変異赤潮は退き、ルナは再び山頂に座り込んだ。しかし、目に見えて衰弱している
人間の指揮官が山頂に登った時に目にしたのは、そんな光景だった。エマは救助された巡回小隊の隊員たちを連れて拠点へ戻り、バネッサは山の麓で守備を固めている
舌先まで出かかった「大丈夫?」という言葉を、どうしても口にすることができなかった
この災厄の、生存者はいない
……あなたなの
黄昏の影で昼と夜の境界は曖昧だ。うつむいた彼女は微笑んだようでも、違うようでもあった。辺りを覆う冷え冷えとした雪の白い光のせいか、彼女の表情がよく見えない
また新たな赤潮の幻影なのね……今度はあの人の気配まで真似できるようになったなんて
彼女はそっと息を吐いた
目の前の弱りきった少女は顔を上げ、焦点の定まらない瞳でこちらの方向を見つめた
幻影でもいいわ……そこで、私の話を聞いて
もう、あまりにも長い……本当に長い時間がすぎたわ