Story Reader / 本編シナリオ / 30 星屑のデュプリカント / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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30-17 旧跡

異合の森

ルナの状況は思っていたよりも悪かった。コレドールを探し続けている最中、疲労のせいで彼女の意識は大きく揺れ動いた

やむを得ず、赤潮接触前の予行として、一度マインドリンクを行うことにした

荒い砂利の中に足首まで沈んでいる。空は厚い黒雲に覆われ、ひと筋の光も見えない

海から吹きつける風が痛かった。なのに海らしい潮の香りはなく、どこか不安にさせる別の臭気が漂っていた。漆黒の海は大きくうねり、波が幾重にも押し寄せてくる

打ち寄せる波は、見えない力に抑えられるようにして急速に勢いをなくし、それでも余波が島の高い崖に打ちつけられると、いくつかの岩がゴロゴロと海へ落ちていった

身をかがめて海水に触れると、指の熱い痛みが皮膚を通り越して血肉へと届き、更に体の奥へと広がっていくように感じられた

遠くには島が海からぬっとそびえ立っていた。澱んだ海水はその島の半分にも届かない。その理由のひとつは、この時間は潮の流れが激しくないこと。もうひとつは……

鋼鉄の骨組みが猛々しく密に交錯して潮の中から隆起し、アーチを描いて島を海水から遮っているからだ

ザアァ――ン

そうつぶやいた瞬間、黒雲が鳴り響き、波が押し寄せた

清浄な気が両手を満たし、足下の砂利がさらさらと細かく軟らかくなった。秩序と安定を象徴する力が、この地の小さな空間を次第に改善していく

ルナの自我を表す島に足を踏み入れていく。体にまとわりついていた海水が、能力の作用で浄化されて蒸発していった

今、視界には島の中心にある見慣れた建物がある。それはかつてのルナの家だった。そこに入って残りの対処を完了すれば、ルナの意識海は平穏を取り戻せる。だが……

砂浜を歩く足がふと止まった

相互不干渉は、ルナが一方的に口頭で約束しただけのこと

自らの安全を他者に委ねるのは、そもそも愚行といえる

反転異重合塔の異常事態から見るに、ルナたちが医療センターで人質をとってこちらの注意を引いたことは、清浄地がもはや昇格者たちを門前払いできないことを意味した

塔の近くにパニシングが現れ、すでにパニシングは清浄地内部にいつ入ってもおかしくない。この状況で、コレドールが赤潮を指揮して再び襲撃してきたら……

そう考えながら、再び建物に向かって歩き始めた

建物の前に立つと、鉄製の門がギイギイと音を立てた。任務開始前のルナの言葉が耳に残っている

私が必要なのは深層マインドリンクなの、グレイレイヴン指揮官。赤潮に接触する時、意識海を安定させるためにあなたのサポートが欲しいだけ

あなたやグレイレイヴンにとって不利な行動をとるつもりはない

私を信じる理由?

そうね……いずれわかるわ

心を決め、迷わず手を伸ばして鉄の門を押し開けた。精神を集中して中へと足を踏み入れる