368保全エリア
368保全エリア
368保全エリア、定住人口は300名程度、山々に囲まれて盆地の中にあるため、町と呼ぶにはほど遠い集落だった
標高差1000mを超える険しい断崖に取り囲まれた盆地には、さまざまな鉱物が豊富に埋蔵されている
かつてここは、金を採掘しにきた鉱夫と商人でごった返し、往来も賑やかだった
しかし今、この貧しい盆地にあるのは数十棟の建物のみで、小さな浄化塔を頼りにこの粗末な保全エリアを形成している
指揮官、コムが話していたあの「保全エリア医療室」はここのようです
角を曲がると、リーフは街を見るよう密かに合図をした。そこには簡素ながらしっかりとした造りの小さな建物がある
いません。警備隊と一緒に外出し、戻るのは今夜だそうです
端末を開くと、リーフはひとつのファイルを開き、送信した
朝方に医療室に潜入して、受け入れ記録を調べたのですが、コムは約6日前に収容されて手当を受け、痛み止めを処方されました。そして目覚めると出ていき……
あの輸送機は4日前に離陸し、いくつかの保全エリアを経由して、空中庭園に引き返したのが――ちょうど3日前です。私たちが任務を受けた頃ですね
時間的な問題はありません。その時間帯の受け入れ記録をコピーし、事件調査を口実に、保全エリアの責任者からその時間帯の保全エリア出入口の監視映像も入手しました
彼女は別の方向を指し示した
保全エリアの出入口はあそこです。監視カメラの映像から、コムが言っていた時間帯にその付近にいた人物を特定し――
これは私がマークした不審者のリストです。空中庭園にも共有済みです
リストは短く、7名の名前しかない
ここは辺鄙な場所ですし、鉱区も長い間放置されていました。パニシング爆発の時に逃げ遅れた住民が残っているだけなので、もともと人の往来は少なめです
リストの中のふたりはすでに調査済みで、関与した可能性は極めて低いかと。事件当夜、彼らは重傷を負って重度の意識不明となり、今も医療室で治療中なので……
別のふたりは取引用の鉱石や生活物資を集めると言って、昨日、鉱区の付近に向かいました
ええ。責任者によると、確かに物資を交換するため鉱区付近に鉱石を集めに行く人がいるものの、最近は物騒なので、人々が鉱区に行く頻度はかなり減ったそうです
私もこのふたりは怪しいと思います
彼らは警備隊のメンバーで、医師と同じく外出し、今夜戻る予定です
車はすでにリーフによって用意され、保全エリアの外周に停めてあった
この鉱区は長い間整備もされていないため、出発から30分も経たないうちに悪路となった。車がまるで跳ね回るウサギのようにガタガタと揺れる
…………
また座席から飛び上がりそうになったあと……
車でこんな道を走るのは本当に久々です……指揮官、大丈夫ですか?
ちょっと休憩しましょうか?
リーフは何度も確認したあと、不安そうに再び出発した
保全エリアの関連資料によれば、整備経費の申請のため、責任者が何度も報告したのですが、パニシング濃度の低さや異合生物の少なさから「優先度低」とされていました
先日、保全エリアが「鉱区にやや異常な動きがある」と報告したものの、空中庭園は安全区域の建設と九龍との海上防衛線構築に忙しく、1隊の執行部隊を派遣したのみです
リーフは手を伸ばし、端末から資料を呼び出した
執行部隊の特殊部隊のひとつで、砂漠や洞窟での戦闘に長けています
ローデンツ小隊の定期報告の記録は……これです
ひとつの動画ファイルが開かれた
こちらローデンツ小隊、隊長のフライオ
命令に従い、私たちは368保全エリアに到着し、予定通り事故の発生地点に来た
――ここです
我々は鉱坑の中で爆発の痕跡を発見。その痕跡を追ううち、我々は鉱区に隠れている異合生物を見つけた
鉱坑内のパニシング濃度は低く、複数のポイントでも検出されない。つまり鉱坑には他の出入口があり、異合生物はそこから侵入し、誤って採鉱用の爆弾に触れたと思われ――
おい!イミル!それに触れるな――!ヴィーア!あいつを止めろ!
画面が激しく揺れ、微かな爆発音が伝わってきた
爆発するなんて聞いてない!
ゴホン――とにかく、鉱坑内は安全だが、異合生物がどこから侵入したのか、調査に少し時間を要するかもしれない……
――報告は以上
あります
彼女は何回か端末をタップし、ある番号に通信した
こんにちは、こちらは空中庭園のグレイレイヴンです。現在368保全エリアにて、鉱区の異合生物処理の支援任務を実行中です
こ……こんにちは……
通信の向こうは電波が悪いらしく、音声は途切れ途切れで、雑音混じりだった
ゴホン……こんにちは!こちら――はローデンツ――小隊!私は――隊長の――フライオ!
ゴンゴンと鈍い音が2回響き、投影が激しく揺れたあと、電波が回復した
ハハ、鉱坑の電波が悪くて、こうするしか……
えええっ!これはグレイレイヴンの連絡アイコン!支援に来たのがグレイレイヴンとはな!イミル!ヴィーア!早く来い!ホンモノのグレイレイヴンだ!
うわ……噂のグレイレイヴンの指揮官?すご、レアすぎる!
あれ……身長、2m10cmもないじゃん?翼も生えてないし!イミル!お前の負け!ハハハハ!
うっさいな……!
ゴホン……
ああ、申し訳ない、隊員たちもテンションが上がっちゃって。なんせあの有名なグレイレイヴン指揮官だから
隊長と自称する男性は、好奇心旺盛なふたりの頭を力いっぱい押さえ込んだ
こんにちは、私はグレイレイヴンのリーフ、こちらは私の指揮官の[player name]です
えっと……お恥ずかしい話、何度も鉱坑に出入りし、我々が片付けた異合生物も少なくはないんだが、出入りする度に新しい異合生物に出くわすんですよ
鉱区があまりにも広いので、出入口の調査には時間が必要で。ここはなんだか様子がおかしい。異合生物が次から次へと湧いてくるんだ
数が多くない時はまだマシだが、ある一定数を超えると、やつらは徘徊から目的のある攻撃へと行動パターンが切り替わるんです
我々もその可能性はあると思っているが、今のところ何も……イミル!後ろだ!
最後の挨拶をする間もなく、相手は混乱した音の中で通信を切った
数が一定数を超えると行動パターンを変える……異合生物は裏で操作されているのでしょうか?以前の……異合の双子みたいに?
仮にここにコントロールする者がいるなら、相手には目的があるはず。だがこのような「采配」では、何の「結果」も出せないことは明白だ
それにパニシング濃度は常に高くも低くもないレベルを維持していて、変動する様子がありま……
言い終わらないうちに、リーフはハッと顔を上げ、車を急停止させた
リーフと目を見交わして車から降り、異変の方向に向かって歩き出した
