Story Reader / 本編シナリオ / 24 惑わせる森 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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24-15 孤高の狼

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Video: S21号版本_文案剧情过场

誰もまだ何も準備してない時、卵のように収縮した「森」から、黒い影がその殻を破って飛び出してきた

サーチライトと夜が織りなす天幕を背に、その影は高く素早く飛び、まるで黒い卵から自由な雛鳥が生まれたようだった

がむしゃらにこの世に飛び出して、生まれたての爪で「卵」という今までいた世界を壊そうとしているように見える

その体は沸騰する戦意と血の臭いをまとっていた。その場にいた者はこの滾る狂気に身構え、これ以上近寄るなと警告する意を込めて、とっさに武器を構えた

全員が「それ」に向けて武器を構えていた。もし相手が生まれたばかりの敵なら――ここで倒す必要がある

「それ」がゆっくりと立ち上がった時、サーチライトが身に纏う黒い影を剥ぎ取った

――21号とヴィラだ

リーとリーフ、自分の近くにいる数名の構造体以外、依然として彼女たちに武器を向けたままだ

21号の呼吸は荒く、ふたりの体は赤紫色の液体に染まっている。サーチライトの光に照らされた21号の機体は、さながら殺戮に酔う血塗れの野獣のようだった

「野獣」は獲物の弱点を狙うような尖った目つきで、驚いて立ちすくむ構造体たちをギロリと睨みつけた

かつての21号の激しい反応を思い出し、心の中に警報が鳴り響く。すぐに前に立ちふさがり、他の人を止めようとした

誤解されてしまう前に――

ノクティスも同じことを思ったのか、彼は目の前にいる構造体を押し倒すと、大声で叫んだ

ノクティス

武器を降ろせバカッ!聞こえねぇのかよ!!

21号

私は――!!

白い狼のような少女は胸いっぱいに息を吸い込み、大声で叫んだ。自分も、おそらくノクティスも、21号がそれほどハッキリと叫ぶのを聞くのは初めてだった

21号

私は――ケルベロス小隊の21号だ!!

呆然、恐怖、あるいは困惑。そんな目で彼女を見つめる全ての視線をはね返すように、21号も見返した。孤高の狼が挑戦者を見下すように、自分に向けられた武器を睨んでいる

21号

隊長、怪我してる。すぐ治療を

人々が武器を向けたまま立ちすくむ中、21号は彼女の要望を叫び続けた

ノクティスはのしのしと21号に近付くと、彼女からヴィラを受け取った

担架だ!!【規制音】かお前ら!【規制音】が、さっさと手伝え!

私に任せ……大変、侵蝕度が安全値を大幅に超えています!急いでヴィラさんをこちらに!

21号とヴィラが突き破った殻は、いまだ収縮し続けている。水分を抜かれたように、目に見える速度で枯れていっていた

21号とヴィラが一体どれほど奮闘し、あの成長し続けていた木の網を突破したのかはわからない。だが今はまだ警戒をゆるめてはならない

心配いりません、お任せください

リーはすぐにこちらの意図を察して頷き、粛清部隊の責任者に指示を伝えに行った

数日来沈黙していた端末が、たった今電源を入れたように何度も何度も鳴り出す

確認すると、空中庭園や他の者たちからの期限切れメッセージだった

指揮官、通信状況が回復しました、空中庭園にも連絡が取れます。まだラグが酷いですが

遠くのしぼみつつある球形森林を眺めながら、おそらく21号たちが信号を干渉していた何かを倒したのだと推測した

すぐに報告をまとめ、この緊急事態を上に報告します

後は応急部隊を待てばいい。その前に、なるべく異合生物の影響を最小限に留めなければ

すでに保全エリアにいた最後の人たちも輸送機に乗って撤退していた

親しい人や失踪した人々の眼差しを思い出しながら、僅かな希望を信じること、あるいは残酷な現実を早々に受け入れること、どちらがむごいことだろうかと考える

だが少なくとも、彼らのために答えを探したい。どんな人生にも、結末が必要なはずだから

予想外の伝言があったのを思い出し、担架に付き添っている21号の方へと走った

うん?

大丈夫と頷く彼女の全身は傷だらけだ。ヴィラよりましとはいえ、決して楽な戦いではなかったはず

作戦の前――

最善を尽くし、問題を解決するという我々の約束を聞いた最後の撤退者たちは、名残惜しそうに輸送機へ乗り込み始めた

感謝をするように頷いたサロンスの目には、たくさんの感情が込められていた

人々が互いに支え合い、歩き出した時、ずっとその人たちの側に立っていた少女がこちらにやってきた

あなたは21号の仲間?

あの……構造体なの?

彼女の身なりだけでは所属まではわからなかった。しかもそんな奇抜な塗装を見たことがない

そっちの人から聞いたんだけど、21号の仲間がいなくなったんだって。白い機械で、踊るやつ

ちびっこ、って呼んでた

21号がスレーブユニットを大切に思っているのは知っていた。スレーブユニットがいなくなれば、21号は撤退している難民たちと同じように、かなり焦っているだろう

彼女に会ったら、こう伝えてください。「もしカヌンがその子に会ったら、連れて帰るから」って

うん、ありがとう

奇抜な格好をした構造体は、くるっと振り返ると、急ぎ足で保全エリアの人々の後を追った。追いながらも、彼らとは一定の距離を保っていた

「カヌン」と自称した構造体の話を21号に伝えると、彼女はうつむいて黙り込んだ

21号を慰める言葉や、空中庭園の支援機械でスレーブユニットを探す方法を考えていると、21号が口を開いた

大丈夫、もう、ちびっこを見つけた

21号の頭痛の原因は、ちびっこが呼んでいたから

でも、手遅れだった

21号、気付くのが遅かった

この世界に戻ってから、21号は初めて人と目を合わさずに話していた

彼女がそのことについて詳しく話す気がないのは明らかだ

彼女の悄然とした様子を見るに、「ゴロ」の結末は、最も受け入れがたい最期だったのだろう

21号がヴィラを連れて目の前に現れた時から、彼女の内側で何かが変わったのがわかる

しかし急速な成長は、往々にして大きな代償を伴う。生存競争の激しいこの世界では、進化の度に自分の一部分を殺す必要があるのだ

うん

21号は頭を上げ、同意するように頷いた。彼女は去り際にもう一度ちらりとこちらを見たあと、身を翻し、ためらいなく前へと歩き出した