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人類の先遣隊は<color=#ff4e4eff>「弦計画」</color>のシミュレーションテストを終了し、正式に「鍵」を持ち、異重合塔に進入した
先遣隊が所持する「鍵」は、接続端と受信端に分かれている
接続端は犠牲になることが予定されていた7番先遣隊員のニモが、受信端はドミニクが所持している
人類が所持する「鍵」に脆弱性が検出された
これは好機だ
コアは本来、異重合塔の一部であり、それを抜き取ることで「扉」が開く
彼らが持つ問題のある「鍵」は、ちょうどその扉の範囲を広げるのに役立つ
これから「鍵」の脆弱性を利用して「扉」を開き、ドミニクと先遣隊全員を「扉」の向こう側、霧域に追いやる
時間が存在しない霧域に飲み込まれるのは、時間を弄ぶ者たちに最もふさわしい結末だろう
人類……いや、ドミニクさえ消してしまえば、人類になす術はない。他の者たちは「殉葬」であるにすぎない
その偽りの希望を手にした時に、真の絶望を与えてやろう
>>>>>「鍵」の受信端にハッキング中
>>牽引モジュールのプリロード完了
>>カウントダウン…3…
>>カウントダウン…2…
>>カウントダウン…1…
「扉」が開き、ドミニクを霧域へ追放することに成功。彼は二度と戻れない
………………
エラー発生▂▄▁▃▆▃▆▁▂▄▃▆▁▂
私は▅▁▇▅▂▄▁▃▆▃▆必ず▁▂▄▁▅▇▅▃▆▅▄▁▅▁
▁▇▅▂▄▁▃▆▃▆▁▂▁▇▅▂▄▁▃▆▃▆▁▂▄▃▆▁▂▄▁▅▇▃▆▅▄▁
記録更新:異重合塔コアが融解
人類先遣隊は全員、霧域に落ちた
コレドールは久しぶりに異重合塔コアに再び近付いた
正面では、フォン·ネガットが彼女を見つめている
またお会いしましたね、フォン·ネガットさん
少女はスカートを持ち上げて軽くお辞儀をしたが、代行者はそれには答えず、手袋に寄っていた皺を整えただけだった
澄んだ青い光がフォン·ネガットの背後で静かに輝いている。異重合塔コアから放たれる光に、コレドールは抑えきれない不快感を覚えていた
人間の礼儀に則れば、まずあなたに十分な敬意を示すべきでしょうが、残念ながら……
あなたの策略のせいで、今は少し急がなければならないのです
次の瞬間、鎌の刃が会話の余韻を切り裂きながら、異重合塔コアに向かって飛んだ。強烈な赤い光が一直線に走り、真っ青に輝く光にぶつかった
衝突の轟音が戦いの幕開けを告げる。フォン·ネガットは微動だにせず、手首を捻ってフィールド障壁の位置を調整し、再びコレドールの攻撃を受け止めた
鋭い刃と強固な盾が火花を散らし、その間で輝く光が深い金と鮮やかな赤の瞳を明るく照らし出した
あなたが一体何者なのか、そろそろ教えてくれてもいい頃では?なぜ私の異重合塔にそれほど詳しいのですか?
フォン·ネガットは依然として黙っている
異重合塔コアは、行動を支えるパニシングを吸収し続けているため、このような力比べは両者の力を無駄に消耗するだけだ
ましてや目の前の男性に微塵も弱った様子はない。彼の周囲に漂うパニシング濃度がいつもよりやや低いだけだ
そのことに気付いたコレドールは力を抜いて後退し、鎌を地面で支えながら攻撃態勢を一旦緩めた
少女が体勢を整えようとしたその直前、代行者が僅かに首を横に振った
この小さな動作からコレドールは無数の攻撃の可能性を読み取ったが、口を開くよりも先に、彼女の体が本能的に危機を感じ取って震え始めた
?!
彼女は無意識に俯き、胸を貫く刀身に自分の大きく見開かれた目が映り込んでいるのを見た
鋭い刃が彼女の背中から真っ直ぐにコレドールの胸を貫いていた
コレドールが反応する間もなく、背後の暗殺者は刀をひねり、貫いた刃先を水平方向に激しく引き裂いた
鋭利な刃が彼女の体を横に切り裂く瞬間、コレドールは素手で刀身を掴んだ。傷口から溢れ出す赤潮が、彼女の青白い指をゆっくりと濡らしていく
――ガキン!
暗殺者の凶器が折れ、断面には少女の稀に見る真剣な表情が写っている
コレドールは、自分の力がいつもより速く失われていることに気付いた
真剣な表情はすぐに普段の顔に戻った。彼女は微笑みながら振り返り、血にまみれた指先で折れた刀身をクルクルともてあそんだ
やっと姿を現してくれたのですね、カイウス
コレドールはカイウスにハグをするかのように両手を広げた
しかし、カイウスは手に残った折れた刀を投げ捨て、小柄さを利用してコレドールの妨害をすり抜けると、素早くフィールド障壁の後ろに隠れた
その時、コレドールはカイウスの体が以前よりも大きくなっていることに気付いた
前に会った時はひとりで歩くこともままならなかったのに、今じゃ人形から人の形態になろうとしているなんて
これは看過できない——自分の身に起きている異常、赤潮が次第に制御できなくなっていることと、カイウスは関係があるのだろうか?
そう考えながらコレドールが大鎌を消すと、鎌を形成していた赤潮が彼女の足下を漂った。数体の異合生物がその赤潮の波に洗われ、新たな体となって歩き出す
ううん、私はずっと前からこの姿だった
……!
少女はすぐさま腕に抱いた新たなハープを奏で始めた
異重合塔が元の主人の命令に従い、大量の赤潮を溢れさせる。無数の赤い蝶と異合生物が彼女の呼びかけに従って、再び青色のコアを取り囲んだ
少女の目は、まるで骨に食い込む悪性腫瘍のように、カイウスにしかと釘付けになっていた
私の記憶を消せるのですか?
ううん……あなたは「消化」が難しいものを大量に吞み込んでる。記憶の混乱はその副作用みたいなもの
……あの指揮官ですか?
これ以上、ぐずぐずしていられなかった
異合生物が再び攻撃を開始し、その中には致命的な一撃も混じっていた
どれほどフィールド障壁が堅固であろうと、異重合塔内にいる、<phonetic=0号代行者>コレドール</phonetic>の全力の一撃には耐えられない
カイウスは急いでフォン·ネガットの背後に滑り込み、彼の体を予備の盾にした
……!
代行者の手が張り巡らす堅固な盾が、強烈な攻撃を阻止した
衝突した赤い余光が消えぬ間にカイウスは宙に飛び上がり、指先を正確にコレドールの胸元に押し当てた。コレドールはその場に釘付けにされ、一歩も動けない
——それは<phonetic=彼女の意識>果実</phonetic>が最も深く侵蝕している場所だ
……何を!
カイウスの無機質な瞳に、珍しく怒りと羞恥を露わにしたコレドールの表情が映り込んでいた
コレドールの体は意志に反して次の動作を拒み、彼女の目はカイウスの動作をじっと見つめるのみだ。カイウスはすでにもう片方の腕を高々と振り上げている
狙いはただひとつ、コレドールの頭部だ
十分です、コレドールを放しなさい!
その言葉に、カイウスは動きをピタリと止めた
……ふっ……
――こんなことは初めてではない。前回もフォン·ネガットは突然攻撃を止めたのだ
前回は準備が整っていなかったからでしたが、今回もそうですか?
なら――
体が動かなくとも、彼女は0号代行者として命令し、自由に動ける異合生物に伝えられる
――殺しなさい!
少女は憎むべき青い光の前に立ち、彼女の創造物たちに耳をつんざくような声で命令を下した
カイウス
代行者はフィールド障壁で作った退路用トンネルを示したが、彼の揺るぎない冷静さの中には、カイウスの突然の行動による僅かな綻びが生じていた
――つまり、今がその時だ
コレドールは飛び交う赤い蝶の中に座り、蝶たちに引かれながら舞い上がると、異合生物の猛攻を防ぐフォン·ネガットを飛び越え、巨大な青いコアへ向かって突き進んだ
騙されましたね、私の目的はこちらです
……!
コアへ向かって跳躍するその姿を見て、カイウスの全ての理性が吹き飛んだ
カイウスは迫りくる怪物たちを跳ね除けてひらりと飛び上がると、無数の頭の上を駆け抜け、コレドールへ向かって一直線に走った
青いコアが徐々に近付くふたりを焼き尽くそうとしている。蝶に取り囲まれ守られたコレドールとは違い、カイウスの体は少しずつ溶け始めていた
それでもカイウスは引き下がらず、むしろ自らの体を盾に、コレドールがコアに触れるのを全力で阻止しようした
それも悪くないでしょう
眩い青の光の中で、少女は目を細めてカラカラと高笑いしたが、再び開いたその瞳には笑みなど微塵もない
やっと捕まえました、カイウス……!
コレドールは両手を広げてカイウスを強く抱きしめ、温かな抱擁を殺意へと変えた
まるで生き別れだった家族を抱きしめるように、少女は力を込めてその抱擁で締めつけた。頭を人形の首元にうずめ、本来「温もり」と呼ばれる空間を押し潰した
あなたを味わわせてください
ニンマリと笑う彼女の歯の間から、赤潮が作り出す赤い色彩が見えた
そして少女は人形の首筋に噛みつき、咀嚼し、長い間求めていた欲望を味わい、飲み込んだ
先ほど貫かれた胸は、貫いた犯人の胸にぴたりと貼りつき、コレドールは全身全霊でカイウスから自分の「制御権」を取り返そうとしていた
大量の情報の断片が、カイウスの「血肉」とともにコレドールの脳内に流れ込んだ
もともと人形だった「生前」の記憶
彼女が「今」経験している物語
そしてこれらの断片の奥底で、一瞬、フォン·ネガットとカイウスが言葉を交わす映像がよぎった。ある異様な既視感がコレドールの感覚の隅々まで広がっていく
見覚えがありながらも、どこか見知らぬ顔が目の前に浮かび、彼女は自分が、あるいは0号代行者が震えるように問いかける声を聞いた
……ドミニク……?
これが最後の一歩となる
人類のリーダーは何層にも重なるフィールド障壁に包まれながら、手の中のある装置を7番先遣隊員に差し出した
これで本当に大丈夫なんですか?異重合体結晶で作った「鍵」で、異重合塔コアを融解できるのでしょうか?
もし何も得られず、隊員をひとり犠牲にするだけになったら……
そんなに悲観的になるなよ。シミュレーションテストは成功しているんだ
……ニモ……
「ニモ」と呼ばれた7番先遣隊員は、仲間の肩を軽く叩き、最後の励ましを示した
でもドミニクが言うように、シミュレーションテストで完全に保証されるわけじゃないわ
どうせこれしか方法がないんだ。成功するかどうかはさておき、試さなければ
成功しようがしまいが、あなたは……
ニモはこれ以上話を続けたくなさそうに手を振った
じゃあ行くよ
青年はとっくに死んでしまった心を抱え、足早にコアの前へと歩み寄った
ドミニクから行動開始の信号が届くやいなや、彼はリンクされた「鍵」を差し込んだ
皆の予想通り、一瞬で赤い光が空間を呑み込み、異重合塔のコアは次第に融解していった
そして、果てしなく続く白色が視界を覆い尽くした……
…………
予想外の事態が発生した。「白色」は消えず、そしてニモひとりだけを飲み込むでもなく、異重合塔全体を覆い尽くしたのだ
異重合塔コアが融解した刹那、先遣隊はひとり残らず霧域に落ちた
犠牲になることを覚悟していた青年も「霧域」に閉じ込められ、果てしない牢獄の中で本来与えられるはずだった解放を探し続けていた
0号代行者ですらその中へ落ちることは避けられなかったのだ、彼女に関する記憶がその瞬間に消失したのも不思議ではない
コレドールはカイウスの血肉を貪り続け、更に多くの記憶と、カイウスを完全に行動不能にすることを渇望していた
異合生物の猛攻から抜け出したフォン·ネガットも、その争いに踏み込んだ。その代行者の姿が、続いて浮かび上がる映像にぴったりと重なった
コア……鍵は異重合塔のコアを回収した……
彼は手の中の奇妙な立方体をしっかりと握りしめた。それは0号代行者の最初の形態であり、異重合塔コアが融解して凝縮された姿でもあった
その立方体は果実の中の種のように、いつでも「異重合塔」に成長する準備が整っている、そう言いたげでもあった
ニモにははっきりわかっていた——もしこの「種」を解析し活用できれば……人類は広大な星々の海へ、そして「扉」へも更に近付けるはずだ
それこそが、ドミニクの本来の計画だった
これが唯一の希望だ……死ぬ前に、せめてこれを送り返さなければ
カイウス、「果実」のリンクが無駄になってしまう、意識を保つのです
青いコアに溶けかけていた人形は、その言葉でハッと我に返り、必死にもがいてコレドールの肩を掴んだ
5秒、彼女を抑えてください
……戻ってきた!俺たち、霧域から出られたんだ!!
待って……ドミニク……ドミニクは!?
ニモ!ドミニクはどうした!?
…………
説明の言葉も出ず、青年は疲れ果てて倒れ込んだ
おいっ!
……少し休ませてあげましょう。私たちをあそこから連れ戻してくれたのは、彼と彼が持ってる「鍵」のお陰よ
4……
フィールド障壁がカイウスをしっかりと包み込み、異重合塔のコアによる侵蝕はだんだん緩やかになった
人形は無言のまま、掴めるもの全てをその手に握り締めた。体の輪郭が光の中で徐々におぼろげになっていく
出発しよう、上手くいくといいな
次の記憶の断片が視野に広がった時、先遣隊員たちはすでに機体を新たにしており、その技術力はコレドールが見た「リー」にも劣らないものだった
春の遠足じゃないんだ、そんなに浮かれてどうする?
浮かれてなんかないさ。でも、これが最後の希望なんだ。「扉」をくぐることさえできれば、全てを取り返せる余地がある
……「扉」……
最後の希望か、ハハッ、前回もそう言ってたな
俺たちは「鍵」を作ってコアを回収し、新たに人を探してこれを研究してきた……なのに、ドミニクがいなくなっちまった
遠回りをしただけだ……「鍵」を消耗して異重合塔のルールに干渉できても、結局何も成し遂げられない。挙句、お前みたいな子供にまで「扉」を通過する手段を探させてる
…………
ニモ、どうしたの?
……何でもない、疲れているだけだ
…………
……私も疲れてるわ、ニモ
でも、この世界には、もうほとんど生存者はいないのよ
この模造品の「鍵」が最後の希望よ。私たちよりもこの技術をよく理解しているあなたは、なおさら
だから今回は、私たちが前を行くわ
私たちは必ず「扉」を通ってみせる
…………
……ああ
3……
主導権を取り戻したカイウスは、再びコレドールの体を貫いた
しかし、少女はこの攻撃に怯むことなく、人形越しにどこまでもふざけているような目でその代行者を見据えていた
<b>私の遺品を整理しに来てくれてありがとう。赤い箱の中にキャンディがひとつ入ってるわ</b>
<b>これで少しでもあなたの苦しみが和らぐといいのだけど</b>
<b>あなたはここで少し休んでもいい。でも私たちはまだ足を止めるわけにはいかない</b>
<b>ニモ</b>
<b>ドミニクを探して</b>
<b>私たちの英雄を……</b>
<b>最後の希望を探して</b>
……
青年は拳を握りしめて高く振り上げたが、その手は降り下ろされる途中、全ての力を失ったようにだらりと垂れ下がった
この世界には、もうすぐ人は存在しなくなる……なぜそれで、何度も何度も死を選ばなければならないんだ?
なぜそれでも、何度も何度も……もはや虚無になり果てた希望を探さなければならないんだ?
2……
異重合塔のコアは震え、更に眩しい光を放ち始めた
青年は目を閉じ、無数の絶望的な状況から目を逸らした
そして再びゆっくりと目を開け、この長い旅路の終着点を見据えた
彼の視界の中心に、歪んだ文字が刻まれている
見覚えのあるその筆跡は、4番先遣隊員のものだった
<b>「私も皆と同じく、異重合塔のルールを書き換え、塔の一部となった……」</b>
やり遂げたのか……
そうだ。彼らは仲間たちの犠牲によって、渡ることのできなかった橋を渡り、無数の屍を糧にして、越えられなかった「扉」を越えてきた。次は……
1……
<b>「もうすぐ私たちだけの秘密のトンネルができる……」</b>
<b>「その時が来たら、私たちの残した全てを持って、ドミニクがいる時代へ向かって」</b>
…………
孤独な青年は、心の支えを失ったような苦しみで膝から崩れ落ち、その文字の前でうずくまった
彼の心の動揺で体はよじれ、すでに疲れ果てていた意識は痙攣し、激しく震えた
喉から漏れる音は初めは赤ん坊の泣き声のようだったが、崩壊した感情が堰を切って溢れ出し、ヒステリックな叫びへと変わっていく
慰める者も、耳を傾ける者もいない。無数の無言の幽霊たちだけが彼を見つめていた
泣き叫べばいい、声も涙も出なくなるまで
泣きやめるのは、泣く者だけの特権だ
飛び散った血飛沫の端で、コレドールは遺書の最後の一文を見た
<b>「そうだ、この異重合塔から伸びるトンネルは『夢渡る橋』と名付けたいの……素敵な名前でしょう?」</b>
――そして、赤い光が全てを呑み込んだ