていった

午後の太陽が降り注ぎ、体を暖かく照らしてくれる。貴重な休暇なのに、頭はひと時も休めていない。処理が必要な書類、流し忘れのコーヒー、そしてリーの新しい機体……

「ドタッ!」

近くで、何かが倒れた鈍い音がした

すぐにリーがいる方向に向かい、生い茂る草をかき分けると、リーが力なく柵に寄りかかっていた。青白い顔をして目をつぶっている

こんな状態のリーを見るのは初めてだったので、彼の姿をひと目見て、ひどく驚かされた

循環システムに異常がないことを確認し、機体の動作状態、意識海の接続状態を確認する……

機体は正常だ……意識海に若干の乱れがあるようだが、大きな問題はない。ならば、一体……

すぐ側でうなだれている構造体が、人差し指を僅かに曲げた。青い瞳が少しずつ開いて、太陽の光に照らされたその目に、一種の戸惑いが……戸惑い!?

……?

リーの目から、いつもの冷静さが失われていた。状況が把握できないようで、表情は困惑に満ちている

……ここはどこですか?あ、あなたは誰ですか?

自衛のためだろう、構造体は側にあったレンチを素早く掴んで、こちらに向けて構えた。かなり警戒した様子で、こちらを見ている

なぜ僕があなたのことを知っている前提なんです?

……指揮官とは?僕は……一体……

体がいうことをきかないのか、リーは木の幹に掴まってようやく立ち上がると、辺りを見回した。まるで空中庭園の基礎教育学校を出たばかりの小学生のようなたどたどしさだ

見た目は確かにリーなのだが、どうも様子がおかしい。頭からつま先までどこを見ても、言いようのない違和感を覚える

さっきまで学校の実験室にいたのに、いつのまに……こんな荒野に来てしまったのでしょうか?

それに、この体……

彼は左足を動かそうとしたが、大きすぎる靴を履いているようにつまずき、よろめいたあとに地面にうつ伏せに倒れてしまった

うっ……

この体は……一体どういうことですか?僕は……

リーはよろめきながら、手足をしげしげと見下ろした

いずれにせよ、リーの状態は明らかに何かがおかしい。急いで空中庭園に戻った方がよさそうだ

構造体?ありえませんね。あんな高等技術を僕みたいな学生に使うわけがないでしょう

ルシアとリーフに連絡を取りながら、歩く練習をしているリーの説得を試みた。しかし、リーは頑なにどんな言葉も聞き入れようとはしない

何の確証もない状況下で、集合写真と身分証明書を見せられたからといって、見知らぬ自称指揮官の言を信じることはできませんね

集合写真も身分証明書も偽造が可能です。ですが記憶は偽造できません。僕の記憶は――あなたのことなどまったく知らないと言っていますが

まず、僕の名前が間違っています……僕は「リー」ではありません

警戒した様子でリーは後退し続けている。自分が一定の範囲に近付くと、彼はよろめきながらも更に距離を取るのだ

このままでは保全エリアの安全区域から出てしまう……リーを安全区域内に留まらせておかなければ

侵蝕体とは?怪物みたいなものですか?

どうせオオカミ男や長い髪の幽霊といった、子供騙しの奇妙な生物でしょう

子供……そうだ、リーの今の様子はまさしく、子供のようなのだ

機体に異常が表れ、意識が過去に戻ってしまったのだろうか?

今も意識リンクは切れていない。改めてリーの意識海を確認したが、穏やかな波動があるだけで、大きく変わったところは何もない

リーはふらつきながらも、必死にここから離れようとしている

強い口調が効果を発揮したようだ。リーはぴたっと立ち止まり、側の木に寄りかかって、警戒した目つきでこちらを睨んでくる

すでに安全区域の端まで来てしまった。このままルシアとリーフが戻るまで持ちこたえられなければ、空中庭園に戻れなくなってしまう

学校で、知らない大人にどんな身分証を見せられても信じてはいけない、まずは警察に通報しなさいと教えられています

リーは安全区域の柵に身を隠し、必死に腕を動かして、地面の武器を拾い上げた

何を企んでいるのか知りませんが、諦めた方が身のためですよ。子供の誘拐は重罪です……あれは何の音ですか?

どうやってルシアをリーの後ろへ近付かせるかを考えていたため、自分の背後には一切注意を払っていなかった

ギギィ――!

危ない!!!

リーは不器用な動作でこちらに向かって銃を構え、片目を閉じて引き金を引いた。弾丸が自分の頭に向かって飛んでくる――

その時、ルシアとリーフの叫び声が背後から聞こえてきた――

指揮官!!!