その日の戦闘がどれほど続いたのか、彼女は覚えていない
カノン砲を掲げ、剣を振るい、無数の光の粒が弾ける
叫び、怒号、悲鳴が、針のように彼女の目に突き刺さった
彼女は決して消えぬ青い炎を揺らめかせ、近付こうとする者たちを見渡した
自分の姿が焼きついた彼女たちの瞳の中、彼女はふたつの異なる感情を見た
恐怖と喜び、怯懦と興奮――
境界線の端から黒い影が次々と現れ、ひとりが倒れれば、10人が向かってくる
まるで闇を舞う蛾が、ただ一点の明かりに群がってくるようだ
彼女は……僅かながら嫌気がさした
この全てに何の意味があるというのか。彼女にはわからない
疲れることのない身体に一瞬の遅れが生じ、彼女の手から剣が弾き飛ばされる
こんな終わり方も悪くない――
彼女の思考が眼前の切っ先と重なった
そして――
「キン!」という音とともに――
彼女の目に一閃の緑の光が映った
大鎌を持った少女が、ブラック★ロックシューターに向けられた剣を断ち切っていた
……
彼女は無言で刀を拾い上げると、突然現れた少女と肩を並べた
やっと見つけたわ、ブラック★ロックシューター!
ここは……どこかしら?まあ、いいわ
デッドマスター……あなた……
何も言わないで消えるなんて、私、寂しいじゃない
私にも……わからない……
とりあえず、邪魔者を片付けましょう
……なぜ私を助けるの?
なぜって?わからないの?
あなたはここで止まる人じゃない。私以外の人に負けるなんて許さないわ
ふたりでずっと絡み合ってなきゃ。私たちの「闘争」は終わらないの、永遠にね
だから……理由を訊いてる……
こんな戦いが何をもたらすっていうの……
少なくとも、今この瞬間はあった訳でしょう?
ふたりは互いに背を預けて、周囲への敵意を自分の武器にこめる
……じゃあ、ちょっとだけ付き合って
デッド……マスター!
う……
長い戦いがついに終わった。過去の記憶の再現にすぎないが、それでも彼女の心身には大きなダメージを与えた
一歩踏み出そうとしたブラック★ロックシューターが、思わずよろめいて膝をつく
過去にデッドマスターと協力して倒したほどの敵をひとりで打ち破ったため、彼女は力を使い果たしてしまったのだ
イベント達成の報酬として、金色のサイコロが彼女の前に落ちた
サイコロには数字ではなく、小さな十字のマークが刻まれている
これは……
手を伸ばすと、サイコロはすぐに消えてしまった
……
彼女の背後から足音が聞こえる。目の前のことに構っている余裕はない
じゃじゃ~ん、追いついたわよ
……
何を笑ってるの?
別に……昔のことを思い出しただけ
彼女たちの足下から赤い光が広がり、マスは2枚の駒の戦場へと変わった
あの時、私たちは……
最後のスピリッツが倒れると、荒野は再び静寂に包まれた
さあ、これでお邪魔虫がいなくなったわ
武器を構えなさい、ブラック★ロックシューター。前回、前々回、それに前前々回、何も言わずに去っていった恨み、今回まとめて晴らすんだから
……その前に、訊きたいことが
なぁに?
私たちって、どういう関係なの?
それは……あら?うぅん、待って、急にそんなこと言われても……
……「友達」?
もちろんよ、それも「親友」でしょ?
「敵」でもある?
ええ、そうじゃなきゃ、なぜずっと喧嘩してるのよ?
「友達」でも「敵」なの?
あなたが言うと変な感じだけど、でも、その通りでしょう?
どうして今更そんなことを?
ううん、こうやっておしゃべりしてる間に体力を回復しようかと
いつからそんな悪い子になったのよ!?
私だって学ぶことがある
……あら、私を皮肉ったの?
まさか
絶対そうじゃない!
思い出は思い出のままに。今回は策略に乗らないわ
そういうのはあなたの方が得意なはず
とにかく、今のあなたじゃ私に勝てないわ
……とりあえず、10分待ってくれる?
待つ訳ないでしょ!
黒い大鎌が空を切る。彼女は刀で防ごうとしたが、相手がそれを巧みに弾いた
これはどう……!
無駄ね
彼女はカノン砲を構えチャージしたが、デッドマスターは幽霊のように距離を詰めてくると、その大鎌で彼女の喉元を捉えた
大鎌が振り下ろされ、青い炎が次第に消えていく
チッ……
彼女は自分のサイコロがデッドマスターの方へ飛んでいくのを見ていた
身体が白い光を放ち、彼女は自分がゆるやかに分解されていく感覚に陥った
それは彼女の敗北と退場を予感させるものだ
終わりね、ブラック★ロックシューター
……まだ
まだ終わりじゃない、終わる訳ない、デッドマスター
……
私たちは「宿敵」、そうでしょ?
私たちの「闘争」は……永遠に終わることはない
……そうね、ブラック★ロックシューター
緑の瞳の少女は静かにつぶやくと、投影された城を見上げた
あなたがこのまま終わらせるはずない、そうよね?
彼女はゴールの前に立つと、その大きな扉を押し開けた