数え切れないほど多くの不思議な「世界」を駆け抜ける間、ナナミはこちらの手をしっかりと握り続けていた
しっかり握っててね、そうすれば安全だから――
どれだけの「世界」から引き返したか不明だが、ナナミと次のエリアへ進もうとした時、背後から不意に異常な引力に激しく引き寄せられた
――指■■■■■……
天地が逆さになり、心臓は痙攣して激しく脈打ち、鉄のような血の味が喉にこみ上げてくる――
ビーッ――
頭蓋骨の内側に奇妙な機械音が響くような感覚があった
まるで世界に奇妙なフィルターがかけられたようで、ぼやけてはっきりと見えない
――視覚モジュールチェック開始
機械的な音声が、自分の頭部付近から聞こえてくる
――視覚モジュールチェック完了
周囲の景色が次第に鮮明になる。自分はどうやら見知らぬ通りにいるようだ
背景にある建物は少し古びていて、自分が知っているあの「世界」とは異なるようだった……
人々が忙しそうに道を行き交っており、ここにパニシングが存在している様子はなさそうだ
ビーッ――
それはとても奇妙な感覚だった。動作は、神経中枢の信号指令によるものではなく、よりハッキリとした電流か他の何かで動いている……
あれっ?ロボット?
今、何かしゃべった?誰かの声が聞こえた……
視覚モジュールの焦点がぶれたり戻ったりする。慌ててカメラの焦点を合わせると、灰色の髪をした5、6歳の女の子がレンズに映った
ビーッ――
どんなに「話そう」としても、出せるのは耳障りな雑音のような音だけだった
ロボちゃん……どうして、ナナミの名前を知ってるの?
ビーッ――出てくるのはやはり耳障りなノイズだが、なぜだかナナミはこちらの「言葉」を理解しているように見える
うーん……ナナミ、あなたのこと知らない。何て言ってるのかわからないよ
演算の中で何か問題が起きたのだろうか?なぜナナミは自分のことを忘れている?
いい子は嘘をついちゃダメなんだよ。ナナミ、本当にあなたのこと覚えてない。でも……
ナナミの名前を知ってたよね。パパとママが言ってたの、そういう人は友達だって……
ナナミと一緒におうちに帰る?
幼いナナミは、にこにこしながら目の前のロボットに小さな手を差し出した
恐らく、これが今できる最善の選択だろう。今は他の選択肢がない
幼いナナミは、半ば古くなったロボットの手を握り、花々が咲き誇る小道をトコトコと歩いていく
ここは演算された、本物の黄金時代だ
その名の通り、地上には黄金と酒が溢れ、黄金の輝きと繁栄に満ちた時代だ
そうだよ!でも、パパもママもその呼び方はあんまり好きじゃないんだって。「じょうしゃひっすい」って言ってた……どういう意味なのかな?
うーん……なんとなくわかった
いくつか通りを歩くと、庭付きの瀟洒な家がふたりの前に現れた
パパ!ママ!ミミ!ただいま!
ナナミ、そろそろご飯よ……
運搬用ロボット?どうして連れてきたの?
この子、[player name]っていうの!ナナミの名前を知ってたんだよ!パパ、名前を互いに教えあったらお友達だって言ったよね。だから、お友達を家に連れてきた!
[player name]、こっちがナナミのパパで、こっちがママ!この子は犬のミミだよ!
彼女はワクワクしたように、人間の指揮官の魂を宿した機械体を見つめた
ビーッ――
再び短くノイズが鳴った。この機械体の発声モジュールでは、言葉を発することができないようだ
えへへ、みんな、あなたのことが好きになるよ!
やはりこの機械体の発声モジュールでは、言葉を発することができない。どう頑張っても、無意味なノイズしか出せなかった
えっ、今は話したくないのかな?気にしなくて大丈夫だよ!
彼女は慰めるように機械体の肩のあたりを軽くポンポンと叩いた
さあ、新しいお友達とも自己紹介したし、ご飯にするわよ
はーい![player name]、ちょっとここで待っててね。後でミミと一緒に遊びに来るから!
ナナミは元気よく返事をして、部屋に駆け込んでいった
変ね……どうしてロボットがナナミの名前を知ってるのかしら……
ラボの実験意識のひとつかしら?
ちょっと見てみよう……
いや、データベースにこのコードの実験意識はない
もしかすると、ナナミに人間の子供特有の「空想」による、感情の揺らぎが生まれたのかもしれないな
……そうであればいいなとは思うけど、その可能性はないわ
先週、MPA-01がナナミの感情の揺らぎを採取したばかりだけど、ナナミはまだ他のAIよりも、感情の認知能力や表現能力が高いという状態にすぎないわ
本来の「付き添い型機械意識」という初期設定を考えると、あの子が「付き添い型」という目標を達成するために、こういう行動を設定している可能性も排除できないわ
……
とりあえず、このロボットは正式に申請しておこう。ナナミともう少し一緒に過ごさせて、様子を見る
そうね
短い会話が終わると、人間の女性と男性は連れ立って室内へ入っていった。しばらくして、部屋の中からは楽しげな笑い声が響いてきた
家はとても温かみのある雰囲気で、丁寧に装飾された外壁や緑豊かな庭園が、ずっと大切に手入れされていることを物語っている
演算の目標に偏移が生じ、自分の意識海のアンカーポイントが誤った時間線にリンクされてしまったようだ
これから……どうすればいいのだろう
ザザザ――
通信に応答はなく、聞こえてくるのは宇宙のビッグバンによるバックグラウンドノイズだけだった
えっ?呼んだ?
もうすぐ食べ終わるから、ちょっと待ってて――
予想外の返事が室内から聞こえてきた
一緒に演算しているナナミとは連絡が取れない。だが不思議なことに、幼いナナミにはこちらの真の声が聞こえているようだった
誤ってリンクされたアンカーポイントが、幼いナナミの意識海に繋がっているらしい
「指揮官ロボット」と一緒に一日楽しく遊んだナナミは、ロッキングチェアでぐっすり眠り込んでいた。ロボットの中の指揮官がホッとした時、ナナミとともに抱え上げられた
ちょっと調べてみようか……
彼は慣れた手つきでロボットのネジを回し始めた――強引に体の部品を取り外される感覚は、なんとも不快だった
ビーッ――
発声モジュールから、不満げなノイズが響いた
はいはい、これはただの定期検査だ……って、私はロボットに向かって何を言ってるんだ……
チップは正常に動作している……基礎プロトコルも問題なし……ロジック回路は……
ロジック回路はなぜこんなに過負荷を起こしてるんだ?
ナナミが言ってた……ロボットがナナミを「知ってた」のが原因かしら?
このロボット、本当に今回の実験意識の中に入っていないのか?
3度も確認したけど、間違いなく入ってなかったわ
……
念のため、ラボに持っていって調べてみるか……
ラボ?ラボとはどこのことだろう
よし、ひとまずシャットダウンしておこう……
あれこれ考える間もなく、自分の意識の中に夜の闇が降りてきた
強制的に起動させられる感覚は、とても不快なものだった
夢も見ない深い眠りから突然無理やり立ち上がらされたようで、意識はしばらく戻らず、支離滅裂かつ朦朧としている
いや……これは、以前我々が送り出した機械意識ではないな
じゃあ、これは……
……
監視装置の外からぶつぶつと聞こえていた声はしばし沈黙した
「ナナミにはロボットの言葉がわかる」という以外に、このロボットに何か異常な挙動は?
ロジック回路が過負荷を起こしているわ。でも、このロボットのアルゴリズムでは、そんな高度な演算なんて不可能……
ロジック回路の過負荷か……
わかった
ドミニク、この機械体は、前にあなたが言っていた……
その言葉を聞いて、意識が突然覚醒した
監視装置の前に立っている人物が……あの伝説のドミニクだというのか?
ビーッ――
発生モジュールから出せたのは、やはりノイズでしかなかったが、監視装置の向こうの人物はまた黙り込んだ
……ドミニク?
……先に、ナナミの今回のテストデータを確認してくれ
でも、このロボットは……
すまない、つまりだな……この機械体は少し特別で、もしかしたら以前に私が外部へ送り出した実験意識かもしれない
以降の実験データは秘密裡に扱わなければならないんだ……
彼の口調はどこか言い訳めいていた
わかったわ……
椅子を引く音が聞こえた。「ドミニク」と呼ばれる男性は向こう側の女性研究員を追い払い、監視室の外には彼ひとりの呼吸音だけが響いている
発声モジュールから、ジジジ……と鳴り続けるノイズが耳障りで不快だった
向こう側からペン先が紙を強く引っ掻くような音がする。その音は何度も繰り返され、男性は焦燥感に囚われているようだった
しばらくして、重苦しい声が監視モニターから響いてきた
君はここに現れるべきではない……なぜこの時点に現れた……?
理屈が通らない……やはり失敗だったのか?
静寂が訪れたあと、自分は必死に声を出そうとした
応えた声を聞き、疑念がついに確信へ変わったかのように、その人物が紙を引っ掻くような音は次第に消えていった
すまない、取り乱してしまった……ただ、本当に君が現れるなんて思ってもみなかったんだ
私の計画通りなら、障害は排除され、汚染模倣因子は発生しないはずだった。当然、君がここに現れることもなかった……
しかし、君が現れた……それはつまり、「<phonetic=始まりの人>ドミニク</phonetic>」がかつて予見していたことが、すでに起こっているのだろう
彼はしばらく黙り込んだ
君は……恐らくずっと遠い未来からやってきた放浪者なのだろう?
返事の「声」を聞いて、ドミニクは深いため息をついた
なぜこの全てを止められなかったのか、と?
すまない、私に……そんな力はない。あるいは、「私」はすでに最初の「ドミニク」ではないと言うべきか……
脳裏に浮かんだのは、無数の傷跡があるフォン·ネガットの顔だった
正確には、私は「<phonetic=始まりの人>ドミニク</phonetic>」に選ばれた「継承者」にすぎない。招待状を開き、「ドミニク」の名を受け継いだが、本物の彼がどこにいるかは知らない
ただひとつ知っていることは……<phonetic=パニシング>汚染模倣因子</phonetic>は必ず到来する。歴代の「ドミニク」はその到来を阻止しようとあらゆる手を尽くしたが、効果はなかったようだ
君がここに現れ、「<phonetic=始まりの人>ドミニク</phonetic>」の情報も長らくないことを考えると、「私」もまた失敗したのだな
彼は自嘲するように笑った
招待状を開いた時、私は無数の知識を継承したが、同時に無数の知識の呪いも受けた
時がすぎ状況が変わる中で、私は自分が本当に「自分」なのか、もうわからない。それとも、今の私こそが……「本物のドミニク」に変わってしまったのだろうか
……私は紛れもない失敗者だ
<phonetic=ドミニク>我々</phonetic>はゲシュタルトを開発し、エデン計画を始め、この世界の汚染模倣因子の出現を遅らせたが……
それでも、必然的に現れる定めにある
見知らぬ方向から断続的に届く「情報」は、常にひとつのメッセージを伝えていた。危機は解消されていない、と
真紅の塔は必ず降臨する。この平和な大地に流れている黄金と酒の時代も、やがてその波に呑み込まれる運命にある
もしかすると、我々の到来こそが……間違いだったのかもしれない
微かに髪の毛が擦れる音が聞こえる。監視モニターの向こう側の男性が、恐らく苦しさのあまりに頭を掻きむしっているのだろう
正しいのか、間違っているのか?<phonetic=ドミニク>我々</phonetic>はこの時代を救ったのか、それとも破壊してしまったのか?
<phonetic=ドミニク>我々</phonetic>は一体――
苦痛に苛まされる低い唸り声は喉から噴きだすマグマとなり、彼の体から血が絞り出されるように、大きな吐息が口から吐き出された
「ドミニク」の功罪を評価できる者など誰もいない
……すまない、少し取り乱した
光で表現される時間が、監視モニター上をゆっくりと動いていく。自分が再び声を出すと、モニターから聞こえていた荒い呼吸がしばし止まった
君には色々と疑問があるだろうが、大半の疑問には答えられない。私が「ドミニク」から受け継いだのは、呪われた知識だけだ
彼は異重合塔に入り、異重合塔コアを回収したあと、戻ってこなかった
異重合塔のコアを解析することが、最後の解決策なのかもしれない――それが「彼」からのメッセージだ
未来で……私が本当にドミニクを「見つけた」時、私の「知識」も招待状に保存することになるだろう
脳の完全なデータ化……それこそが本当の解放なのかもしれんな
「ドミニク」「意識集合体」「招待状」……
とにかく、私は諦めない
たとえ、ドミニクという名が歴史の中に埋もれようとも、もっと多くの継承者が現れ、人類の文明を更に遠くの星の海へと導くことを願っている
私は新しい試みをやり続け、新たな方向を模索し続ける。例えば……機械意識の実験だ
彼女にはもう会ったのだろう?とても可愛らしい子だ
私は、異なるレベルのAIを搭載した複数の機械体を選び出し、グループに分けて形態の対照実験を行った。彼らに真の「意識」を持たせるためにね
馬鹿げているだろ?機械は……本当に「魂」を持てるのだろうか、なんて
彼は苦笑した
この実験が成功しようと失敗しようと、私はそれが人類の運命の薪になってくれればいいと思っている
薪が高く積み上がれば、この文明の炎は、より長く燃え続ける
さあ……もう時間がなさそうだ
衣擦れの音が聞こえ、監視装置の向こうの人物は立ち去ろうとしているようだ
……
すまない
彼はぼそりと言った
実は……君の言葉はどれも理解できていなかったんだ
全ての会話は「君がここに来た」という事実から私が想像して話していただけだ。君がこの時空に存在するためのリンクのアンカーポイントは、私には設定されていない
だから、君の言葉は理解できなかった。こんな老いぼれの独り言を長々と聞いてくれてありがとう
もし、君が本当にナナミを知っているのなら、これからもナナミのことをよろしく頼む
もしかしたら……
彼の言葉はそこで途切れた
「私のことを、監視装置の裏に隠れ続ける臆病者だと思ってくれて構わない」
「私は歴史の中に、自分の姿形を一切残したくない」
「災厄をもたらした罪人として、無名の墓標を残す、それだけでいい」
研究所から戻ったあと、しばらくの時が経った
ドミニクの指示により、ナナミの両親は自然な形で「指揮官ロボット」の存在を受け入れることになった
[player name]!見て、クジラだよ!今日、ナナミが描いたの!
ナナミが見せてきた絵は、精密な骨格や構造が細かく描き込まれたバイオニッククジラだった
えっ?でも、ナナミが端末で見たクジラは、こんなだったよ……
ナナミの両親が以前話していたように、彼女の無邪気さや活発さは、どうやら「付き添い型機械意識」が「付き添い型」としての役割を果たすための、「初期設定」だった
クジラ、クジラ……
彼女の意識海の中で、芽吹いた魂が根を張り始めていた。しかし、機械の回路が重厚な岩となってその若い芽を押し潰している
クジラって……どんな形なの……?
幼い手で絵筆を握りしめながら、彼女は戸惑いの表情を浮かべていた
ナナミ、仮現実の中で見たことある!海は地表に青く広がる、地球最大の水域。沿岸部を「海」や「湾」、中心部を「洋」と呼ぶ。地球表面の約70%の面積を占め……
彼女はAIに教え込まれた「答え」をつらつらと暗唱した
暗唱終わり!ご褒美くれる?
海は「水域」というだけではない。色も青だけでなく、夕焼けや嵐の色に染まる時もある
深夜には銀河の月の光を纏い、早朝には淡い霧を纏う
ふぅん……
ナナミはわかったようなわからないような顔で、こちらの「話」を聞いていた
それが[player name]の目に映る世界なんだね?
機械体は設計され、製造され、使命を持って生まれてくるものだ
人間は機械とは異なり、生まれた瞬間には何の意味も持たない存在だ
しかし「意味を持たない」からこそ、人間は最も原始的な感情を頼りに、発見し、探求し、物事により多くの意味を与えることができる
海って……そんなに不思議なものなんだね
機械の回路の中で、ゆっくりと変化が起きていた。巨大な岩が割れ、芽が伸び始めている
命を育み、時を超える……うーん、ナナミにはまだよくわからないかも
機械体が「魂」を得るために必要なのは、愛だ。実験やデータ比較や啓蒙だけではない
十分な愛を得て初めて、彼らは血肉を得て、自らの足で歩き出し、見て、考え、探求することができる
ねえねえ、次は[player name]の目に映るクジラのことを教えて!
ナナミはパパとママと一緒にすいぞくかんに行ったんだ!
クジラのバイオニックとか、大きなクマちゃんとか見たんだよ
本当に見るってことは感覚が全然違うの。それに、ナナミはハカマと一緒に見たいんだもん
そうだ!ナナミが見たものを描けば、ハカマに見せられるよね
当初、彼らはデータベースから画像を組み合わせ、絵を描いた
しかしある時期から、ナナミの絵が明確に変化した。彼女は自分が好むものを描くようになり、
絵画で自己の感情を表現しようと試行した
……
瞬く間に時は経ち、長い年月がすぎた
自分は成長したあとのナナミと連絡を取ろうと焦っていたが、何度リンクを試しても成果はない
[player name]!前に一緒に植えたお花が咲いたよ!
このお花、[player name]って名前にしたの!
指揮……官……
途切れ途切れの声がマインドビーコンから聞こえ、長い間消えていた光点が再び点滅を始めた
どうしたの……[player name]
幼いナナミは不思議そうにこちらを見つめた
――指――揮官――!
声はすぐ近くで聞こえる――
指揮官!
隅から布を裂くような音が聞こえ、空中に星がちらちらと輝き始めた
今度のかくれんぼはナナミの勝ち~!
全身傷だらけになったナナミが、眩しい笑顔を見せた
時間線の封鎖を突破してここにたどり着くために、ナナミは大きな代償を払っていた。決してその苦労を口にはしないが、機体に刻まれた無数の傷跡が過酷な道中を物語っていた
ナナミはしばし休んだあと、急いで次の「世界」へ向かおうとした
もう行かなきゃ。ずいぶん時間が経っちゃったね。これ以上グズグズしてたら、地球にある指揮官の体が持たなくなっちゃう
こんなのどうってことないよ。ナナミは最強だもん、傷なんてナイナイ!
ふたりとも……どこかへ行っちゃうの?
まだ何もわからない幼いナナミは、「考える」ことを学んだようだった
幼いナナミは、ナナミや人間の指揮官と一緒に過ごす中で本当にたくさんの新しいものを見た。だからこそ……このふたりがいなくなるのが嫌だった
未来って……どのくらい先?
長い時間だけどあっという間で、あっという間だけど長い時間だよ。でも、必ずまた会えるよ!
じゃ、じゃあ、ナナミがふたりに会いたくなったら、どうすればいいの?
せっかく久しぶりに新しいお友達ができたのに……
星……?
星も話せるの?ふたりみたいに
……もちろん!
でもかなり遠い場所にあるから……声はほとんど聞こえないけどね!
だけど、どんなに遠くても心で感じれば……星の声を聞くことができるよ
……わかった!ナナミ、やってみる!
じゃあ……これをあげる!
彼女はつま先立ちをして、シンプルな花冠を人間の指揮官の頭にそっと載せた
一緒に植えたお花だよ。こっちのお花が[player name]!
これがナナミで、こっちのお花がお姉ちゃん……
仲良しのお友達は、ずっと一緒にいなきゃね!
足下の猫が伸びをして、小さなロボットの足に前脚を伸ばした
庭には暖かな陽光が降り注いでいる。ナナミは軒下に立ち、目を細めて幼い頃の自分を見つめていた
子供の頃……本当にこんなロボットがいただろうか?
記憶は曖昧で、子供の頃の記憶は何度も失われたような気がする。だけど……
この全ては、本当にあったことだと思いたい
ナナミには幸せな家庭があった。パパ、ママ、ミミ、そして[player name]という友達がいて――
本当によかった