Story Reader / 本編シナリオ / 39 冬冠の枯死 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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39-3 統合準備を!

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なぜ戻ってきたの?「第二帝国」を企むあの極地人どもを始末しにいったはずじゃなかった?

灰に覆われ折れた柱の隙間から差す微光の中で、塵が漂っている。そんな廃墟に突然鋭く力強い声が響き渡り、静寂を破った

その声は、嘲りのようであり、催促のようでもあった

……

ザルクは黙ったままただ目を伏せ、かつて玉座があった瓦礫の山へと1歩ずつ近付いた。沈黙したままの彼を見て、女の声に更に怒りがこもる

私がここに残っているのは、あなたたちの「統合」とやらが何か面白いことをしてくれると思ったからよ。それは彼女が求める「質点」であり、手柄を意味するのかもしれない

――なのに、あなたは一体今まで何をしていたの?

戦争というやつだ

その戦争が問題なのよ。統合の力を使って、全部まとめて支配したらどうなの?あなた、そうやって私から侵蝕体の支配権を奪ったんじゃなかった?

彼らはもともと我が臣民だ

「奪った」という言葉に、ザルクは明らかに不満の色を浮かべ、目の前の女をじっと見据えた

何よ、やり合う気?

航路連合への敬意を持ってほしいだけだ。それに、私も能力を使っていないわけじゃない。相手は、統合に対する何らかの対策を講じているようだ

……つまり、所詮「統合」は、防がれてしまう程度の力だったってこと?

空気が一気に張りつめる。女の殺気は更に濃さを増し、今にも暗がりから棘が飛び出してきそうだった

不完全な統合なら、確かにその程度だ。だからこそ、私はわざわざ空中庭園まで行った

ブラックボックスデータか何かを持ち帰ったようだけど?

ああ。ロゼッタと呼ばれる機体には、私を完全にするためのデータがある。別の言い方をするなら、彼女の機体は私と同種だ

訊くのも面倒くさいんだけど、データを手に入れたのなら、どうして彼女を始末しなかったの?あなたと同じ力を持つ可能性だってあるんじゃないの?

彼女は育てれば使い物になるからだ。あの駒は将来の統合戦争で必ず役に立つだろう。それに……彼女があの機体の本来の能力を引き出すことは不可能だ

そこまで言うなら好きにすればいいわ。それで、これからどうするつもり?

この戦争は三公に任せ、私はブラックボックスデータを使って自分の機体を完全なものにする

データ処理が終われば、私は「最終マスターユニット」になれる。そうなれば……相手が誰であろうと関係ない

ふん。その時になっても、私たちの取引は忘れないでよ

私は統合技術が「ラディクスの質点」そのものだとは思っていない

だが北極航路連合がまとまりさえすれば、ソフィア市は復興できる。そうなれば、統合技術はそちらに任せる

承諾を得た女はそれ以上何も言わず、殺気を収めた。ザルクもまた目を閉じ、自分の意識とデータの狭間へと沈んでいく

風雪に細かく切り裂かれた雪原で、寒風が氷の欠片を巻き上げながら吹き荒ぶ。世界は白一色に染まっていた

ザルクは遠くに、赤黒い血を滲ませた学者たちの姿を見た。彼らは膝まで積もった雪の中に蹲り、ボロボロの研究服はすでに氷や雪でびっしょりと濡れている

鉛色の雲が重く垂れこめる中、学者たちは「良心が痛む、続けられない」等と呟いていたが、やがてその声も吹雪に引き裂かれ、彼らはこの荒涼の地で無言の墓標となった

この出来事こそがザルクの機体から最後の調整工程を奪い、「最終統合」と呼ばれる力を使えなくしていた

もうすぐだ

ザルクは独り言ちた

リー

今のうちに、ここの全部の電源を切ってください!

アントノフ

よっしゃ!

ノアン

消火器を持ってきた!

リー

火元に向けて噴射を!

???

ふぅ、なんとか消し止められた

クマ型のひと言で皆が安堵した。だが、空中庭園側の面々が危機を脱して安堵したのとは対照的に、ロゼッタを含む航路連合の構成員は「見ていられない」という表情だった

さっきは手が滑っただけ!クマ博士、実験をやり直そう!

ミネイル博士、ちょっと待ってください!

彼女こそ本物のミネイル博士よ

本物も何も、大天才ミネイル博士はこの私ひとりだけ。まったく、なぜ空中庭園のやつらは私の替え玉すら見抜けないんだか。私ってそんなに特徴のない顔!?

そりゃ、誰もあなたを見たことがないからっつーか……

コホン……こちらは私のこの機体――マルクトの開発者

開発じゃない、製作者。本当の開発者はあなたの祖父。何度もそう言ってるでしょうが!

ごめんなさい……

ロゼッタが紹介する間もミネイルはチクチクと言い続け、ロゼッタと何やら言葉の応酬をしているようだった。表情や声色から見るに、どうやらすこぶる機嫌が悪いらしい

何、その目は。ただでさえイライラしているのに……あら、その紋章……あなたがグレイレイヴン指揮官ね。握手しましょう。ロゼッタとマルクトを助けてくれたこと、感謝する

刺々しい雰囲気を纏っているが、どうやら率直な女性らしい

ところで、先ほどは何が起きたんです?何の実験をしていたんですか?

マルクトの起動シミュレーション実験……フン、こんな説明するのはプライドが許さないわ。クマ博士、話して!

わかりました……つまり、ミネイル博士はロゼッタが昏睡した件を気にして、その起動が失敗した原因をずっと探してたんすよ

それは博士の責任じゃない……未完成の機体だったんだから

空中庭園でも未完成の機体を使うことはよくあるけど、ここまで酷い故障なんて聞いたことがないわよ!考えるだけで腹が立つ!

さあ、実験実験!戦争が終わる前に、最終マスターユニットを完成させるわ!

最終マスターユニット……ロゼッタの機体はマスターユニットなんですか?

何?空中庭園も「マスターユニット」って言葉が気に入らない?でも、私が決めたんじゃない。ロゼッタの祖父に訊くがいいわ。手稿にそう書いてあったんだから

技術に罪はない。罪深いのは技術を悪用する者だけよ。それに、ヒョードル博士が統合関連の技術を全て書き残してくれたお陰で、私たちはアンチ統合モジュールを作れた

そうなんです。そのモジュールのお陰で、おいらや仲間たちは相手から支配されずに済んだんだ

なるほど……さっきマスターユニットの話が出た時、どうして極地機械たちが支配されていないのか不思議だったんです

フン、そういうことなら、なおさらマルクトの完成を急がなくては

毒をもって毒を制す、ってことか

理解が早いわね。今この機体はチートまがいの方法で動いている。統合能力も手稿に書かれた力も完全には発揮できていない。厳しい戦況でマルクトを起動できれば楽になる

わかった、任せなさい!

ミネイル博士は、私たちの中で最も専門知識を持つ学者なの。私は彼女を信じてる……指揮官を信じているのと同じように

ほ、報告!氷層の崩壊した部分が、氷皇側の造氷機械によって再び凍り、まもなく氷河が繋がりそうです!

やっぱり長くは持たなかったか

私も長く持つとは思ってなかった。だけど、お互いを知る時間くらいは稼げたわ。すぐ前線に集合するよう、本拠地の皆に伝えて

わかりました!

それもそうか……僕も知らない相手に背中を預けるのは御免だし……で、このあとどうするつもり?作戦は?

……

こちらから仕掛けるのはどう?