Story Reader / 本編シナリオ / 27 稗史刻む焔志 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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27-9 ゲシュタルトの危機II-深き井戸

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ゲシュタルト

空中庭園アルゴリズムセンター

認証カード、生体認証、図形パスワード、量子暗号キー、ダブルセキュリティロックの合計5重のチェックを経て、アシモフはようやく厳重に保護された部屋への入室が許された

アシモフさん、今月の定例検査をお願いします

彼と一緒に5つの主要部門の代表たちが入ってきた。彼らがここに来た目的はふたつ――他人を監視し、他人に監視されること

甚大な損失をもたらした災害の発生後、ゲシュタルトへのアクセス権限は厳しく制限された

そのため、複雑な検証プロセスが設計され、科学理事会と主要5部門の代表が一堂に会さない限り、誰もゲシュタルト本体にアクセスできなくなった

現任の科学理事会首席の全生体情報による生体認証、監察院の動態図形パスワード、外交院の認証カード、行政院の量子暗号キー、最後に軍と司法部が管理するふたつの鍵

前と同じように、君らの好きにやってくれていい。とりあえず俺の仕事を邪魔しないでくれ

携帯した装置をポートに接続し、アシモフは毎月の定例検査を始めた

淡く青い光が彼の顔を照らし、沈黙の中で指がスクリーンをタップする音だけが部屋に響く

定例検査は以前と同様に長くはかからず、アシモフは装置をしまった

アルゴリズムロックが先月と比べて0.023%変動している。最近の特化機体開発で使ったことを考慮すれば、この変動は安全値内だ

行政院メンバー

安全のため、来月のアルゴリズムの上限を少し減らしましょう。現在、清浄地の演算配列も稼働しており、1万分の1なら分担できます

好きにしてくれ。アルゴリズムのソースは研究にとって重要じゃない

データロックは以前と同じだ。波動曲線もなく、記録にない送受信の痕跡もない

司法部

隔離施設は正常に機能しているようですね。お疲れ様です、アシモフ閣下

アシモフは頷くだけで何も言わなかった

彼は顔を上げ、ゲシュタルト正面に取りつけられた隔離板を見上げた。その下には人類の全ての知識が封印されている

考古小隊が血の滲むような努力で取り戻そうとしている対象も、ある意味ではずっと人類の手中にあった

ただあの事件のあと、それを取り出す機会を失っているのだ

ゲシュタルトメンテナンス通路

地下500m

ゲシュタルトメンテナンス通路地下500m

ニタ?

バラード教官、どういうことです?

ワタナベはすぐに通信を立ち上げ、バラードに問いかけた

バラード

……想像以上に彼女には交渉術があったんでね

ふぅ……私から説明します

分厚い防護服を着たニタは、ようやくセキュリティゲートの前にある端末の近くにたどり着いた

よかった、まだ使える

手袋をしているのに、彼女の指の動きはピアノを弾くように軽やかだった

今回の任務で最重要の目標はゲシュタルトです。それを持ち帰るにしろ破壊するにしろ、最深部への到達が大前提です

でもあなたたちの現在の速度では、最深部へ到着するまでに侵蝕率が警告レベルに達してしまいます。だってこのセキュリティゲートがあるから

何往復もしてセキュリティゲートを壊す方法もありますが、その場合、任務に要する時間は少なくても2日は延びるでしょう

このまま時間を浪費すれば、ゲシュタルトが侵蝕されるリスクや、周囲の侵蝕体に包囲される可能性があなたたちに降りかかる

だから、私の申請が承認されたんです。説得したのは私ではなく、データと推計です

「私の身の安全はゲシュタルトに次いで重要」と言うけど、ゲシュタルトまで到達できなければ、私の存在なんてたいして重要じゃないんです

バラード

……

バラード教官はそういうつもりで言った訳じゃない

彼がどう思っているにしろ、とにかく私はそう思っているの

どんな代償を払ってでも、ゲシュタルトを守らなきゃ

それが私の任務だから

相手の断固とした口調に、それ以上言えば相手の決意を踏みにじるだろうとワタナベは感じ取った

全員、防御陣形をとれ

攻撃部隊はニタを中心に、ふたつの三角形の隊列に陣形を変えた

では次のセキュリティゲートを頼む。遅れないように

わかりました。それと……ありがとう

部隊は地下深くへと進み続けた