Story Reader / 本編シナリオ / 32 遥かなる星の導き / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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32-22 軌跡

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彼女はもう「地球観察日記」を記録することはなくなったが、時折、あの小さな星を眺めることは続けていた

全ては運命の軌跡に従って進む

空中庭園は地球を離れ、残された人類は地上で必死にもがいている

ずっと先の未来で、地上の人類がついにパニシングを完全に掌握できる日が来るかもしれない

あるいは、空中庭園が遥か遠い深宇宙の先で、人類が定住できる新しい故郷を見つけるかもしれない

小さな蝶は、それ以上の大きな波を起こすことはなかったようだ

全ては運命の軌跡に従って進む――

……

彼女は投影された青い星に人差し指で触れ、小さくため息をついた

まだ地球を見ているのですか?

うん……

引力がどんどん強くなってる。「ナナミ」はきっともうディスカバリー号に乗って宇宙に出たはず

流れるデータの海の中の小さな波形を見つけると、彼女は両手をデータの海に沈め、見たい画面を探し始めた

待って、これって……

信じられない思いで、彼女はその仄暗い座標点を見つけた。それを拡大し、また更に拡大した――

グレイレイヴン指揮官!?

グレイレイヴン指揮官が……異重合塔から出てきた

演算された262537412640768743個のどの世界でも、指揮官は異重合塔の中で消えていたのに

でも……出てきたんだね

彼女は扉を押し開いて部屋に入ってきたふたりを見た

部屋の中には白いドレスを身に纏った少女が静かに座り、微笑みながらこちらを見つめていた

自分の傍らにいるナナミとはまったく違う外見をしている

見慣れたポニーテールではなく、灰青色の長く滑らかな髪が肩に流れている。今まで一度も見たことがない姿だった

こんにちは、グレイレイヴン指揮官。改めて自己紹介するね

私はナナミ。ディスカバリー号の中枢で、この空間の臨時管理者。私たちは初対面だけど、ずっと前から指揮官のことは知ってたよ!

さすがグレイレイヴン指揮官だね~

ここはデロリアン-ディスカバリー号、ナナミの宇宙船なんだよ!

「この空間」だ

ナナミも先ほどの「ハカマ」も、この場所を説明する際に、「宇宙」ではなく「空間」という言葉を使っていた

うーん、やっぱり隠し通せなかったか

確かにここはもう、「演算」の空間じゃないよ

あなたたちの認識なら、ここは……「扉」の向こう側

異重合塔と繋がる「扉」だよ。ここは回収されたあとの空間なの

フォン·ネガット

ある女性から聞いた話では、もうひとつの「扉」の向こうには<color=#ff4e4eff>生命のない文明</color>が存在しているらしいのです

その文明は真空零点エネルギーを獲得した文明を回収し、試練を与えます。バランスを崩して不適切に発展した文明データを収穫し、「扉」を持ち帰り、自身で進化させるのだと

もうどこかでその話を聞いたんだね~

ここは文明の墓場で、同時に文明が芽生える場所でもあるの。新生と消滅が常に繰り返されてる

彼女は船窓のカーテンをそっと開けた

真っ暗な帷の中を永遠の時を流れる星の川が流れ、遥か遠くでは小さな光点が、数千万光年の距離を隔てて瞬いている

フォン·ネガットの話によれば、「扉」の向こうに生命はいないはずだ

まさか……自分とナナミが演算を行っている間に、人類文明は完全に滅びたのだろうか?

そうじゃないよ

あなたがここに来られたのは、あなたと私……そしてナナミの間に意識リンクが存在しているから

あなたがここに来られたのは、あなたと私……そしてナナミの間に意識リンクが存在しているから

ナナミは何度も演算を繰り返す中で、「宇宙」のある法則に触れたの。その法則とナナミの演算能力のお陰で、あなたはここにたどり着けたの

ちょっとズルしちゃったけど、誰にも見つからないよ。ナナミ、慎重にやったもん~

たとえ彼女が「未来のナナミ」だとしても、全ての事実が明らかになるまで、「彼女は一体何を望んでいるのか?」という疑問が拭えない

目の前の少女はふっと笑った

ここでずっと漂ってるのって、すごく退屈なんだよね

恒星も宇宙も新生も……最初は面白かったけど、ずっと見てたら飽きちゃった

目的があるとしたら……楽しいものを見つけること!

長い髪の少女はウインクをした

今、あなたたちがここに立っているのも、すでに奇跡のひとつなんだよ

だから、あなたたちがこの「未来」でどこまで進めるか見てみたいんだ

ってことは……

ぼんやりしているように見えたナナミだったが、しばらく考え込んだあと、嬉々として話し始めた

これってつまり、ナナミたち、クリアしたってこと!?じゃあ、クリアボーナスがもらえるの!?

ふたりはどんなクリアボーナスがいい?

あげられるものが欲しいものとは限らない。けど、あなたたちが本当に欲しいものをどうにかしてあげられる可能性だってあるよ

だから、ふたりの意見を聞かせて

ナナミはね、人類と機械体が一緒に地球で暮らしてほしい!

うんうん。その願い、ちゃんと聞いたからね

あなたは?

億万の星空を超え、無数の光年を超えた彼女の視線が、人間の指揮官の顔に注がれた

教えて。あなたの願いは……何?

絶対に……地球じゃなきゃダメ?

もちろんだよ!だってナナミ、指揮官と一緒にラブハートの特製ケーキを食べに行かなきゃならないんだもん!

正直に話すね……この時空は、まだあまり期待できないんだ

データの海がうねり、無数の星明かりが地球の形を映し出す

雲を突くほど高い螺旋状の塔が、大地の上に奇妙にそびえ立っていた

異重合塔は今も存在してる。0号代行者がその権限を握ってる限り、全ての問題の解決策が見つからないの

コレドールは確かに死んだけど、0号代行者はコレドールだけじゃない

地上では、変異赤潮が虚空に歪な模様を描くようにうねっている

0号代行者はただの称号なの。文明が<phonetic=パニシング>汚染模倣因子</phonetic>に「印」をつけられると、0号代行者はどこにだって存在しうる

コレドールは、その始まりにすぎないんだ

他に解決策は何もないの?

うーん……

あなたに新しい機械の体を用意して、あなたの意識をここに引き込むことはできるよ

長い髪の少女の目が自分に向いた

ここだと人間の体では生存できない。だけど、もしかしたら機械で構成された意識なら「生命」とはみなされないかもしれない

彼女は無意識にスカートの裾をいじっている

ここにずっといるっていうのはどう?

ここに残って、一緒に暮らすの

ここに……残る?

無茶なお願いってわけでもないんだよ

彼女が指を軽く動かすと、データの波が地上の状況を構築していった

たとえ、あなたたちが異重合塔のコアを手に入れたとしても――たとえ、あなたたちに研究資料の一部をあげたとしても――

今のあなたたちの地球へ「情報」を伝達するには、限界がある

あなたたちにあげられるのは……あなたたちがすでに手をつけ始めた技術のことくらいかな……

あの異重合コアのような――

客観的に考えてみて。全ての研究を完了させたとして、誰が今の赤潮を止められるの?

一度<phonetic=汚染模倣因子>パニシング</phonetic>が「回収」を終えれば、その文明の種を持って「扉」の向こうに戻ってしまう……

そうなったら、私たちはここでしか会えなくなる

なんだか怖いね……

でもナナミ、指揮官が機械体になるなんてイヤだ。指揮官は今のままが一番いいんだよ

ドミニクですら成し遂げられなかった任務だよ。他に確証が……

……

wohoo!~

もしかすると、ナナミはこの「未来」のために生まれたのかもね!

鎧を身に纏った少女は剣を高々と掲げた

もしかしたら!ナナミの使命は!地球を救うことなのかも!

……

命は、最も重い願いだ

人生は死へと向かう旅路だが、命の意味は決して死によって定義されるべきではない

全ての犠牲は新しい生のためにあり、全ての新しい生は明日の希望のためにある

数多の人々がもがきながら、薪のように燃え上がっている

彼らは自らの肉体を燃やし、永遠に不屈の道標となった

彼らは願い続ける、いつか来るその日を

白い鳩が緑の大地を掠めて飛ぶ、その日を

……絶対にそうしなきゃいけないの?ここに留まるのは……ダメ?

でも、やっと異重合塔を出られたのに……

ナナミやルシア……

リーフ、そしてリーがいたからだ

指揮官?

指揮官……

指揮官

自分に結ばれた無数の絆が力強く手を引くように、自分を塔の深淵から救い上げてくれた

彼らが魂をすり減らし、計り知れないほどの犠牲を払い、数え切れない失敗を山のように積み重ね、それが最後の結末への礎となった

ナナミも手伝うよ!指揮官!

……

……

長い髪の少女は小さくため息をついた

でも、その「結果」を達成するには……

彼女はデータで構築された広大な海をかき回すように指でなぞった

大きな代償を払うことになっちゃう。あなたたちがその「代償」を背負えるかはわからないよ

……今の考えじゃ想像もつかないようなものだよ。それに、その「代償」を払うのはあなただけじゃない

そこまでの「代償」を払っても、最後に得られるのは変化するチャンスだけかもしれない

あなたたちは……それでもいいの?

うん……

それで、機械体と人類が一緒に地球で幸せに暮らせるのなら、ナナミはそれがいい!

深宇宙を彷徨う生活なんて、退屈すぎるもん……

あなたも、心が決まっているの?

ゆっくり考えて。時間はたくさんあるからね

もちろん、ここに留まりたいのなら……大歓迎だよ

彼女の言う「代償」とは一体何なのだろう

このせいで、地上の人類が更なる災厄に見舞われないだろうか?

しかし、もしこのままなら……変異赤潮が拡大し、いずれ<phonetic=汚染模倣因子>パニシング</phonetic>に人類文明の全てを回収されてしまう

それなら……

それなら……

ついてきて

長い髪の少女は、背後の大きな扉を押し開けた