眩い光の中で我に返ったルシアは、自分がコンステリアの地下トンネルに戻っていることに気付いた
少し離れた場所では、小柄な人形が自分とほぼ変わらない高さの装置を一心不乱に操作している
何をしているのですか?
……
彼女は無言で部屋の端にあるフィールド障壁を指差した。その外側では多数の異合生物がうろついている
フィールド障壁はこの装置で作り出していたのですか?フォン·ネガットが作ったものではなく?
人形は首を振り、そして頷いた
どういうことですか?「それだけじゃない」と?
彼女は頷き、黙ったまま俯いた
……予備の手段ということですか?
彼女はまたコクンと頷いた
会話はできませんか?手間がかりすぎるので
ルシアの眉間には隠しきれない焦りが浮かんでいる
…………
……BPL-01、あなたの指揮官以外……私が話すことは何もないよ
αと同じ機種番号を聞き、ルシアは鼻を鳴らすようにして冷たく笑った
それで結構です、では教えてもらえますか――
ルシアは光紋刀を握り、異合生物の脆弱そうな体ににじりよった
あの時、一体何が起こったのですか?なぜ指揮官はあなたを連れて反転異重合塔に戻り、私にフォン·ネガットに協力しろと命令したのです?
彼女にはできるだけ多くの情報を集め、起こりうるどんな小さな間違いも排除する必要があった
…………
人形は少しだけ顔を上げ、生気のない目で前を見た
フォン·ネガットがその話をした時、あなたを見たでしょう。さあ、教えなさい
…………
コレドールはあの人を異重合塔から連れ出した
その後のことは、コンステリアの状況と少し似てる……反転異重合塔が再び降臨したあと、世界にたくさんの裂け目が現れた
赤潮が地下からコンステリアに流れ込んだように、あの裂け目が他の場所にも赤潮を引き込んだの
なんとか……あの指揮官を反転異重合塔に連れ戻そうとしたけど、そこで見たのは果てしない死のループだった
…………
彼女はどう言葉を続ければいいのかわからなかった
しばしの沈黙の後、人形は胸元からパニシングで構成された組織をえぐり取り、離れた場所からルシアに投げて寄越した
自分で見ろ、と?
……記録の一部が見えると思う
…………
ルシアは手の中の異合生物の組織を見ながら黙り込んでいたが、ようやく心を決め、それを手の中で握り潰した
遡源装置が使用者の命令に従って起動し、組織に保存されていた記憶が次々と目の前に映し出された
…………
記憶データはカイウスの視点で、その中でルシアは尾行しているコレドールを見た
指揮官、もうすぐ出口です
そうですね。戻ったら……指揮官には数日、しっかり休んでもらいますから
あの時のルシアは、異合生物の群れに潜むコレドールに気付いていなかった
指揮官が回復したら……
そして、コレドールがいつ行動を起こしたのかにも、気付いていなかった
指揮官?
不注意?いや、そんなはずはない
彼女が自分の領域を利用し、あまりに周到な準備をしていたからか?
どちらにせよ……ルシアが振り返った時には、背後にはもう誰もいなかった
指揮官!!
引き返して探しているルシアの視点とは違い、カイウスが見たのは赤い蝶が残した痕跡だった
……!
彼女は気付いた。コレドールは、フォン·ネガットのカイウスを補完する計画を実現させまいと、遡れない離別によって、あの指揮官を徹底的に抹殺しようとしている
カイウスはフォン·ネガットの計画に全て賛成はできないが、少なくともあの指揮官がここで死ぬことは望んでいない
そして、カイウスは急いで後を追い、足を踏み入れた――
酷く混乱した、果てしない死のループへと