Story Reader / 本編シナリオ / 23 稲妻走る冷枷 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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23-10 絡み合う因果

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粒子ビームとレーザービームが散発的に発射され、敵の圧力を蹴散らしてくれる。しかしルシアの支援がない状況で、防衛線はじりじりと後退しつつあった

この異様な攻撃は投げた網を狭めるようにして、全員を徐々に消耗させ、窒息させていく

その時、聞いたことのない声が響いた

シュエット

こちらは粛清部隊のシュエットです。まもなく「試作型動力甲」を投入します。マークされた地点から離れてください

それは教科書でしか見たことがない代物だった。この全身を覆う装甲は、AIとの連携なしには使えないからだ

パニシングが横行している今、そのAIが侵蝕され、装甲を使用する人を殺す可能性もある

そのため、前線指揮官であっても簡易的な造りの外骨格しか支給されないのだ

補給箱が地面に叩きつけられ、周りの侵蝕体が衝撃で吹き飛ばされた

その箱の蓋が開き、中から黒い装甲が現れた

リーフ、援護を!

はい!

同じように連絡を受けたリーとリーフが、こちらが装甲を動力甲に換えるための時間を稼ごうと、青と白のビーム射撃を繰り返している

急いで外骨格を外し、権限を確認して動力甲の背中のロックを解除した。すかさず動力甲を身に纏うと、背中の機械装置に次々とロックがかかり、体を包み込まれた

>>>>>>指揮官の権限を確認<<<<<<

>>>>>>確認完了、指揮官一致[player name]<<<<<<

>>>>>>通信権限開放<<<<<<

>>>>>>エネルギー制御権開放<<<<<<

>>>>>>分析回路開始<<<<<<

>>>>>>動力増強モジュールアンロック<<<<<<

>>>>>>武装モジュールアンロック<<<<<<

しばらく続いた暗闇が消え、視界が明るくなった時、耳元で温度を感じさせない声が聞こえた

低濃度のパニシング反応を検出、試作型Ω浄化システム起動。実行者様、指示をお願いします

戦術モニターを起動します

目の前や視野の外にいる侵蝕体があっという間に赤い枠でマークされた

装備リストを確認し、すぐさま足に装備されたビームピストルを抜いた

ビームピストル装備完了。反動軽減プログラムを起動しました

腕の装甲がわずかに変形し、最適な射撃体勢に入った。この装甲は自分の射撃スタイルをモデリングしているようだ

銃口から火花が散ったが、反動は一切なかった。ビームは侵蝕体のコアを貫き、一撃で仕留めた

照準、射撃、照準、射撃……地面に深く足跡を残しながら、少しずつ前進する

脆弱な肉体がついに正面きって戦場で戦う力を手に入れた。これで自分も彼らの戦闘を見ているばかりではなくなる

人間の技術の蓄積が、戦争の形を変えつつあるのだ

医療輸送機が太陽を遮り、その影の中にグレイレイヴンの3人が立っている

残りの侵蝕体が排除され、医療輸送機は無事に臨時キャンプ付近に着陸した

休眠状態のルシアは隔離カプセルに入れられ、輸送機内に移送された。更にグレイレイヴン小隊には新しい任務が告げられる

この任務はコスモス技師組合が設計した「試作型動力甲」の実戦データを収集するためのものです

技術の秘密保持面を考慮し、直接の引継ぎとなっています。任務内容を確認したら、こちらの秘密保持契約にサインを

テスト場所については、指揮官自身に決定権があります

相手の身分証明や任務報告、電子署名のどれにも偽造の要素は見当たらない

僕たちとルシアを引き離すつもりなんですね

黒野ならグレイレイヴンを野放しにするはずがないからだ

なぜこのタイミングでグレイレイヴンに新装備のテストを任せるのだろう?

軍を介さずに、何かを自分に見せたいということだろうか?

その時、あるアイデアがふっと頭に浮かんだ

意識海と機体の分析は終わったが、彼女は空中庭園でより詳しく検査した方がいい

もし彼女が空中庭園で異常を起こせば、我々ごとやられる。彼女も監禁されるだけじゃ済まなくなる

研究者として慎重に行うべきだと助言したまでだ

わかった、報告を続けてくれ

……いいか、状況はかなり複雑だ。遠隔の状態では、現象を分析して推測するしかない

アシモフは端末の位置を調整し、グラフを見やすいようにした

結論からいえば、ルシアに突然の侵蝕症状が起きたのは、彼女のパラメータが原始パラメータ――つまりαの機体パラメータに変化しているからだ

ある意味、彼女は昇格者になりつつある。だから本来安定していた鴉羽機体に、パニシングを吸収する能力が表れた

短い言葉だったが、それは水面に巨岩を投げ込んだように、ふたりの心に大きな波紋を広げた。アシモフの結論は彼らが考えていた全ての可能性を越えるものだった

鴉羽機体のデータは昇格者αのものだが、製造の過程でパラメータをかなり調整したんだ

当然、適応者の安全を考えてのことだが、一部のパラメータは俺たちにも調整ができなかったというのが実のところだ

おそらくその一部のパラメータに、まだ分析できていない隠れた変数の影響が出たんだろう

原始データと鴉羽機体の初期データ、それからさっき集めた機体データを照らし合わせると……

以前調整したパラメータが原始パラメータに向かって上昇している現象が起きている

[player name]のリンク時にマインドビーコンの汚染が起きたのもそのせいだ

それに、彼女の逆元装置は持続的にある発信源からの信号を受信している

初歩的な推測だが、この信号は鴉羽機体の変化と直接関係していて、彼女の意識海に影響を与えているんだろう

その信号を遮断できないものだろうか?

その信号は異重合塔の放射と似たような伝達方法を使っている。我々の今の技術では完全な遮断は無理だな

塔の放射記録と比べていなかったら、彼女の逆元装置が信号を受信していることすらわからなかっただろう

超刻機体ならパニシングに対して完全な免疫があるはずだ。それをルシアに応用できないか?

超刻機体の免疫の原理は、体内に実装したΩ武器が浄化しているからだ

Ω武器は通常の補助設備じゃない。Ω武器を鴉羽の体内に実装するってのは、ルシアのために新機体を設計するのと同じくらい難しいんだぜ

ルシアの問題の本質は、機体パラメータが変化したことだ。パニシングの吸収はパラメータの変化による副産物みたいなもんだ

それにそんなことをしたところで、彼女の意識海の問題の本質的な解決にはなるまい

じゃあ他に何か策はないのか?

ふたつ、解決策がある

ひとつは逆元装置を完全に摘出することだ

テスト結果によれば、逆元装置を完全にシャットダウンすると、鴉羽機体のパラメータと意識海に異常は起きなくなる

逆元装置という「受信機」を摘出すれば、ルシアの身に起きる全ての問題は解決するだろう

だがそれをすれば彼女はパニシングへの対抗能力を完全に失い、今後、どんな作戦任務も遂行できなくなるだろう

それが嫌なら、発信源から着手するしかない。ふたつめの案はまさにそれだ、送ってくる発信源を徹底的に破壊すればいい

アシモフは地図を広げた

まだ送信方法がわからないが、発信源の大体の範囲は割り出せた

アシモフはあるエリアを拡大し、そこに円を描いた

この場所は……

そう、この一帯だ。もう少し接近できれば、ルシアの受信状況から更に正確な位置を割り出せるんだが

それをやったとしたら、ルシアにどんな影響がある?

今あるデータから判断するに、ルシアが発信源に接近すれば、受信量も増えてしまうだろうな

遠隔手術で彼女の逆元装置に遮断器をつけることはできる。完全なシャットアウトは難しいが、症状を和らげることはできるはずだ

その間に発信源を破壊すればいい

発信源の正体は突き止められないか?

具体的にどんな形で存在しているかは、今あるデータだけでは解析できない

発信源は未知の何かという可能性もある。破壊できる実体など存在しないかもしれないぜ

この信号の他の特化機体への影響は?

影響があるという十分な証拠はない……

アシモフは少し沈黙し、話を続けた

……これから話すことは実験による結論ではなく、俺個人の推測だが

ルシアがこんなことになったのは、彼女の機体データと意識海の底辺構造が同じ人物に由来しているからだと思う

他の特化機体も昇格者や代行者の機体データに基づいて造ったが、意識海の底辺構造は異なったものだった

これこそ、特化機体は適応テストを繰り返すことで、ようやく使えるようになる理由でもある

俺の推測では、あの発信源は恐らくαの意識海の活動信号の可能性が高いと思う

可能性が高い……なぜその断定ができないんだ?我々が持っているαの意識海活動サンプルとの比較は?

すでに比較したが、信号の波形が違うんだ

あの資料はかなり古いものだ。意識海の活動信号が変化する可能性は極めて低いが、かといって確率はゼロでもない

そこにいるのは昇格者だけではないかもしれない

アシモフが発信源をマークした時から、ニコラはずっとうつむいて何かを確認し続けていた

失踪した「赤潮の天啓」のメンバーを覚えていますか?

その件は粛清部隊が追っていたな。黒野のウィンター計画や昇格者と関係があると確認されていたはずだが?

あの信者たちはオブリビオンのキャンプに移送されていたんです。失踪後、オブリビオンも彼らの行方を捜しています

少し前、ワタナベから重要な情報が届きまして。誘拐された信者の移送に関する情報です

失踪事件を早急に解決したがっているオブリビオンは、我々との協力体制を申し出てきました

粛清部隊は罠を仕掛け、誘拐者を何人か捕まえました。更に誘拐者から訊き出した情報から、いくつかの場所をリストアップしています

先ほどアシモフがマークしたエリアは、そのうちのひとつです

彼らはこんなに目立つことはしないはずだが

もしルシアの問題が彼らのせいなら、きっと彼らにもどうしようもできない何かが起きたに違いありません

つまりこれは我々にとってはいい知らせかもしれないということです。彼らが焦れば焦るほど、隙ができる

ルシアを利用してその発信源を探そうというのか?

ええ、この発信源が昇格者なのか、黒野の暴走かどうかはわかりませんが、確認する価値はあると思います