追ってきた異合生物を一掃してようやくひと息つくと、先ほど見つけた古い資料に目を通した
#ギルゴア·グルート教授が新しい自伝で公開「自首」
とある新聞記者がギルゴア·グルート教授の最新「小説」を受け取った
彼らは皆「主人公」の精神疾患の患者であり、本の後ろには13人のリアルな治療記録が付記されていた
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記者は何度も事実確認をしたあと、警察に通報した
#7411人が合同署名、ギルゴア·グルート教授のためにデモ
彼が自殺を教唆した13人全員に犯罪記録があったが、精神疾患を理由にこれといった刑罰を受けていなかった
記者の調査によれば、グルート教授が精神科医になってからの15年間――
ギルゴア·グルート教授の陳情デモの終了後、人々は現場写真の中にギルゴア·グルート本人らしき男性を発見した
現在、インターネット上で7411人が署名をし、デモ活動を展開した
#デモ隊にギルゴア·グルート本人が登場
ギルゴア·グルート教授の陳情デモの終了後、人々は現場写真の中にギルゴア·グルート本人らしき男性を発見した
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□警察はコメントを控えている
しかしある関係者は、「ギルゴア·グルート教授はデモの間に脱獄に成功した」と話した
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#ギルゴア·グルート教授の罪状認否が難航
更に一部の支持者は、その自伝が彼本人が書いたものかどうかすら疑っている
記者が金のためにでっち上げたのだろうか?それとも彼は誰かに脅されていた?
#ギルゴア·グルート教授が死刑囚の人体実験許可契約にサイン
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#意識データアップロード実験が飛躍的に邁進
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今になって、我々はやっと□□□□□□を閉じ込めることができた
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関係者はこれ以上のコメントを控えている
#ギルゴア·グルート教授、死亡確認
(この記事はタイトルだけが残ってる)
#死刑囚の人体実験計画停止
7月13日、死刑囚の人体実験計画が正式に停止された
死刑囚は医療実験に協力する代わりに、補償金を得ていた
しかしこの1年間で、関連機関の不正が繰り返し報道されていた
死刑囚の同意を得ず、世界政府の名のもとに死刑囚を「徴用」し、非人道的な実験を行っていた事実など
事故報告
□□□□□□の意識データが欠如
□□□□□□□□□□□□、誰かが手を貸しているに違いない、□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□
彼が「逃げた」
#クティーラ計画、初歩的成功を収める
□□□□□□□□□□□□□□□□□クローンと記憶のバックアップにより、死者は母体の子宮から蘇った
意識データになった者も再び肉体を手に入れ、病や怪我を完全に克服することができる
クティーラ計画が完全に実現した暁には、人間は不老不死を手に入れることになるだろう
事故の報告書以外、これらの資料は「スクラップブック」のように、ニュースのスクリーンショットがファイルとして残されていた
誰かがギルゴア·グルートを追っていたのは間違いない
そんな疑問を抱えつつ調べ続けた。調べていくと、ラックの下から古びた日記らしい書物を見つけた
本を開いた時、プリントアウトされた写真がハラリと落ちた。写真には若い男性の姿がぼんやり映っている
写真をポケットに入れ、書物を調べ始めた。本には僅かに血がついていたが、手かがりになりそうなものはない――裏表紙まで調べたにもかかわらず
――あの方がまた来てくれた。今日、彼はボクを選んでくれた。父さんたちがいうには彼はとても有名な人で、彼を喜ばせないといけないと言われた
――でも彼はボクに何もせず、ただここでの生活のことを訊いてきた。他には父さんやローズのこと、ボクの勉強について
――ボクは勇気を出して彼の名前を訊ねたけど、彼はただベッドの横の本を指さして、この本についてどう思う?と逆に質問してきた
――……ボクはただその本のタイトルが好きなだけだと返事した。寄贈品からこの本を選んだ時は童話だと思ったけど、読んだら全然理解できなかったって
――そしたら彼は、ボクがその本を理解できた時、フォン·ネガットと呼んでくれればいいと言った。そしてもし再会できたら、ボクをここから連れ出すとも
――あの言葉、信じていいのかな?それと……ボクはその日まで生きていられるんだろうか?
――リル兄さんはもう1カ月以上帰ってこないし。父さんは彼のルービックキューブだけを持ち帰ってくれた
この文章はどういう意味だろう?先ほどのニュースと何か関係が?
もしこの全てが代行者フォン·ネガットの過去を伝えるものなら、真実はニュースのように簡単に説明できるものではないはず
しばらく考え続けていると、目の前がどんどん暗くなっていった
マインドビーコンの汚染だ、まともに考えられなくなっている
振り返って「案内人」に話を訊こうとしたが、彼は離れた場所に立って入り口を警戒していた。ラミアは卵を抱えて自分をじっと見ている
何か見つけた?
……あなた……大丈夫?
彼女は手を伸ばして自分に触れようとした
……なんで泣いてるの?
彼女にそう訊かれて、水たまりに映した顔を見た
針のむしろを歩くような苦痛と痛みで疲労困憊している顔だ
そんな状態だということをずっと無視していたが、もう限界寸前だった
まだ先は長く、疲れて倒れている場合じゃない。足手まといになる訳にもいかない
本当に?
時間がない、もう時間がない
指揮官は傷と血塗れの顔をあげると、うっすら微笑んだ
死まで残り37.5時間