私は自分の一生を他人に語るつもりはない
果ての見えない空間に広がるのは、雲を突くほどに高い本棚の列や、回転式のハンドルが付いた移動棚と大きな鉄のキャビネットだ。それらが縦横無尽に交錯している
こんにちは、万世銘をご利用いただきありがとうございます。私、華胥が完全な意識アップロードをお手伝いします
私は一生の中で、他人には言えないことをあまりにも多く経験し、数え切れないほどの「歴史」を繰り返してきた
私は歴史に潜む嘘を目の当たりにした。睚眦衆は夜の闇の中で九龍を浄化した
私は歴史の中で戦乱を鎮圧し、権力を奪おうと企む血縁者を追放した
私は歴史の発展の基礎を築き、宇宙艦隊は九龍の助力を得て出航した
これら全てを手放し、「曲」の人生の軌跡を歴史の縦軸と横軸に広げてみる
私の一生は、他人からどのように見られるのだろう?
本棚の列はまるで木組みのように入り組み、折り重なり、折り畳まれながら、果てしない「曲」の海を形作っている
図書館の光と影は、彼女が立つ時間点を軸に変化する。無数の「曲」がこの海の中で縦横無尽に交錯し、この九龍の主の一生を織り上げている
彼女に関するあらゆる情報は無数の柔らかな紐となって編み込まれ、万世銘によって忠実にこの空間に記録される
私は自分の一生をどのように他人に語ればいいのだろう?
私は戦わなければならない
万世銘の外側であろうと、内側であろうとも
しかし、私がそれで動揺したことはない
私は戦い続けなければならない。なぜなら――
九龍が未来へ進むために支払うべき「対価」となる資格を持つのは、私ただひとり
「理想的な信頼度の推演目標に至る、最後の分岐点は……あなたの死です」
「私にはこの推演目標の正誤を確認できませんが、これは制御不能な変数の乱れの中、唯一得られた近似解です」
時の流れは早く、私は万世銘の中で何度この循環を経験したのか、もう確かめることすらできない。しかし――
九龍は、決して立ち止まらない
私は数千、数万の剣と銃の墓地に立っている
簒奪者を必ず追放する。全てを犠牲にしようとも、九龍と万世銘を守り抜く
私は運命の蜘蛛の糸をしっかりと握り、九龍の明日を掴み取る
私が――
九龍の山々と万世銘の太陽を築く
私は自分の一生を他人に語るつもりはない――
私を裁くことができるのは、時の流れと九龍の山河だけ
華胥の再起動には33分かかる
しかし、華胥を一度再起動すれば、それは全ての万世銘のデータをパニシングに曝すことを意味する
アシモフ、ヴィリアー、ネヴィルの3人が同時にコードを再構築しても、シュルツの手から華胥を奪い返せる確率は50%しかない
空中庭園の執行小隊は、すでにエリアポイントを携えて地上に到着していた――
おい!なあ!ドルベ!さっさとあいつらを止めろ!早く!
無理なら先にあいつらを外で止めて――
後から来た部隊が、もうエリアポイントを設置してやがんだよ!
そのエリアポイントを持って、彼らをこの街から出ていかせなさい
疲れ果てたような人影がテントの外から現れた。彼女は人を背負い、すぐ側に同じく傷だらけの蒲牢を従えている
もう一度告げます。早急に、彼らをこの街から出ていかせなさい
もし空中庭園が九龍に対して宇宙兵器を使おうものなら、私がこの手で空中庭園の者を皆殺しにします
華胥の再起動を始めてください
責任は私が負います
九龍の主は玉座に戻った