Story Reader / 本編シナリオ / 32 遥かなる星の導き / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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32-2 知らない未来

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ノックの音が室内の静寂を破った

指揮官

拒絶を許さないその強い口調で誰なのかわかる――バネッサだ

この時間なら起きていると思った。入るぞ

木の扉が古びた悲しげな音を響かせて開いた。逆光の中、よく知っているのに少し見慣れない構造体が目の前に現れた

長い間水分を失って乾ききった声帯はかすれ、口を開こうにも声が出ない

きつく包帯を巻かれた体は硬直していてびくともしない。座った姿勢を維持するだけで精一杯だ

……

バネッサは辺りを見回した。簡素な室内に物はほとんどなく、先ほど指揮官を送り届けた人物が枕元に置いたと思しき、水の入ったコップがあるだけだ

水はすでにぬるくなっていたが、何もないよりはマシだ

バネッサは人間の指揮官の口元にコップを押し当てながら、どこか得体の知れない苛立ちを覚えていた

飲め

ルシアの機体の、事後処理について知らせに来た

目には見えない縄が再び心臓を締めつけた。忘れることを選んだ記憶が、脳をまたもや無理やり引き裂いてくる

硝煙と弾薬、深紅の霧が視界に広がり、あの見慣れた姿が近付いては遠ざかる……

ルシア

……指揮官……[player name]

ルシア

……ずっと傍に……いたい……

刃物で裂かれたような痛みが喉に走り、全身の力を振り絞っているのに、どうしてもその名前をもう一度口にすることができない

必死に力を振り絞ってようやく、呼び慣れたあの名前が口から出かかった

無理するな。体が限界を超えて、深刻な脱水症状を起こしている。回復には時間が必要なはずだ

ルシアの機体は、我々で拠点の休眠カプセルに安置した

エマとロサが何度も試したが、ルシアの機体のΩコアはどうしても修復できなかった

互いに軍籍の身だ、こんな言葉は必要ないかもしれないが……

バネッサはすっと顔を逸らした

気の毒だった

それから……

彼女が言葉を続けようとした時、朽ちた木製の扉が再び軋んだ音を立てた

……入れ

バネッサ指揮官、変異赤潮が拠点の周縁部に現れました。1個小隊が変異赤潮に呑まれてしまい、当面の人員不足は否めません……

行こう

彼女たちはこうした突発的な事態に慣れているようで、多くを語らず簡単に言葉を交わし、バネッサも急いで立ち去ろうとした

私が戻るまで君はここにいろ

扉がしっかり閉じられて足音が遠ざかると、部屋には再び死を思わせる静寂が戻ってきた

僅かな意識が悲嘆に暮れるばかりの脳からコントロールを取り戻しつつあったが、身体機能はいまだ深い悲しみに沈んだままだ。力を振り絞っても指くらいしか動かせない

人間の指揮官は窓の外に目をやった

窓の外には灰色の空が広がり、大雪が世界を覆い隠している

バネッサとエマは救援地点に駆けつけた。しばらくの戦闘の後、彼女たちの支援で変異赤潮は退き、生き残った小隊メンバーたちは互いに支え合いながら後始末に取りかかった

構造体に改造されてからかなり経つ今でも、バネッサは戦闘が好きではなかった

最悪な気分だ

バネッサは服の裾についた雪を払い、戦闘で負った傷にエマが包帯を巻くのに身を任せていた

変異赤潮は確かに厄介ですが、バネッサ指揮官が負傷するなんて珍しいですね

戦闘中、気が散っておられたようでしたが……グレイレイヴン指揮官のことですか?

ハッ……グレイレイヴン指揮官?後方の厄介事だけでも手一杯だというのに気にかけていると思うか?

前方の偵察から報告は?境界の巡回小隊は無事に戻ったか?近くの補給倉庫は機能状態はどうだ?後方の負傷者たちへの薬に不足はないのか?

バネッサ指揮官……

バネッサは身を起こし、冷たく笑った

異重合塔にパニシング、赤潮は変異を続けている。今や我々でさえ、北極連合航路なんぞに近い、針先ほどのこんな場所に縮こまるしかできない……

あの寝たきりの偉大な首席に同情するなら、まず自分たちを憐れむべきだ

それで、あの方のご様子は?

……

しばらくはそっとしておく方がいいだろう

ルシアは……もういないのだからな

彼女はしばらく黙り込んだ

グレイレイヴンが経験した戦いの偉大さを知りたいにしても、やつが回復してからだ

ええ、伝えておきます……

[player name]……本当にお前は……

バネッサさん……バネッサさん!

ひとりの難民が、少し離れた場所から慌てて駆け寄ってきた

どうした

拠点裏手の補給倉庫に、異合生物が……異合生物が現れました!

……巡回小隊のやつらは仕事をしてるのか?

大変です。あの倉庫には最後の医療物資が……

彼女たちは足を止めることなく、急いで再び拠点へ向かった

大雪はますます激しく降り続いていた

拠点外周部に到着すると、人影が忙しなく動き回っており、数名の負傷者が医療テントへと運ばれている

バネッサさん……!

その時、ひとりの難民が彼女たちを見つけ、名前を呼びながら駆け寄ってきた

用があるなら早く言え。今日はもう誰かに名前を呼ばれるのはうんざりだ

異合生物が倉庫を完全に破壊でもしたか?ちっ……だから拠点にふたりは人員を残しておくべきだと……

エマ、緊急対応策の準備を。被害にあった物資のリストをまとめ、それから……

いや、倉庫は無事なんだ!

だったら何を大騒ぎしている。シュエットが予定より早く戻ったのか?

あの指揮官だよ。角の小部屋にいた指揮官が、交代で休憩中だった巡回小隊を引き連れて、異合生物を引き離してくれたんだ!

これが、空中庭園の精鋭指揮官の実力というものか。全盛期の空中庭園は、どれほど凄かったやら……

地上で生まれ育ったその人間は、憧れの眼差しで空を見上げた

部屋から出たのか……?フン、さすがはグレイレイヴンの精鋭指揮官だな

彼女はそう言って難民の背後を見たが、件の人物の姿が見当たらない

……で、指揮官はどこだ?

さっきまでそこにいたんだが、はぐれたか?まさかまた倒れたんじゃ……あ、バネッサさん?

難民の言葉に返事もせず、バネッサはのしのしと拠点へ歩き出した

ここにいろ、と言っただろう!

木の扉が勢いよく壁に叩きつけられた。構造体の力は人間だった頃よりずっと強い。依然として弱々しい光が差し込む部屋は、すでに無人だった

……この部屋にいた者は?

バネッサさんが連れ帰ってきた方ですか?それが、本当にすごい人で……

どこへ行ったかと訊いている

え、えっと、拠点の中心の方へ向かったみたいです……ほら、あの大墓碑のあたり

拠点の中心には、巨大な石碑が立っていた

もともとこの石碑は黄金時代の都市の名残でしかなかった。長い間、風雨に晒されてこの地の中央にそびえ立っていたのだ

人々がここへ移り住み、長期的な滞在地に適しているとわかってから、誰かがその石に犠牲者の名前を刻んだ

アンソニー、コンスタン、セリク、シルカ、ダニエル……

ルース、エリー、バンビナータ、ヤンジー、アンジェ……

………………

かつて人間は死に対して臆病だった。死に関する言葉を避ければ、災厄がもたらす別れを回避できるとでも思っていたかのように

しかし「別れ」が日常となった今、もうそれを気にする人は誰もいない。「大墓碑」は拠点の中心を示す代名詞となっていた

……

構造体の吐く息がほのかに白い。視覚モジュールを軽く調整すると、彼女が決して見紛うことなき姿が大墓碑の前にあった。その体にも大墓碑にも、雪が降り積もっている

……なぜそんな無理をする?

まだ回復しているはずもないのに、あんなに危険なことをするとはな。君がファウンスで学んだのは無謀さだけか?

……[player name]?

彼女が何を話しかけても、墓碑の前の姿は微動だにしない

おい!

異変を感じたバネッサは素早く駆け寄り、肩を掴んで強引に振り向かせた。ここに来たことを責めようとした彼女が目にしたのは、虚ろで生気を失った瞳だった

君――

大雪はなおも降り続いている

異合生物はすでに巡回小隊が引き離した。未来に囚われた孤独な魂は、雪の中にそびえる墓碑を目にした

考えるよりも先に、無意識にフラフラと足がその方向へと向かった

よく知る名前、あるいは見知らぬ名前を指先でなぞる。1行ずつ刻まれた漆黒の名前は、過去の傷跡のように灰色の岩に深く刻み込まれている

墓碑は天辺が見えないほど高く、上から下までびっしりとそれぞれの記憶が刻まれていた

彼らはもう、いない

体を制御できず、急激に息が乱れる。脆くて鋭い蜘蛛の糸のような疲労が心臓をゆっくりと締め上げ、僅かに残った血を吸い取っていく

……グレイレイヴン指揮官……

遠い時空に隔てられているかのように、彼女の声が耳元にこもって反響した

……無理を……ファウンスで……無謀……

肩をつかまれて振り向くと、バネッサの瞳には疲れ果てて虚ろな人間の顔が映っていた。その顔は墓地から逃げ出してきた亡霊のように青白い

……君……

……指揮官、指揮官?どうしてこんなことに……

指揮官……何があったんですか?大丈夫ですか?

一体どういうことなんですか……すぐにスターオブライフに連絡します

指揮官……[player name]……

――しっかりしろ!

視界が定まり、もうひとつの世界は視界から消えていった

[player name]!目を覚ませ!

すぐに部屋に戻れ、今すぐだ。エマがじきに戻る。君の体は酷い状態なんだ……

バネッサは眉根を寄せながら、指揮官の防護服に表示された侵蝕データを確認した

部屋を施錠すべきだった……グレイレイヴン指揮官?[player name]!

いくら呼びかけても目の前の人間の目は虚ろなままだ。彼女の声がまったく届いていないことに気付いたバネッサは愕然とした

くそっ……

指の関節がぐっと強張る。バネッサは奥歯を強く噛みしめ、殴りつけたい衝動をこらえた

一体何が望みだ!?ここで凍え死にたいのか!?

ルシアが貴様を連れてきたのは、この墓碑の下に埋めるためだとでも思うのか!?

何かの言葉が引き金になったのか、人間は数回むせ込んだあと、僅かに意識を取り戻したように見えた

ルシアはもういない!貴様も一緒に休眠カプセルに入りたいのか!?

ルシアはもう死んだ

誰が……ルシアを殺した?

混乱した記憶が脳内を駆け巡り、心臓が肋骨や胸を突き破らんばかりに激しく鼓動する

色とりどりの断片が網膜を激しく駆け巡り、記憶の中のルシアの唇が、何か言いたげに開いた……

ゴホン……[player name]隊長

でも、それは同時に、新しい希望も意味します

[player name]と出会えて、本当に嬉しいです

……

風はあの日と同じように冷たいが、今、ルシアの機体は休眠カプセルの中で横たわっている

目の前の人間の瞳孔が再び焦点を失っていくのを見て、バネッサは拳を力いっぱい握りしめた

「ガァン!」――

彼女は後ろにある墓碑に拳を叩きつけた。生臭い循環液の臭いが冷たい空気と混じり、ひと際強く鼻を突いた

両足から力が抜け、墓碑にもたれてずるずると地面に座り込んだ時、墓碑に強く頭をぶつけた

痛みが全ての幻覚を掻き消す。空虚な視界に映るのは、怒りが収まったらしき表情のバネッサだった

君を傷つけるつもりはない。だが、これ以上構ってはいられない。私は拠点全体に対する責任がある

もし、君が頑としてこの状態でいるなら……エマ

……まあ、おふたりとも……どうしたんですか!?

駆けつけたエマは、酷く打ちひしがれた様子のふたりを見て驚いた

こいつは駐屯していた巡回小隊を適切に指揮し、拠点の倉庫を守った。評価し、相応の物資報酬を支給してやってくれ

……それは構いませんが……

言う通りにしろ。全てが終わったら、こいつを後方支援に送り届け、向こうで面倒を見るよう手配を頼む

……はい

訝しみながらも、エマは素直にバネッサの指示に従った

君のことは……

……気持ちは理解できる。だが、私はもう30年もこうして地上で生きてきた

深紅の循環液がゆっくりと墓碑に刻まれたバンビナータの名前を覆っていく

……好きなだけそうしていればいい

……立てないというのなら、そのまま座っていろ

普通の人間として、しっかり生きればいい。きっとルシアも……

バネッサは口をつぐみ、それ以上何も言わず、背を向けて去っていった

足音が次第に遠ざかり、体は舞い上がる地面の雪に埋もれかけている。冷たさが全ての感覚を奪っていく

ルシアはもう死んだ

頭の中を針で刺すような痛みが何度も襲うのに、マインドビーコンの向こうからあの馴染み深い信号が返ってくることはない

溺れる者が藁をも掴むように、喉が切り裂かれるように痛んでたとえ血まみれになろうとも、声を出さずにはいられなかった

彼女は本当に……こんな結末を望んでいたのか?

いや、そんなはずはない……

異重合塔での苦しみはもう終わりました……私は信じています、苦しみの後には必ず幸せが訪れる。だからどうか、元気でいてください

ルシア

だから、どうしても嫌なのです……こんな形で別れを告げることが……

どうすれば……こうしてあなたをひとり残してしまう自分を……許せるのでしょうか

墓碑の下の方に、僅かに空白が残っている

入り乱れた記憶の糸が自分の脳に絡みつくようだ。何か……何かを残さなければ……

これは……ルシアとグレイレイヴンの墓銘だ

我々は……この世界に存在していた

我々は……地球を取り戻すために戦った

我々は……

我々はグレイレイヴンだ

破れた戦術グローブから血が滲み、指がひきつる。頭の中は空っぽで、ただこれを成し遂げるという執念だけが残っている

この災厄の、生存者はいない

……そして、終わる

グレイレイヴン……

この災厄の、生存者はいない

……そして、終わる

ルシア……

衰弱した体を支えきれず、大墓碑にのろのろと寄りかかった

いつの間にか、大雪はやんでいた

夕日が深い霧のような雲の層を透かし、微かな残光が降り注ぐ。夜の帳がゆっくりと降り始め、空を覆っていく

塔の中での戦闘が走馬灯のように頭の中を駆け巡るが、最後の記憶は彼女の笑顔だった

私は、この代償を払ったことを決して後悔しません。あなたがいない未来なんて意味がない。それに、私たちが望んだ平和な未来でなければ、なおさら意味はありません

だから、お願いです……私が去ることを後悔しないでください。私たちが間違った選択をした訳じゃないんです

指揮官、全ての失敗には意味があります。私たちはすでに奇跡の種を手に入れました。この先、この世界の……そして私たち自身の奇跡を必ず見つけ出せます

感覚を失った指先が、力なく墓碑から滑り落ちた。刻みつけた文字は深紅の血にうっすらと覆われている。最後のひと文字を刻み終えた瞬間、脳は思考を止めた

血痕は笑みのような弧を描き、それは、あの時手の甲に書いた笑顔と同じ形をしていた

誰かが何かを叫んでいる。くぐもったその声は次第に意識から遠ざかり、目に映るのは夕焼けに染まる空だけだった

次に目覚めた時……自分は本当にひとりだけになる

ルシア……

君と約束した

後悔はしない。そして、諦めないと

……つまり、以前敷設した緩衝地帯が、今は異合生物の手に落ちたということだな?

は、はい……なにせ突然で、私たちの見張りも……

それはもういい、人類一個人の戦闘力が異合生物に対抗できるなら、今頃こんな状況にはなっていない。そもそも、緩衝地帯は時間稼ぎのために設けたのだからな

それより、軍事物資や人員は全て回収できたのか?

…………

胸が詰まるような沈黙の中、バネッサの口調が更に冷たく低くなった

中大型の装備はさておき、血清類の携帯用物資もか……?

す……すみません!!

冷や汗をかき、途方にくれる部下を前に、バネッサは深く息を吸い込んだ

砂盤のポイントフラッグを整えろ、現在の戦況を確認する

バニカが作業を進める内、簡素な砂盤の上に人類の勢力範囲と異合生物の侵攻状況が鮮明に浮かび上がった。戦況は楽観視できるものではない

……緩衝地帯を奪還するなら、先週からの側面攻撃計画は一旦中止です。現状、待機中の兵力での奪還戦は可能ですが、不測の事態が起きた時、対応できる予備戦力は皆無です

ですが、緩衝地帯を完全に放棄してしまうと、両サイドの前衛区域にも影響が出てしまいます

食糧生産エリアの部隊を除き、偵察と巡回小隊をまとめてくれ。後方支援を失うわけにはいかない

この人数では……

もしくは緩衝地帯を完全に放棄、明日は両翼の前衛区域を捨て、明後日には私と一緒に逃亡する計画を選ぶかだ

……

では、それで――

閉まりきっていない扉が寒風に吹かれ、少し開いた

チッ、鍵まで壊れているのか?明日修理しておくことも計画に入れておけ

彼女が不機嫌にドアノブを引こうとしたその時、戦術グローブをはめた冷たい手が扉をつかんだ

……ここは一般人は立ち入り禁止だ。ましてや、戦況を知る資格は今の君にない。死にたいのか?

……君が?

意識が回復するにつれ、異重合塔や異重合コアといった多くの情報が頭の中に押し寄せてきた

……

中で話してくれ

バネッサは半歩下がり、司令部の扉を開けた

全員が再び席に着くのを待ち、頭の中の情報を整理し、順を追ってできるだけ簡潔に説明した

異重合塔が……タイムマシンだと……

君がどういう人間か知らなかったら、ウェブ投稿小説家がひやかしに来たと思うところだ

その中には、あの異重合コアのことも含まれている

あの異重合コアは、本当に新たな希望をもたらすのだろうか?本当に、人類がこの絶望的な戦いに勝つための助けとなるのだろうか?

……今はロサがいない。ここは危険だし、ロサも構造体ではあるが戦闘向きじゃない。彼女のラボは離れた場所に設置してある

ロサがここに戻るまで、その問題に答えを出すことはできない

私も異重合塔の中のことについては直接解明したいところだが、今は異重合コアの問題のことは一旦後回しにするしかないな

バネッサは砂盤の地形図をトントンと軽く叩いた

君が部隊を率いて異合生物の群れを突破し、やつらを混乱させたとしても、それだけでは不十分だ

無理に奪還したところで、維持ができない

バネッサは肯定も否定もせず軽く頷き、砂盤上を指し示した

作戦計画を細かく練っているうちに、明らかに異常な場所が目に留まった

気付いたか。頭は大分回復したようだな

ここは確かに戦場の要所だ。だが、守備は配置できないし、その必要もない。すでにそこを守る者がいるからだ

ルナです

彼女は拠点とほとんど交流もせず、戦闘指示にも従わない。物資の支援も拒否している

他に昇格者がいる痕跡は見当たりません。私たちもしばらく観測しましたが、そこにはルナしかいませんでした

攻撃の意思は見られませんし、人類をこの土地から追い出そうとする様子もありません。まるで……

ただ、その場所を守りたいだけのように……

……ルナと話をした方がいいかもしれない

エマさん……エマさん!巡回小隊が大変です!

……今度は何だ!?

落ち着いて、ゆっくり話してください

ゲホッ……北西方向の変異赤潮が突然満ち始めました。私たちが赤潮の上昇を検知できなかったせいで、戻ろうとしていた巡回小隊が赤潮に囲まれてしまったんです!

……どうやら、今回も出向く必要がありそうだ

[player name]の体の状態は……

問題ありません、通常通り任務を遂行できます

なら出発だ。赤潮に囚われた不運なやつらを見舞うとするか

彼女はいつもの皮肉ったような笑顔を見せた