Story Reader / 本編シナリオ / 32 遥かなる星の導き / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
<

32-17 スペシャルエントリー

>

<b>目の前は、分厚い透明な壁に覆われていた</b>

<b>透明な壁にはひびひとつ入らない</b>

どうして指揮官はこんなに長い間、ナナミのところに遊びに来てくれないんだろう、ってずっと思ってたの。指揮官はナナミのことを<phonetic=忘れてない>忘れちゃった</phonetic>と思ってた……

ナナミ……このまま地球に残りたい。<phonetic=ナナミ……>指揮官</phonetic>やみんなと一緒に、こうして暮らしたいの

ナナミ、<phonetic=ナナミ!>指揮官</phonetic>と仲良しだし!<phonetic=ナナミ!>指揮官</phonetic>は一度もナナミに怒ったりしたことがないし、だから、きっと大丈夫!

<b>透明な壁が少しずつ揺らぎ始める……</b>

ナナミは機械の同胞たちをこの災厄から救うつもりだし、ナナミは<phonetic=ナナミ>指揮官</phonetic>を救うことも、新たな特異点を探すことも諦めない

ナナミ

<phonetic=ナナミ>指揮官</phonetic>にきっと何かあったんだ。でもナナミはどうすれば<phonetic=ナナミ>指揮官</phonetic>を助けられるのかがわからない

<b>透明な壁にうっすらと亀裂が現れた……</b>

ナナミ

<phonetic=ナナミ>指揮官</phonetic>!待ってて!ナナミ、今行くよ!

拳をぐっと握り、硬く透明な壁に力強く打ちつけた

<b>透明な壁の亀裂が徐々に広がっていく……</b>

<phonetic=ナナミ!>指揮官</phonetic>……

<phonetic=ナナミ>人類</phonetic>はいつだって新しい奇跡を生み出すもの――<phonetic=ナナミ>指揮官</phonetic>もそう!

<phonetic=自分>ナナミ</phonetic>が必ず<phonetic=ナナミ>指揮官</phonetic>を見つけるから!

ナナミ

指揮官、待っててね。ナナミが必ず指揮官を見つけるから……

透明な壁の亀裂が、向こう側のナナミの呼びかけに応えるように、更に広がった……

「ビキッ」

ナナミ

……指揮官?また空耳だよね……

ナナミ

――指揮官っ!!!

時間の大河に忘れ去られた少女は、疲れ切った目を懸命に見開き、時空を越えて彼女に向かって伸ばされた両手をしっかりと掴んだ

もし、彼女がこれまでに何度も幻影に騙されていたとしても、彼女は何度だって迷うことなく指揮官のもとへと走り出す

幸運なことに――今回彼女が掴んだのは、偽りの虚像ではなかった

指揮官――指揮官!指揮官指揮官、ホンモノの指揮官だ~!

ナナミは興奮して飛び跳ねながら、背中に回した腕でギュッと抱き締めた。何度もの呼びかけに、溢れんばかりの感情が込められている

指揮官!今回のかくれんぼ、まさかの指揮官の勝ちぃ~!

ナナミの方が先に指揮官を見つけると思ってたんだけどぉ!どうやってナナミを見つけたの?ナナミが残した秘密兵器のお陰?

30年という時を超えても、目の前にいる灰色の髪の少女は相変わらず元気で、賑やかな小鳥がさえずるように、あれこれと質問を投げかけてくる

そんなにとーっても長い道のりだったんだ……すごく大変だったでしょ、指揮官

でも、もう大丈夫!ナナミが来た!

んもう、セルバンテスのおしゃべり!新機体のことは絶対に秘密にしてねって、言ったのに!

指揮官には、感動のスペシャルエントリーシーンを見せたかったのに……

ま、いっか!今こうして、指揮官はナナミの「感動のスペシャルエントリーシーン」を見られたもんね!

短い会話を交わし、ふたりはお互いの現在の状況を大まかに把握した

指揮官はこれからどうするつもり?

ナナミの傍らで彼女の長い物語を追体験してきたが、その肝心な部分をまだ掴めていなかった

多分、「アンカーポイント」が足りないからかな

前にナナミが現実世界に戻れたのは、おばあちゃんロボットを媒介とアンカーポイントにしてたからなんだ。でも、今は……

ゲシュタルトが空中庭園とともに去り、ナナミは新たなゲシュタルトとして十分なアルゴリズムを得ていたが、元の時間軸に繋ぎとめるアンカーポイントを失ってしまったのだ

えへへ、指揮官とここに閉じ込められるなら、それはそれでいいかな!

んー……でも、やっぱダメかも

ナナミは機械意識だから摩耗するだけで済むけど、指揮官は人間の意識だからね……

うん……やっぱり何とかしてここを抜け出す方法を考えなきゃ……でも、どうすればいいのかな?ナナミ、もう時間の破片はたくさん探したんだよ……

指揮官が……アンカーポイントに?

灰色の髪の少女は少し考え込んだあと、パッと顔を輝かせた

それ、アリだね!

指揮官は超超~~~強力な意識海を持ってるもんね!それに、指揮官にはたっっっくさんの絆に繋がれてるし

まさか……これが現れるはずの「特異点」?

頭の中でひらめきが爆発し、ナナミは急いで大きなスクリーンを開いた

ナナミが作ったの!ここで演算するためのツールだよ!

「食いしん坊」って名前なんだ~!シミュレーションするだけで、ものすごい量のナナミのアルゴリズムを食べちゃうから……

ナナミが前提条件を設定するね!今の指揮官の状態を、新しい「演算」の起点として……

時間線がみっしりと密に絡まり合い、ひと塊になっている。その中で「指揮官が異重合塔を出る」というのが唯一の変数だった

この変数と特異点を把握することで、ようやく次元の限界に触れられるかもしれない

条件設定完了、ロジック演算成立――

行こう、指揮官!

灰色の髪の少女がこちらに手を差し伸べた

しかし……この全ては「演算」なのか?それとも「真実」なのか?

運命の蜘蛛の糸が灰色の髪の少女と人間の指揮官を絡め取る。一体どんな世界に迷い込んでいるのか、もう誰にもわからなくなっていた