Story Reader / 本編シナリオ / 22 紡がれる彩華 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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22-10 『ラス·メニーナス』

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……わお

九龍環城は何度見ても、その雄大さに圧倒される

虹色に囲まれた建築群、輝く建物の星のような光――たとえそれが「展示館」の中の縮尺された展示物であっても、そのインパクトに人々は思わず感嘆の声をあげる

反対側では巨大な船がホログラムの水面からゆっくりとその姿を現した

人々がひしめき合い、煌々と灯りがともる船上から、一定の周波数とリズムに満ちた歌声が微かに聞こえた

――百伶百悼……

――往来出入の勢い、規模舞走す……

――魚龍変化……

あれは……

……夜航船ですね

まさかセルバンテスが九龍環城と夜航船を同時に再現したとは……

この配置……私たちは二手に分かれて、それぞれの展示館に入れということでしょうか?

でも……

シルカは困ったように隊員たちを見た

左側のアイラは目を輝かせて目の前の展示館を見つめ、今にも入っていきそうな勢いだ。一方のトロイは何にも興味なさげに、心底どうでもよさそうに立っている

右側のライナは所在なげにコンポジットボウを拭きながらも、トロイとシルカの様子をチラチラと窺っていた

ライナ?何か用でも?

いえ、何でもありません

彼女は目を伏せて、ありもしない埃を拭き始めた

どの組み合わせで二手に分かれましょうか?

アイラさん、何かいい案はあります?

世界政府芸術協会出身のアイラはセルバンテスの芸術館について最も知識がある。それをよく知るシルカはまず彼女に意見を求めた

えっと……私がアドバイスするの?

シルカの声で我に返ったアイラは、腕組みをしながら3人のメンバーを見つめた

そうね、私が考える九龍環城と夜航船であるなら、九龍環城は「メインルート」で、夜航船は「サブルート」のはずよ

これまでのことを考えると、セルバンテスがこれらの展示館を設計した一番の目的は、たぶん真実性を再現することだと思うわ

ってことで、九龍環城の展示館は私とトロイ、夜航船はシルカとライナでどうかしら?

トロイは機体の状態はよくないけど、戦闘経験が少ない私と組むことでバランスが取れる

ライナは戦闘経験が豊富で戦闘力も高いわ。シルカとの連携を試すいい機会だと思う

シルカはどう思う?

……私もそれが合理的だと思います。ライナはどうですか?

……

ライナは顔をしかめており、このグループ分けが気に入らないようだ。彼女は口をすぼめると、持っていた武器をギュッと握りしめた

個人的に、彼女はこの若すぎる指揮官と仲良くなる気は毛頭ない

無謀で青臭く、意気込みだけは一丁前。彼女はこういう手合いは苦手だった。しかし……

彼女はちらっとトロイを見て、すぐに視線を逸らした

骨董品のような機体で、黒野出身。しかも謎に包まれた軍役……

ライナ?

ええ、何でもありません

何かを隠すように、ライナは素早く視線を誤魔化す

それでいいです。夜航船は私と指揮官が

決まりですね

アイラさんとトロイは九龍環城展示館に、私とライナは夜航船展示館に行きます

その後は……この場所で合流しましょう

言っておきますけど……

合流する座標を確認すると、シルカとライナは夜航船展示館に向かった。ライナはすぐにシルカに何かを話しかけていた

あらあら……

ぎこちなさそうなふたりの後ろ姿を見ながら、トロイはひとりごちた

あのふたり、本当に大丈夫かな?

何か問題でも?

あの感じでは、展示館で機械体と戦う前から、考え方の違いで分裂するのでは?

私とシルカ、あなたとライナを組み合わせるとばかり

うーん……でも、そんなに深く考える必要はないと思う

同じ小隊なんだし、ゆっくり調整していけばいずれわかり合えるわよ

だから彼女たちが組むのを避ける必要はないと思うんだけ――

あれ!?あの窓の浮き彫りって、まさか書籍でしか残っていない古代九龍の「花彫り」なんじゃない!?

興奮した様子でアイラが駆け出した。トロイは先に去ったふたりをちらりと眺めてから、アイラの後を追った