夢の中で目は肉体を離れ、幽霊のようにこの世の全てを見下ろしていた
┛┛▅見た▃▄▁▆過去▁▄▁▅▃▄▁▆┛┛▁▄▁……
君、何か手伝おうか?何となくボンヤリしてるようだったけど……
皆さん初めまして、ルシアと申します。機種番号BPL-01、紅蓮。グレイレイヴンの隊長です――
私は後悔していません。バネッサ総司令とかつての隊員たちに、兵士として、そしてグレイレイヴンの一員として、私の意志を伝えずにはいられませんでした
未知とは必ずしも解がないことではなく、時には、未知こそが真の希望をもたらす……あなたたちがずっと僕の側にいてくれると知っている今、僕は必ずやり遂げてみせます
▁▆┛▅▃見た▄┛▁▄<phonetic=カイウス>彼女</phonetic>▁……▁▄▁▃▄┛▁……
……一度解き放たれたら――再選別をパスできないルナ、あるいはコレドールであれ、それを頼みに昇格ネットワークと融合する日が訪れる。違いは誰が主導権を握るかだけです
鍵はかなり完成に近付いています……もしかすると、彼女は本当に完璧な「復路の切符」になれるかもしれませんね
見た▄┛▁▄▁……▁▄▁▃▄┛▁……▁▆┛▅▃
穏やかで安らかな、馴染み深いのにどこか見知らぬ世界
視線が急激に高く引き上げられると、紺碧の星が視界の先に現れた。その星の海から、ピンク色の髪の女性がゆっくりと歩み寄ってきた
やっと目覚めましたか……
ようやく自身の目を制御して、全てを見ることができる……
彼女は一瞬考え込み、その口調は、ハッと何かを悟ったようだった
ついに……本当のチケットを手に入れられます
勢いよく目を開くと、視線は異重合塔へ沈んでいった。周囲は何も起こらなかったかのように静まり返っている
異重合塔の動揺は、赤潮から降臨したカイウスによって鎮められた
赤い液体が流れる裂け目は次第に閉じ合わさって、床に散らばっていた蝶の残翅も全て塔の中へと溶けていった
残存するコレドールのエネルギーが塔の隙間を埋めていく。カイウスはそっと目を伏せ、0号代行者の力を感じ取った
0号代行者の権限を完全に掌握すると、人間の視線は、ようやく自分と深く結びついたこの体にしっかりと宿れるようになった
人形の奇妙な口調が異重合塔の中に響いた
…………
その力を手に入れた気分はいかがですか?
0号代行者の権限の中で、異重合塔内の時間と空間は、凝縮されたガラス玉のように見えた。それは操る者の意志に応じて変化する。しかし……
カイウスは異重合塔を制御しようと試みた
塔は震えたものの、大した「返事」は返ってこなかった
命懸けで0号代行者の権限を手に入れ、フォン·ネガットとコレドールの戦いから異重合塔コアを奪い取った……
人形は異重合塔内の力を繰り返し吸収し、それによって塔の成長を止め、全てを正しい道に戻そうとした……
しかし何をしようと、異重合塔は微かな反応しか返さない
塔は虚ろに震え、新たな主人に力なく応答するだけだった。それはガラスの彫刻作品のように脆く、ほんの少し触れただけでいつでも崩れ落ちそうなほどだった
なぜ、なぜまだ異重合塔が使えない!?
先ほどまでの落ち着きが嘘のように、人形は更に動きを大きくした
……カイウス?
彼女の呼びかけに応えることなく、人形の動きはますます激しくなっていく。異重合塔は天と地を貫くような悲鳴を上げた
膨大な「情報」が頭の中に流れ込み、天地を貫く異重合塔はなおも「成長」し続けている
過去と未来が変動してもなお、塔は決してその成長を止めようとしない
強烈な悲しみがこみ上げ、目の前にあるもの全てを打ち砕こうとしたが、それはある瞬間に突然止まった
…………
高みから見下ろす神は、水を離れて干からびかけた魚のようだ。彼女の表情に変化はなかったが、塔内には悲しみの気配が広がり続けていた
人形の声には絶望が溢れている
カイウスの顔は苦しみで覆われていた
塔は螺旋状に上へと伸び、枝葉のように複雑に絡み合っている
カイウスが0号代行者の権限を手に入れたとしても、フォン·ネガットとコレドールが無軌道に暴れたせいで、塔内の情報は幾何級数的に増加していた……
見ましたね
ピンク色の髪の女性は、涙を流す新たな「神」をじっと見つめ、悲しげに微笑んでいた
使えないのか……それとも、使う勇気がないのですか?
使えない
深紅の塔は螺旋状に天へとまっすぐ伸び、きわめて不安定で危険だった。塔の「階層」は、それぞれが何度も何度も分裂を繰り返している
異重合塔によって改変した「過去」と「未来」は消えることなく、「積み石」は重なり続けて危機的な状況にあった
基盤がいまだ不安定な「神」が「下の層」に戻る、あるいは全てを変えようと手を出そうものなら、積み上げられた無限の情報が一瞬で崩壊する可能性がある
その結果、人類文明は消滅するだろう
なぜ……なぜ一切を全うしたのに、運命の罠を変えることができない……
それが、「偉大な存在たち」が描いた全てだからです
イシュマエルは穏やかに口を開いた
……あなたは私と同じように、別の視界から覗き見ることができる
ここに留まっているのは、私と同じ、単なる「投影」にすぎません
本質的に、私たちは同じ存在です。そして、私たちの結末も……同じ運命にあります
広大な星の海が宇宙の果てで爆発し、星屑は四方へ飛び散り、煙が立ち込めた
彼女の視線は無数の宇宙を越え……この世界を見据えていた
私たちは、いずれ世界の果てで再び出会います
互いに崩壊した文明を抱えながら、星空と海の奥深くで寄り添い合い、新たな岸辺を探し続ける
新たに生まれた「神」は、血と涙が溢れる両目を見開いた
…………
でも、あなたにはもう、ここを救う力は残っていません……
力は徐々に成長し、翼が日を遮った。喜怒哀楽全ての感情を宿した全ての漆黒の瞳に、狂ったように積み上がっていく異重合塔が映る
必ず方法はある
赤潮は徐々に干上がり、その中に含まれる「情報」は少しずつ人形に吸収されていった
…………
過剰な情報に圧し潰されて、完全に理性を失うことになりますよ
ピンク色の髪の女性は不思議そうに訊ねた
今の「姿」を維持するのでは……ダメなのですか?
パニシングがこの文明の全てを保存します。文明を復元する方法は、いつか必ず見つかるはずです
もしあなたがフォン·ネガットとコレドールが生み出した、この終わりのない情報を吸収し続けるのなら……
きっと情報を受け止め切れず、自我を失うでしょうね
あなたがたとえ高次元の存在であろうと、神であろうと――必ず<color=#ff4e4eff>黄昏</color>を迎えます
イシュマエルは1歩後ずさり、混沌とした瞳のカイウスを見つめた
ごめんなさい……私は、今は過去の時間の中に留まらなければいけません
でも、あなたは前に進んで。もっともっと遠くまで歩き、皆を取り戻せる場所まで行かなければ
リーフ、リー……それに仲間たち、皆が地球を離れたのは、ここを見捨てたからじゃない……もっと遠い場所で探すためです……希望と、あなたを
その時が来たら……もしまだ望むなら、私を探しに来てください
自分<//指揮官>がこの世界に残したのは、ただの「投影」だけではない
ここには……
自分<//指揮官>の記憶が宿り……
自分<//指揮官>の感情が託され……
自分<//指揮官>の絆が刻まれている……
眩しく輝く炎は散り散りになり、時間はここで凍りついた
無数の赤い糸が出現し、異重合塔の周囲や地球全体のあちこちにびっしりと絡みついた
星の海への扉は強引に開かれ、時間の大河の中で、数え切れないほどの欠片が浮かんでは沈む
自分<//指揮官>……自分<//[player name]>は
ここから――人類文明の時間を<color=#ff4e4eff>再構築</color>する
糸は赤や金の破片を巻き込みながら、徐々に膨張し、青い星全体を包み込んでいく
星の海には死と再生、喜びと悲鳴が広がっていた
パニシングが……空中庭園に追いついた……
……極寒だ
動物にも異変が……誰も逃れられない……
私の使命は果たされたのだろうか……
君にお別れを言いに来たんだ……
なぜ……こんな世界に生まれてしまったんだ……
彼女は悲しげな長いため息と、無数の人々の「声」を聞いた
彼女は、人類文明から切り離された乱雑なこだまを、全て自身の胸の内に収めた
無限の因果と時間が意識海を満たす。彼女の耳元には、混ざり合う騒がしい耳障りな囁きだけが残ったが、その内容ははっきり聞き取れない
意識は何度も爆発し、何度も再構築された
星団は消えては現れ、宇宙空間で凝固する――太古の昔から変わらない
彼ら<//人類>は雄叫びを上げる
彼ら<//人類>は彷徨う
彼ら<//人類>は悲嘆にくれる
彼ら<//人類>は喜びに満ち、新たな命の到来を迎える
彼ら<//人類>は怒りに燃え、侵略者に刃を振り上げる――
異重合塔に積み上げられた無数光年分の「情報」が、絶え間なく彼女の意識海へ吸収されていく。文明は哀歌となり、最後の葬送を悲痛に奏でていた
理性が崩壊寸前となった「神」は、無数の「時間」に絡みつかれながら、異重合塔内を暴れ回った
目に映るもの全てを破壊しながら、彼女は無数の人類の、また人類のものではない「結末」を見た
彼女は見た。「偉大な存在たち」が降臨させた武器に地球全体があっけなく押し潰され、薄片と化すのを
彼女は見た。赤い不気味な霧が星を覆い尽くし、一切の静寂に包まれるのを
彼女は見た。昼と夜が「ルール」によって逆転し、大地が遠ざかり、生命が深海で溺れ死ぬさまを
彼女は見た。「太陽」のような恒星が膨張し、灼熱のエネルギーが星域全体を呑み込むのを……
彼女は見た。どこか見覚えのある……紋章を
狂気の瀬戸際にいたカイウスは、四翼の白い鴉が刻まれた扉の前で、無意識に足を止めた
ここは……
おぼろげな記憶が、意識海の底から湧き上がる
ここは、どこなのです?
……墓場への入り口のひとつです
墓場への……入り口
カイウスはその白い扉に触れた
交差する織り糸の中で、彼女は静かに微笑んだ
見せてほしい。本物の、「凝固」された琥珀を