「力を伴わない文化は、明日にも死滅する文化となるであろう」
――ある政治家はそう言った
かつて人間は山を越え、海を渡り、この地上に「黄金時代」という奇跡を築き上げた
だが今となっては、廃墟しか存在しないのだ
異合生物の群れが瓦礫の間で蠢いている
…………
バージルは高所から見下ろし、コウモリ姿の異合生物の挙動を観察していた
すると遠くから轟く規則的なエンジン音の接近を耳にした。バイクが走ってくる音だ
バージルは首を傾げながらも、バイクを運転する人物が近付くのを待った
やがて遠くの曲がり角から赤い影が現れてくる
バイクに乗った人物はバージルの視線に気付き、遠距離で目と目を見交わした
やるようだな
バージルは久しく感じていなかった興奮を覚えた
バイクは斜めに崩れかけた建物を駆け上がり、まっすぐに崩壊した建物の最上部へと疾走する
その人物はバイクの前輪を持ち上げるようにして、次々と別の建物の屋上へと飛び移っていく
人類のテクノロジーにより製造される人工物を好まないバージルであったが、その運転者の優れた技術は感じ取れた
バイクはすぐにバージルの立つ屋上にたどり着き、シートから白髪の女性が降りる
襲撃された保全エリアから逃げ出した人間から聞いた情報によれば
白髪、刀、青黒いコート……