Story Reader / 本編シナリオ / 32 遥かなる星の導き / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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32-21 時針は回る

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彼女は窓辺に座り、遥か昔から変わらぬ星空を見つめていた

無数の星々が煌めき、肉眼ではわからない速度でゆっくりと移動している

壮大な古代の恒星たちは大河の流れの中で融合し、静かに爆発し、静かに消えていく

この予言のような景色を、彼女はもう数え切れないほど見てきた

ナナミ

地球は……今頃どうなってるのかな?

テーブルの上には広大な星図が投影されている。彼女の心に深く刻まれた座標をタップすると、小さな青と緑の星が投影の中に現れた

ナナミ地球観察日記·1

長い間、この形式で記録してなかった。なんだか懐かしい気分

ここでの時間は相変わらず退屈。命も時間もなく、ただ無数の孵化と再生を繰り返す泡の影だけがある

でも、あの日……ふと、なんとなく追った捻じれた座標の先で、新生の「宇宙」を見つけた

その宇宙の中に、昔の自分がいた

……ナナミ様?

……ん?

ダイアリー形式を使用されるなんて、かなり久しぶりですね。何かあったのですか?

そうなの!

私……ナナミ、新生の小さな宇宙を見つけたんだ!

新生の……宇宙ですか?

白い髪の女性は、少女の目の前にある宇宙の投影を見つめた

これは……地球ですか?

そう、これは……昔の地球だよ

彼女は懐かしむようにその青い星を指でなぞった

何かあったのですか?

ハカマはナナミの視線を追い、「地球」と呼ばれるその星を見つめた

ワームホールでワープした時、時空の座標が捻じれて、この道を見つけたんだ……

……無限ループが始まったのですか?

そうかも

でも、世界って最初からずっと、無限ループの中を進んでるんじゃない?

始まっては消滅する。無数の星雲が絶え間なく新しい命の生まれ変わりを繰り返しながら、ディスカバリー号の側を回り続けている

……

ナナミ地球観察日記·3

やっぱり「<phonetic=コレドール>彼女</phonetic>」が現れた

海底に赤潮が渦巻き、地上でも同じように赤潮が騒ぎ立ててる

「<phonetic=コレドール>彼女</phonetic>」に引き寄せられて、もうすぐ「世界」と「世界」が融合する。異重合塔の降臨はまもなく……

ナナミは唇を尖らせながら、記録を続けた

「扉」の向こうは、時間線上で進行中の出来事に干渉できない。でも「彼女」が時間の流れを壊したのなら、ナナミにだって……

ハカマ、2143号資料を4次元通信可能な状態にパッケージングしてくれる?地球に送りたいものがあるの

そのタイミングでは、人間はまだ4次元通信を受信する能力を有しません。それに……

時間線に影響を与える可能性がある。一度でも「偉大な存在たち」に気付かれたら……

うん、知ってる

チャンスは一瞬だけ

時空座標を開くと、新生宇宙を示す座標が僅かにずれていた

……わかりました

資料のパッケージングが終わりました。時空座標ロックオン、ワームホールからワープすると同時に送信します

……これはナナミがみんなに届ける……「未来」ってプレゼントだよ

そして、ナナミがこの「無限ループ」を打ち破るための最初の一手でもある

……

ナナミ地球観察日記·5

全てが過去の通りに進むのは予想してた。でも……これが本当に最良の結末?

メビウスの輪の上を歩き続ける蟻のように、同じ物語を際限なく繰り返してる

昔、「自分」に伝えたことがある。全ての可能性を知っていて、その中で最善の選択をしても

結末、あるいはその途中に起こってしまう悲劇は回避できないって

私は、「ナナミ」に違う選択をしてほしいのかな?

ナナミは……長い時間がすぎたあとでも、やっぱりディスカバリー号に乗り込んで、星空へ向かう?

書く手を止め、ナナミは投影された青い地球を見つめた

もし、他にできることがあったなら、彼女は本当にひとりきりで宇宙に放擲されることを望んだだろうか?

もしディスカバリー号が十分に大きければ、地球上の全人類をここに乗せたいと思ったかもしれない

そして、全ての友達とその大きな方舟に乗り、無限の宇宙へと出航する

……

ナナミ地球観察日記·6

(雑然としたメモや時空座標、削除されたアイコン、計算の痕跡等)

新たな座標を弾き出した

もしかしたら……

ここにいるんでしょ?出てきて、ドミニク

ドミニク

これは規則違反だし、君のアルゴリズムも消耗する。ここへ来るべきじゃない

この時空の時間線は、汚染模倣因子にコントロールされて完全に乱されてる。「偉大な存在たち」はここを見つけられないよ

ドミニク

……

<phonetic=我々>■</phonetic>が君に隠せることなどもうない。何が望みだ?

扉の向こうの管理者である君は、すでにこの世の全てを知っているだろう……

これが、無限ループを断ち切る最後のチャンスかもしれないの

渡すべきものをナナミにちょうだい。あなたの代わりに、[player name]に届ける

ドミニク

……

そんなことをすれば、君は消えてしまうのでは?

ナナミはそれでもいいよ

ドミニク

……

これは招待状だ

この「招待状」を作成したのは、異重合塔の中にいるドミニクだ。<phonetic=我々>■</phonetic>は適切な人物を「継承者」に選ぶだろう

継承者が招待を受け入れると、適切なタイミングで意識をデータ化し、ゲシュタルトに進入して、この時代の汚染模倣因子を封じ込める

ひとつ前の「ドミニク」は最後に不測の事態で亡くなり、「招待状」は送られることなく第1リアクターに残されたままだ

これは<phonetic=我々>■</phonetic>の最後の「招待状」だ。そして、異重合塔を開く鍵でもある

じゃあ、ナナミが預かっていくね

「愛」という感情をどう定義すればいいのか、私は知らない

でも、私はここにいる。これが最高にして最適な証明だった

こうすることでのみ、ナナミは地上の人々に方向を指し示すことができる

……

ナナミ地球観察日記·7

蝶は嵐を巻き起こした

地上の全ては以前と似ているようで、どこか違っている

「情報」を多く吸収しすぎて、<phonetic=コレドール>0号代行者</phonetic>は、前より遥かに強くなった

彼女は異重合塔を部分的に操作する権限を手にしたみたい

ナナミの行動は正しかったのかな?

それとも、無限ループを断ち切るどころか、この時空をもっと深い深淵に押しやってしまったの?

異重合塔は、今も高くなり続けてる……

ハカマ

……ナナミ様

白い髪の女性は、少女の背後で静かに控えていた

ナナミ

私……間違えたのかな?

ハカマ

……

「結末」に至るまで、誰もその結論を下すことはできません

ナナミ

……<phonetic=コレドール>0号代行者</phonetic>がすでに現れちゃった。ナナミはもう、あの時空に触れられない

彼らはもう、「印」を刻まれた……

時空の分岐によって、異重合塔は何層にも重なり合いながら積み上がっている。しかし、変化したのは「事柄」であって、「情報」ではない

冗長で過剰な情報が累積し、空高くそびえ立つ塔のように積み上がっていった

ナナミ

あまりに多くの「情報」が、低層に堆積してる。それを取り除かないと……

彼らが、更に莫大な重荷を背負っちゃう

ワームホールと裂け目から特定した座標を通じて、彼女は地球で起こる一切の出来事をはっきりと見ていた

赤潮は狂ったように増殖し、氾濫しながら目に映るもの全てを呑み込んでいる

コレドールは異重合塔の中へ姿をくらまし、指揮官は……ルシアとともに、二度と戻れない塔へ足を踏み入れた

起こった出来事の全ては無限ループの道筋と似ているが、どこか違っているようにも見える

ナナミ

……

もしかすると……この時空の「ナナミ」も、じきに過去全ての時間線における自分と同じになるのかもしれない

ディスカバリー号で星空へ亡命し、ついに巨大な宇宙船は「扉」の向こうへ至る。全ての無限ループの中の「ナナミ」と同じく、「ナナミ」に属する未来へと収束していく

どのナナミも、同じ選択をした

こうすることで初めて、遥か未来の時間線で、人類文明はこの災厄をゆっくりと乗り越えられるのかもしれない

ただ……

ナナミという名の少女は、もう二度と地球の星空を見られない

彼女はそっと手元の日記帳を閉じ、傍らの本棚に置いた

本棚には、同じような日記帳が山のように積まれていた