Story Reader / コラボ / 黒炎廻る迷城 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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対局

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一体……どういうことでしょう?

彼女の意識は無限とも思える真っ暗な奈落へと落ちていった。再び目を開けた時には、彼女はすでにこの冷たく空虚な空間に足を踏み入れていた

ここは……城の内部でしょうか?

指揮官……

よく知るあの姿が隣にいない。しかし意識リンクは途切れておらず、マインドビーコンも彼女の意識海の中で安定していたので、相手が無事でいることがわかる

ルシアはあたりを見渡した。足下に目をやると、白と黒のタイルにぼんやりと光るマークが現れた

これは……チェスの駒?

それは「ナイト」のマークだった。土台の色が黒を示している

確か、あの「キング」が投げた駒……

それぞれ駒を振り分けられた時、ルシアの前に置かれたのは、黒の「ナイト」だ

これが「キング」の言っていた「ゲーム」……?チェス……つまり、この城がチェスボードだということ?

懐かしい感じがしない?

ルシアの側にはいつの間にか黒い服の少女が立っていた

ブラック……ブラック★ロックシューターさん?

私たちは同じ「スタート地点」に送られたみたい

彼女の足下にも、同じようにチェスのマークがあった。それは黒の「クイーン」だ

「さん」はつけなくていいわ

少女は軽く頷いた。ルシアのように、周囲に神経を尖らせている様子はなく、まるでこの奇抜な光景は見慣れているかのようだ

さっきのはどういう意味ですか?

正門にいた時、「キング」に会うのは初めてじゃなさそうだった

知り合い?

ええ……なんというか、少し事情が複雑で

そう、なら訊かないでおく

面倒そうだし

そ、そうですか……

姿は似ていますが、あの「キング」は私のよく知る彼女ではないと確信しています

でも、何かしら関係はあるのだと思われます。私と指揮官がここへ来たのも、それが原因ではないかと

ブラック★ロックシューター、訊きそびれてしまいましたが、あなたはどうやってこの「回廊」に?

……知らない

知る必要もない

それより、上を見て

あ……あれは――

城と同じ形をした立体映像が流動するデータの帯で形成され、天井から逆さにぶら下がっていた

城の下部には、いくつかの赤い光が点滅している

上の光は……私たちの現在位置を示している?

城の最上階を目指せってことみたい、でも……

彼女は2階へ続く階段へと向かったが、数歩進んだところで見えない壁にぶつかった

刀で斬りつけてみるものの、斬撃は見えない壁に触れた瞬間に弾き返されてしまう

自由自在には動けないってことね

対してこっちは……

ふたりの前に、浮かぶサイコロが7つ現れた

サイコロを振って移動しろということでしょうか……それに、あなたのサイコロは私のものとは違うようです

サイコロの数は同じなのだが、ルシアの周りに浮かんでいるサイコロが6面サイコロなのに対して、黒髪の少女――ブラック★ロックシューターのものは12面サイコロだった

私たちの駒自体が違うから

駒とサイコロ……どうやら本当にルールで縛られた「ゲーム」のようですね

待ってください……まさか……

遠い記憶が少しずつ動き出し、ルシアの思考が、幼少期を過ごした邸宅へと舞い戻る

何を考えているの?

ルナ……彼女は……

問いかけが聞こえないのか、ルシアは心配そうに天井を見上げた。まるで天井の向こう、最上階を見つめているかのようだ

指揮官……

……

どうしました?何か考えてます?

ううん……何でもないです、ワーカーさん

冷たいホールの中、ワーカーは精巧に作られたカウンターにもたれ、フェクダは部屋の隅にぼんやりと立っていた

彼女たちの足下にもチェスの駒のマークが光っている。ワーカーは黒の「ビショップ」、フェクダは黒の「ポーン」のマークだ

ここから逃げる手段は……なさそうかな……

いつも争いを避けようとしてるみたいですけど、それはどうして?

スピリッツたちの使命なんじゃないんですか?

ワーカーは興味深そうにフェクダに問いかけている

どうしてって……急にそんなこと訊かれても……うまく答えられないけど……

私は他の人たちみたいに、争いが絶対的に正しいとは思ってないから、回廊がどうなろうと知ったこっちゃないっていうか……

メラクたちが言うように、回廊への帰還がただの過程にすぎなくても……

たとえこの世界に新しい「フェクダ」が現れたとしても、それは別人で、私じゃないもの……

衝突の爆発から解決への過程の中では、反映される感情や思考だって変わります……

知的生命の自由性は果たして存在するのか、検証価値のある問題ですね……しかし、もっと具体的にいえば――

とどのつまりは、「今の自分」に消えてほしくない、ということですよね?

……

私の考え……変ですか?ワーカーさん

私には答えられません。あなたが自分で判断しなきゃいけないことですよ

もっと言えば、どんな考えが「変」なのか定義することもできませんもの

それより、今は目の前のゲームに集中しませんか?争いを嫌うあなたが、なぜこの逃げられない戦いに参加したのか、それが気になっているんです

私は……ただ……

フェクダの目がきらりと輝いたが、ワーカーの質問に答えることはなかった

じゃあ、ワーカーさんは?いつも中立を保っているのに、今回積極的に手助けしてくれるのはどうしてです?

ふふ……ただの気まぐれ、と言ったら信じてくれます?

……

顔に「信じない」と書いてあるようですね

う、ううん、そんなこと……

でも正直、「私」が何をしたいかはそれほど重要じゃありません

せっかくの機会ですし、まずは双方のキングがどう出るか見てみませんか?

真っ白な光に照らされた部屋の中で、体が椅子に固定されている

まるで見えない鎖に縛られているようで、身動きが取れず、ただ目の前のチェスボードを見つめるしかなかった

「キング」

何だ、まだ決められないのか?考える時間は有限なのだぞ?

からかうような声が耳を突く。巨大な圧迫感に、自分の意識がひとつ、またひとつと、ブラックホールのような深紅の瞳に飲み込まれていく

???

まずはルールを説明するべきじゃない?

赤と白の電流が心臓を走ったかのような強烈な刺激で、霧がかった頭が一瞬の内にクリアになった

赤と白の人影が、自分のすぐ側に立った。その気迫は「キング」の威圧感に張り合っている

それとも、初心者をいたぶって喜ぶような小者なの?

ふふ、私にそんな度胸はない

反応を見たかっただけだ。代行者と意識リンクができるような者は、どれほど特別なのかとな……

「キング」

いいだろう、ここは文明の領地だ。私もホストとして礼を尽くそうではないか

基本ルールはシンプルだ。この城をチェスボードに見立て、サイコロを振ってゴールを目指す

「キング」がテーブルのデータ模型に触れると、さまざまな色をした十数個の光がその上に現れた。どうやら各自の「駒」のようだ

「キング」

駒は両陣営の者たち。開始直後に駒を取られることがないよう、駒の初期位置はランダムとなっている。理解しやすいだろう?

「キング」が手をひと振りすると、新しいデータが自分の前に投影された。それには、双方の駒の状態と、各駒の残りのサイコロ数が表示されている。

サイコロを投げて駒を動かすゲームは珍しくない。世界政府芸術協会に引き連れられて、似たようなボードゲームで遊んだこともあった

「キング」

それではつまらないだろう?究極のゼロサムゲームは計算能力を試すものでしかない、いささか妙味に欠ける

そんなキナ臭いやり方ではなく、平和に遊ぼうではないか

「キング」

まだ細かいルールはたくさんあるが、言うまでもない――だろう?

このゲームに詳しい者が、そなたらの陣営にはいるはずだからな

……

このゲーム、昔に私とルナが考えたものよ

もちろんルールは全部わかっている、でも……

αが尖ったナイフのような視線で「キング」を睨む

あなたはルナじゃないわ、ルナに何をしたの?

一瞬、彼女が目の前のチェスボードを刀で叩き切るのでは、と思ったが、今はαでさえも暴れられる状況ではない

「妹」が心配と見えるな。まあいい、隠すようなことでもない

あの代行者の欠片は、厳しい選別の負荷に耐え切れずにここへ流れ着き、本来あるべきではない異質な存在となったのだ

回廊は感情の形を反映する。私はその感情を受けて現れた

結局、代行者が従うのは昇格ネットワークの意志だ。私は彼女の果たすべき役割を代行しているにすぎない

つまり、あなたを倒せばルナは助かるのね

αは目を閉じ、「キング」を無視した

[player name]、どうすればいいか、わかるわよね

頭の中にひと筋の赤い光が走り、強制リンクによって意識によく知る痛みが引き起こされた

まだこのチャンネルを持ってたのね

どうせあなた、「負ける」気なんてないでしょう

αの言う通りだ。どうしたって、戻る方法を探すには「キング」が最大の障壁となる

αの足下には「ルーク」のマークが光っている。本来なら彼女もチェスボードのどこかへ位置しているはずと思われた

しかし、投影された「スコアボード」上では、双方のルークは始めからグレーアウトして表示されている

ああ、それはゲーム開始前に、私のルークが彼女に負けてしまったから

他に適役がおらんのでな、公平を期すために、双方のルークを除外したのだ

ふん、公平ですって?

こんなことでもしないと、勝つ自信がないということかしら

ほう?

「キング」はαの挑発など気にも留めないかのように微笑んだ

では、異議がなければ、私が手本として最初の一手を置こう

「キング」はバーチャルのチェスボードで、白の「クイーン」に触れるとその歩みを進めた