最後の警備ロボットが斬り倒され、実験室の中は静まり返った
ふたりは一定の距離を保ちながら、デスクの上や端末のまだ破損していないファイルを確認していく
これは……
ある報告書がαの注意を引いた
そう……これはこれは……
どうかしました?
自分で読めば
αは報告書を手渡した
023号都市、112号保全エリア、D56拠点……これらは全て異合生物に破壊された小型拠点ですね
彼らを葬ったのは異合生物だけじゃないってことね
これらの襲撃……まさか彼らが仕組んだ……
報告書に書かれた襲撃計画の詳細を見て、ルシアの手がブルブルと震え出す
彼らにすれば、混乱に乗じた方がバレずにすむから都合がいいんでしょう
それに実験材料として、彼らは更に多くの行方不明者を必要としている
αが育成ポッドの自滅プログラムを作動させると、実験体は音もなく透明な液体の中に溶けていった
何をしたんですか?
育成ポッドの向こう側にいるルシアの顔がαの顔と重なり、微かに揺れている
彼らを苦しみから救っているの。それともあなたは彼らをウィンター計画の実験材料として、このまま使うべきだとでも思ってるの?
……
ルシアはそれに答えず、報告書を畳んでしまいこんだ
安らかに眠ってください……
その報告書を提出しても、裏に隠れているやつらを引っ張り出すことはできないわよ。むしろ自分が面倒に巻き込まれるだけ
だからって、こんな悪事を見すごす訳にはいきません
貪欲さを餌にして闇は膨らみ続ける。人間が昇格ネットワークへの欲望を持ち続ける限り、あなたのやることは全て無意味よ
αは自嘲するように笑った
あなたたちを危機から救うための特化機体だって、この計画から派生した副産物かもしれないのに?
……
たとえそうだとしても、これが正しいことだとは思いません
過去の過ちは是正できないとしても、このまま見すごすのは間違っているはず
それに……今の私たちはまだ全てを切り捨てるほど、落ちぶれてはいないはずです