Story Reader / 本編シナリオ / 31 メタモルフォーゼ / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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31-11 記録:英雄

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待て!あのスタッフたちとは一緒にいない方がいい!

皆が離れようとした時、反対側の階段から突然ふたりの傭兵が駆け下りてきて、行く手を遮った

スタッフがどうしたのですか?

どうもこうもない、見てわからないのか?あの蝶や怪物は、スタッフには手を出さず、俺たちだけを狙ってるんだ!

この言葉を聞いた人々は足を止め、スタッフたちから少し距離を取った

あんたたちの仕業なんじゃないの?

とぼけるな!お前たちの中に、絵筆を持ってる女がいるだろう、そいつに訊いてみろ!

その女に手を出した連中は、皆そいつの側にいる高性能ロボットにやられた。怪我は大したことないのに少し目を離した隙に具合が悪くなって、3日も持たずに死んじまった

まさか。あのすごく優しそうなロボットだろ?俺には「この怪物たちを連れてきた真の元凶を探している」と言っていた。あんたには話していないのか?

いいえ。彼女に訊いてみましょう

……何を訊きたいの?

ユウコは相変わらず疲れた様子で、まだ避難していない人々の後ろに立っていた

面と向かっても、彼女の目はずっと暗がりから現れるかもしれない赤い蝶を警戒してきょろきょろしている

…………

……確かに、あなたたちふたりが元凶だとか、そんな話をしてた

えっ?いつのこと……?

ここで俺たちに何があったか、あんたらにわかるか!?真っ先に自分は無実だと言い張るのか!?

青年は人間の指揮官に向かって血に染まった拳を振り下ろした。しかし、すぐさま彼の体はねじ曲げられた姿勢で地面にがっちりと押さえつけられた

もちろん、あなたたちに何があったかわかっています!だからこそ、指揮官は自分の体を顧みず、急いで助けに来たんです

あの蝶に「寄生」された異合生物をあなたたちの仲間だとでも思っているのですか?あれは、コレドールがあなたたちを怖がらせるためにやっているんです

今のお前も、同じように怖がらせてるじゃないか!?

それはあなたが先に攻撃を仕掛けたからでしょう。もし、私たちが本当にそちらを傷つけたり、恐怖で支配するつもりなら……

押さえつけているルシアの手に更に力がこもり、青年は短い悲鳴を上げた

指揮官が手を下すまでもありません。私で十分です

このッ……!

……ムギを放して……

彼を放して……あなたたちの話を聞くわ

反転異重合塔最深層

カイウスは俯いたままコアから少し離れた場所に立って、フォン·ネガットが彼女の体の爛れた部分に、手の上の小さな異重合キューブを組み込んでいくのに身を任せていた

これらは一時しのぎの修復にすぎませんが、あなたがコアに近付けるよう、防御手段をいくつか分けておきます

とにかく、今の状態でコレドールと再び衝突することは絶対に避けておくように

避けられるとでも?「果実」は相互リンクなのに。彼女だって私を牽制できる、私が反転異重合塔を離れるだけで……

では、離れなければいい

コレドールはすぐにここへ来るよ。彼女には時間がない。動ける内にコアを奪おうとするはず

自分を守ることを優先してください

…………

それで?あなたは彼女を殺すの?

いいえ。あなたはまだ準備が整っていません。0号代行者の権限を受け入れることもできず、コレドールの代わりも務まらない

……私の意識が足りないから……

…………

彼は手を戻すと、感情がうかがいしれない瞳で、目の前にあるコアを見つめた

なぜ、私がカイウスの意識が不安定というリスクを冒してまで、見捨てられた人々やクローンを使って「鍵」を作ろうとしたのか、わかりますか?

…………

空中庭園に、これらの人々の居場所がないからです

無数の時間の分岐点を修正する中で、<color=#ff4e4eff>あなた自身</color>を使ったことも……しかし両者とも手を引かず、その時あなたの最優先目的が「未来を探す」から「家に帰る」に変わってしまった

もちろん私や惑砂を恨んでも結構ですよ……あるいは、反転異重合塔に入った時のように――

そんなことはしないよ

それは残りのチャンスを無駄にするだけだもの。あなたを殺すとしても、この全てが終わってからにする

…………

ただ……

カイウスは両手を強く握りしめた。目には悔しさが溢れている

……どうして、誰かを犠牲にして私の意識を補完しなければならないの?どうして……私ひとりではできないの……!

人間の意識を使って「鍵」を作ることは本来不可能なのです。あなたの誕生自体が奇跡ともいえる

……結局のところ、ここは「鍵」を正常に作り出せる未来ではありません。せいぜい「模造品」を作れる程度です

0号代行者も同様に、塔のコアを奪還するまでは、その体と「コレドール」の人格の制約を受け続けることになるでしょう

そして今……彼女は、あなたが残した「果実」に制約されている。その事実が、私たちに時間をもたらしているのです

そして、私たちにも時間が必要だ

フォン·ネガットは手を伸ばし、カイウスが嫌悪を露わにしているのも構わず、彼女の今の身長を確認した

今の身長にまで成長するのに、繰り返し遡行した時間を合わせれば、6、7年かかります

あなたが更に補完を進め、0号代行者の権限を受け入れられるほどになれば……体はもっと大きくなるでしょう

…………

そしてあなたは0号代行者の権限のみを保ちつつ、意識を十分に安定させて「彼女」の本能に打ち勝ち、彼女が使命を果たすのを阻止する……これが私の最初の計画でした

コレドールがここまで反転異重合塔を破壊しなければ、私たちは間に合っていたはずだった……

ですが、少なくとも今のあなたは彼女を拘束する手段を手に入れ、彼女はもう自由に赤潮を操れなくなっています

後は、ルシアとあの指揮官が予定よりも早くあなたを補完してくれるのを期待するのみですね

あのふたりがコンステリアで本当に対峙すべき敵が誰なのか、理解するといいのですが

…………

彼女は何か言い返したかった。目の前の代行者をバラバラに引き裂き、これから起こる悲劇を阻止したかった

しかし、彼女は何も言わなかった――彼女はすでにその目で真実を見て、変えることのできない現実を自ら確認していたからだ

彼女はフォン·ネガットの全ての計画に賛同はできない。しかし今、未来へ続いているのはこの棘だらけの鉄線だけだ。少しでも油断すれば、全人類が深淵へ転がり落ちる

……ルシアの「鍵」は使い果たされようとしてる。もしまたコレドールに妨害されたら、彼女は反転異重合塔に戻ることさえできなくなる

…………

いつも何かを隠している様子の代行者は、カイウスの言葉に何も答えなかった

フォン·ネガット……

人形は嘆くような声で彼の名前を呼んだ

……もしこの先、またコレドールの望み通りになって、私たちが何の転機も見つけられなかったら……

あなたには、まだ……別の策があるのよね?お願い、教えておいて

…………

いえ、ありません