ここにおいては、時間というものは神に奪われた恩恵のように存在していない
ここにあるのは銃に細菌、鋼鉄、鮮血、烈火、そして死だけのようだ
装填、照準、射撃、排莢
リー·エンフィールドの弾倉は10発のみ。全部撃ち尽くすのに30秒とかからない
ばっちり!
まだまだよ。師匠なら1分間に30発は撃ってた!
敵の頭を狙って撃て。弾を無駄にするな
じゃあ、あなたがやれば?
もういいってば、やっと少し平和になったんだからその話は終わり
<崩れて低くいびつになった壁にもたれて休んでいた>
<ここには先込め式の鉄砲からボルトアクションライフル、サブマシンガン、狙撃銃、パルスライフル、エネルギー源不明の大砲に、スタイリッシュで派手な銃等がある>
<そしてハンマーに太刀、メス、死ぬほど重い大剣、法師が持つような打杖、更にチェーンソーや匕首の他、素手の者、楽器を吹き鳴らす軍楽隊もいる>
<――どういうこと?画家や吟遊詩人まで戦場に出るのだろうか?>
<何でもいい、何だってできる>
<今手に持つ剣のように>
<近くの人々の声に引きつけられた。疲れた体をよろよろと引きずって、まだまともに見える人たちのところへ行こうとした>
……あの――
わっ!生きている人がいた!
さあ、こっちに来て座って
<見た目もさまざまな兵士たちが、珍しい動物でも見るようにしてすぐに取り囲んできた>
ん?お前、なんで全然汚れてないんだ?
それに真っ白な服なんか着て、まるで死装束だな?
口を慎みなさいよ。麦刈りの農夫みたいに、鎌を持って戦場に出る人だっているんだから
ナイス仲裁!
ったく。ねえ、あなたどこから来たの?
<なす術もなく首を振った。なぜなら、自分がどこから来たのかを本当に知らないから>
この戦闘――あるいは戦争は、一体どういうことなのですか?
あの怪物たちはどこから来て、あなたたちはここにどのくらいいるのです?
それがわからないんだ。本当に何にもわからない
私たちが知ってるのは、2日後、援軍が来たら突破するということだけ
ふざけるな、お前もカカからその情報を聞いたんだろう?
そのカカが死んで――もう3日だ!
どうして3日だってわかるの?
日にちを覚えてるからな!
昼も夜もわからないのに、どうして日にちがわかるっていうのよ?
あなたたちは援軍を待っているのですか?
そうだよ
その援軍は?
まだ来ないけど
それからあなたたちはずっとここに?
どうしようもないでしょ?どこにも行く場所はないんだし
私はここへ来て……5日になるようです
ほら見てみろ、言った通りだろ!
このクソみたいな場所は、時間の流れが絶対におかしい!
このトチ狂った場所で、どこぞのクソ馬鹿野郎が時計の針を行ったり来たりさせてるんだ!そんなことをして一体何が楽しいんだ!
だから俺が――
はいはい、わかったわかった
ねえ、何か食べる?さっき作ったところなんだ!
<彼女は真っ赤なスープが入った椀を差し出してきた>
<小さく泡立ちとろりとしたスープには、よくわからない大きな肉の塊とさまざまな内臓が浮かび、見た目は少々悪いが、異様なほどおいしそうな匂いがする>
いえ……結構
<拒絶も一種の美徳。でもいつだって他人を拒絶してばかりだ。そうでしょう?>
<その兵士はおとなしくスープの椀を持って兵士たちの方へ帰り、黙ったまま食事を楽しんでいた>
<そのスープの匂いで更にぐったりしてしまい、絶え間ない戦闘のせいで体のあちこちが悲鳴を上げている>
<この塹壕は泥だらけで、仕方なく塹壕に寄りかかって座り込むしかなかった>
<どうやら体の下に何かがあるようだ>
これは……!
<それはただの切断された腕>
<この戦争で死なない者や、自分のいくつもの「パーツ」を失わない者はいない>
<足を失い、目を失い、耳や肋骨を失い、腕を失う>
<もちろん……「命」も>
<こんなことは戦争の中では何千何万回と起こり、際限なく繰り返される>
<ずっと、果てしなく繰り返されていく……>
<人類が「存在」する限り、ずっと、ずっと繰り返される……>
戦争で死ぬ……
でもこの手はまだ銃を握っている
いつまで……戦い続ければ……
<死ぬまで、でしょう?>
緋色の空気に点火したように、塹壕から遠い平原に目が眩むような光が走り、戦場を白く照らし出す。やがて、巨大なキノコ雲がもくもくと空に向かって湧き上がった
数秒後、それに続くのは天地を揺るがす轟音――
援軍!援軍よ!
援軍が来た!私たちを助けてくれる!
<見よ、戦争に身を投じる者たちのなんと嬉しそうなことか>
<彼らは塹壕の外へと走り出した。極限の強い光に目を貫かれて痛みで涙を流しながら、盲いることすら気にもせず、その白い光に向かって歓声を上げている>
あの規模の爆発はまさか……
すぐに戻りなさい!早く!皆死んでしまう!!!!
伏せて!!!
<彼らを指揮する資格があるとでも?>
<この戦争の中で、単なるひとつの数字にすぎないのに>
<ひとつの、終わりのない、数字>
爆発から数秒後、高エネルギー粒子流を伴う凄まじい「熱風」が戦場に吹き荒れた
それは表皮を剥がし、脂肪を焼き、筋肉を破壊し、内臓を裂き、骨を砕いた
剣を杖替わりにして死体の山と血の海をようやく踏み越えると、兵士たちの姿はすでにそこになかった
彼らはもうこの死の山や海に埋もれ、戦争の一部になったのかもしれない
わかっている。そう、これが戦争の一部で、支払うべき代償であることを。だからこれほど感傷的になる必要はないことも
それでも、何かが「心」を突き動かしてくる
それは探せとばかりに両手を地面につかせ、爪の中を血と泥で満たしてきた
それに駆り立てられ、探し、掘った
どれほど時間が経ったのだろう。そもそもここに時間の概念は存在しない
何もない。鉄に溶かされた死体以外、何も
これが戦争というものの結末だ
私は誰ひとり救えない
空を舐めまわす狂った業火の光と煙、灼熱の風が体を焼くがままに、身を任せているしかない――
やがて、よろめきながら立ち上がった。この戦場にいるのは、1羽のハゲワシだけ
遠く、遥か遠くの火の光の中で、誰かがよろよろと身を起こす姿が見えた
その火の光の中で身をかがめる瘦せ細った男は、まるで新生児をそのまま大きくしたような姿だった
彼は恐らく生存者ではない
ただ……彼と私は同じだ
私たちは死を拒絶した
しかし夜がまた訪れる。今はもう、去らなければ――私たちはすでに全てを見た