Story Reader / 本編シナリオ / 21 刻命の螺旋 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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21-19 今、針が進む

熱で焼けた薬莢が吐き出され、地面に落ちている薬莢とぶつかった。血か水かもわからないぬかるんだ地面の上でそれらが音を立てる

何度同じことを繰り返したのかわからない。銃から弾倉が自動で排出され、構造体はすぐに背中から新しい弾倉を取り出し、チェックして装填した

この弾倉は倒れているどの仲間から手に入れたのか……もう覚えていない……

泥のついたもの、破損したもの、血痕があるもの……ぐちゃぐちゃの塊の中には、直視できない何かも混ざっている

しかし構造体に悲しむ余裕はなかった。彼女は今、弾倉に弾が残っていることだけを祈っていた

そして銃が上手く同くことを祈っていた。これは最後の銃だ。そんな悲惨な理由で貴重なこの武器を捨てたくない

その構造体は自分がここで倒れる訳にはいかないとわかっていた。隣ではリーフという名の構造体が、自分の指揮官を必死に守ってくれている

発砲に次ぐ発砲、指揮官は大丈夫と言っていた。今は何も考えず、照準を合わせ、トリガーを引けばいい

そう、右側は見なくていい。ストライクホークが駆けつけたから、指揮官は助かったと感動して泣いているはず。でもそんな姿は見られたくないだろうし、見る必要はない

空の弾倉が足の上に落ちた。機械的に手を腰に伸ばした彼女の目の前に、1体の異合生物が現れた

手で腰のあたりを探っても、そこにあるのはナイフと銃のホルダーだけだ

自分のナイフは狂ってしまった仲間の太ももに刺さったままで、拳銃はここに支援に来る前に、ひどい怪我を負った指揮官に渡してしまっていた

やっぱり私はデキが悪いわね……

どうせなら、最後に右の方を見たっていいよね……

……

その時、放たれたビームがその異合生物を包み、跡形もなく蒸発させた

だが構造体もそのビームの余波を受けて吹き飛ばされ、倒れ込んで動けなくなってしまった

よかった、間に合いました……

すでに傷だらけのフロート銃のファンが猛スピードで回転し、真っ赤になった銃身からは硝煙が噴き出している。あと何回、発射できるだろうか

指揮官

……

彼女の両手がぐっと握りしめられたのを感じた。今、こんな状況で彼女を説得している余裕はない

支えてくれているリーフからもがきながら身を起こすと、壁に自らの背をもたせかけた

動いたせいで、口の中に錆びた鉄の味が広がる

指揮官!

アンプルを力いっぱい、ブスリと太ももに刺した

薬のお陰で意識がはっきりしてきた。無理やり笑顔を浮かべてリーフの手の甲を叩く

……

リーフが歯を食いしばって歩き出したのを見ながら、倒れそうになる体を持ち上げ、なんとか座り直した

戦いが始まってから、元から問題だらけの指揮系統が完全に乱れていた。もし自分のリンクに少しでも問題が起きれば、せっかく展開した防衛ラインがすぐに崩壊する

この戦闘はファウンスの教授のどの教えとも違った。教科書とはまるで逆だ。全員が今、わずかな希望のために全てを賭けている

サポートとなるデータのバックアップも作戦もない。戦い続ける理由すらない

ただ、あの微かな星の光はまだ瞬いている。この過酷な戦場の向こうで彼が全力で戦っている姿が見えるようだ

それだけで十分だ。彼が戦っている限り、自分は無条件に彼を信じる。彼がグレイレイヴンの皆を信じているように

(ぐずぐずすんな。塔に入って彼を助けるんだ!)

(うああ!もう無理だ!耐えられない)

(リーが戻るまでは止まれません!)

(まだ耐えられます……!)

(ここで引くのはまだ早い!)

……

意識海のリンクで、多くの人の思考に触れた

同時に、それらの思考の主たちが揺らめく蝋燭の火のように、次々と燃え尽きていく

そのせいで自分の意識の負担は下がっていく

苦しみ……怒り……無力感……

飛び交うさまざまな混乱した感情が、山頂から転げ落ちる雪玉のようにふくれあがる

しかし今できることは、その雪玉を食い止め、リンクの安定を維持することだけだ

誰も返事をしてくれなかった。最も近くにいるリーフも、今は防衛ラインの維持に集中している

そのせいで半身しか残っていない異合生物がこっそりこちらに這い寄ってきたことも、誰も気付かなかったようだ

武器は要求して、自ら取り上げさせたばかりだ……

地面をずりずりと這う異合生物が、残った腕を動かし、ゆっくりとこちらに近付いてくる

あの速度は怪我のせいか?それでも突撃を?

それとも……死にかけの獲物を嘲笑おうと、獲物の生死の狭間をわざとうろついているのだろうか

その異合生物が背後の塔と重なって、獰猛な牙をむき出して弱った人類を嘲笑っているようにも見えた

異合生物は片手を地面に突き立てて体を持ち上げ、血が滴るもう一本の爪を振り上げた

ようやく右手が何か硬いものに触れた。それは爆破のせいで砕け飛んだ石だった

ありふれた、ざらざらの、ただの石

目の前の神秘的かつ巨大な異重合塔と比べれば、ゴミですらないだろう。だがその石で自分は今、神の力に対抗しようとしている

この石はあまりに小さく非力で、神を笑わせることすらできないに違いないが

しかし数百年前、人類の先祖は石を握り、地面にうずくまりながら初めて火を起こしたのだ

その時から人は闇夜に対抗する武器を手に入れ、夜の静寂に立ち上がり、星を眺める自由を手に入れた

右手で石を握りしめ、異合生物の醜い顔を、そして背後にそびえる塔を見つめた

大きく息を吸い込み、渾身の力を込めて……

弱い人間が手にした石は最も原始的な、神をも恐れず天に投げられた武器なのだ……

その瞬間、眩しい光が大地に降り注ぎ、未来への扉をノックした

空中庭園

ああ!死ぬ、ロサ死んじゃう!

小さな彼女はデスクの下にうずくまり、持っていたトレーをめちゃくちゃに振り回した。それが構造体の硬い頭に当たって「カンカン」と音を立てている

突然、彼女は何かを決心したように、鋭い目つきになって振り回していた手をじっと見つめた

彼女は後ろに隠していたハンマーを取り出し、デスクの下から彼女を引きずり出そうとしている狂った構造体に振り下ろした

しかし当たらなかったにもかかわらず、その構造体はそのままバタンと地面に倒れた

うわ!ごめんなさい!そんなつもりは!

ロサはハンマーを投げ捨て、あわててデスクの下にもぐり込んだ

しばらくして彼女は恐る恐る手を伸ばし、すでにぼこぼこに変形したトレーで相手の頭をつついた

参謀部のメインゲート――

弾はもうない。誰か予備を持ってないか!?

参謀総長、あれが最後です!

チッ……

ウィリスは弾切れの拳銃を捨ててホルダーの帯を拳に巻きつけると、胸の前でガンガンと両手の拳をぶつけ合った

おい、開始のゴングでも鳴らすか?

必要ありません!

次の瞬間、ウィリスは拳を振り上げ、コントロール不能になった防衛機械体の頭部を致命的な角度から殴った

本来は時間稼ぎのための作戦だったが、一撃を受けた機械体は地面に倒れ込んだまま、起き上がる気配がない

……

……

……

私が殴ったくらいで倒れるはずが……

少し離れた場所にいた参謀部のメンバーは幽霊でも見たかのように、両目を擦った。そして大声で叫びながら端末を持って駆け寄ってきた

参謀総長殿!地上からの緊急報告です!

……

それは今までとはまったく異なる光だった

恐怖、疑い、悲憤、狂気……それらが青い光に浄化され、薄皮を剝がすように体の外へと濾過されていく

叫び声はやみ、振り上げていた武器は次々と地面に落ちていく

精神に異常をきたし、暴走していた構造体たちは茫然と周りを見渡した直後、ばたりと地面へと倒れた

異合生物たちも陸に上がった魚のように激しくもがいていたが、生存者たちがこの状況を理解するまでの間に、その動きを止めていた

青く光る塔を見て、カムイは大きく息を吐いて地面に座り込んだ

リーニキ……やっぱすげぇわ

それは目を刺すような緋色でもなく、狂乱する無秩序でもなくなった

塔を起点にパニシングは肉眼で見える速度で塔に吸い込まれていき、すぐさま塔の光に照射されて滅んでいる

バンジ、状況はどうだ?

周囲に生存中の異合生物はいない。侵蝕された構造体たちも動きを止めたようだ

とりあえず、危機的状況からは抜け出せたようですね

とはいえ引き続き調査をしないと、結論は出せませんが

残存の各執行部隊はまず負傷者の救助を。倒れている指揮官と構造体を優先的に回収してください。警戒は怠らないように

私はグレイレイヴン指揮官と次の作戦計画を相談してきます……

クロム隊長

どうした?

グレイレイヴン指揮官と連絡がつかない……

!!!

その瞬間、4人は同時に走り出した

無数の異合生物の死体を乗り越えた時、見慣れた姿が廃墟の壁のすぐ近くに倒れていた

……

……

……指……

……揮……

指揮官!

状況をまだ理解できないが、なんとか無理やり両目を開くと、目の前にいるふたりの姿が目に入った

指揮官!

指揮官、すぐに医療支援を呼んできます……

手を上げてリーフの言葉をさえぎった

どれほどの時間が経ったのか、いつから地面に倒れていたのか、異重合塔の状況とあの電磁波はどうなったのか?

指揮官、異重合塔は……

異重合塔がパニシングを吸収しているだと!?

……

3人は驚き、同時に顔にさっと影がさしたように顔色を変えた

――あの濃度と数のパニシングが1カ所に集まっている?冗談じゃない!

その参謀部の職員が彼らの心配を察してすぐに補足した

集中じゃなくて、吸収です!

えっと、違う!ちょっとまとめさせてください……

正しくいえば、浄化です。異重合塔が巨大なΩ武器と逆元装置が合体したようになっていて、一定範囲内のパニシングをずっと浄化しているのです

空気中のパニシング濃度が……恐ろしくなるほどの速度で低下しています

それでも万が一に備えて、リーフは血清を注射した

指揮官、体の調子は安定しましたが、何か具合の悪いところがあったらすぐ仰ってくださいね

わかったというように頷き返すと、リーフとルシアはようやく安心したらしく、立ち上がるのを助けてくれた

遠くの方で生存者を探していたチームが突然騒ぎ出した

あれは……

ずっとマインドビーコンと繋がっていた灯火が突然あかあかと輝き出し、まるで夜空に輝く明星のように、空から自分を呼んでいる

まさか……!

最初に叫んだのはカムイだった。彼は反射的にそちらへ走り出そうとした

だが自分がふらつきながらも歩こうとする様子を見て、彼はいきなり足を止めた

歩けないんだろ、俺が担いでってやろうか!?

そっか、わかった……

指揮官、私が支えますから

リーフとルシアに支えられ、ゆっくりと歩いた。しばらく歩くと、人々に囲まれている見慣れた姿が目に入った

……

リーは真っ先に指揮官である自分の状況を確認して、素早くリーフを見た。リーフがニッコリ笑って頷いたのを見て、彼はようやくホッと安堵したようだ

まったく……どうしていつも僕をこう慌てさせるんです?

初めて実戦に投入された機体だというのに、すでにボロボロの状態だ

その体に、傷のない部分はどこにもなかった

ひと目でどれほどの困難と危険に遭遇したのかがわかる……

これらの傷跡こそ、彼が諦めなかった証明なのだ……

大丈夫です。全部かすり傷ですよ。簡単な手当をすれば治りますから

むしろあなたたちこそ……早く機体の修理に行った方がいいと思いますよ

しかしリーがかすり傷と言い張ることなどお見通しだったというように、全員が彼の周りをぐるぐると回りながらチェックし始めた

……どうかしましたか?

カムイ

後ろは大丈夫だ。これはただの異合生物の引っかき傷っぽい

クロム

左腕、深刻な重傷は見当たりません

バンジ

左の太ももは矢の擦過傷だから、危険はなさそうだ

ルシア

右腕は、うん……装甲の表面についたかすり傷ですね

リーフ

体の動作に異常はありません、体温変化も正常です

リー

大丈夫ですって……そんなに心配しないでください……

リーは困りきって、助けを求めるようにこちらを見た

リー

……

……それについては、戻ったら詳しく報告したいと思います

僕はもう何も隠しません、グレイレイヴンに対しても、そして……

リー

……

からかうような口調に、リーは仕方なさそうにため息をついた

いつも通り「不要です」という返事をするかと思いきや、リーは本当に手を広げて、自分やリーフに好きなようにチェックを続けさせた

リーフ

では空中庭園に戻ったら、アシモフさんに頼んで全面的な検査を受けてもらいましょう

リー

それよりもまず指揮官と空中庭園に報告したいことがあります

彼は眉間にしわを寄せ、何かを思い出そうとしているようだ

リー

その……塔の中で起きたことについてですが

リー

やること?

ルシア

お帰り、リー

リーフ

リーさん、お帰りなさい

困惑、驚き、焦り、諦観、安堵……

一同に囲まれて、リーは不慣れのためか少し歪ではあったが、心からの笑顔を見せた

戦いの痛みや離別する心配が、この瞬間に全て霧消し、災厄を生き延びた喜びへと変わった

長く続いた夜の後、彼らはようやく再び夜明けを迎えた

莫大な代償を払ったにもかかわらず、明日への道には今もまだ、身を刺す茨が張り巡らされている

しかしこの道を歩いていると、なぜか心に決意が生まれ、自然と希望を抱くようになる

帰る場所を失ってはいない。ひとりきりではない。彼はまだ多くの守らなければいけない宝を持っている

道を歩いてきた足跡が後ろに続いている。だが彼は時々それを見返すことはあっても、もう迷うことはない

過去は変えられない。ならば覚悟をして、勇敢に明日への一歩を踏み出そう

我々は闇夜を照らし、我々は新たな希望をもたらし、我々は……ともに明日へと向かう

約束通り、リーが皆のもとへ戻ってきたのだ

リー

皆さん、ただいま

1カ月後、空中庭園――

エデンに参謀部が成立して以来、いつが一番騒がしかったかというなら、それは間違いなく異重合塔事件後の1カ月間だった

空中庭園の修復作業は全方面の仕事となるため、議会は各部から代表を選出し、新しく臨時部門を設立することにした

軍の代表として参謀部が選ばれたのだ

執行部隊の人員の手配、壊れた航空設備の補充、構造体の部品製作……動乱の際に散乱した武器を回収する仕事すら、参謀部が処理していた

更にこの部門の副部長はあのウィリス参謀総長だった

各部門はより多くの資源分配を手に入れるため、あの「ケチ」な部長とは違い、話をしやすいウィリスと相談することを好んだ

ウィリス参謀総長殿ぉ、残りのβ型交換パーツはいつ届くんだ?構造体たちは自分の両足で歩きたいって思ってるんだぜ?

シルカ、グリース長官の要求に対応してくれ

はい!グリースさん、どうぞこちらへ

シルカ·ルブラン……確か「スワロウ」とかいう小隊の指揮をしてたよな……

戦況はずいぶんいいようだな。執行部隊の優秀な指揮官なのに、ここで俺にアゴで使われるなんてね

……

シルカが何かを言い返そうとする前に、グリースは早くも彼女への興味を失ったようで、あるファイルを取り出した

番号E0M2-0022、部品の申請だ。β型交換パーツを90セット頼む

……β型交換パーツを90セットですか……

70セットで

7……

おっと、覚え間違うとは俺もボケたかな

グリース長官、せっかく参謀部に来られたのですから、隣の部屋で少し休んでおられては?

そこにニコちゃんがいるのかい?

私はあなたたちそれぞれに……話がありますので

グリースはファイルをシルカのデスクに放り投げ、フンと部屋を出ていった

慌ててファイルを確認し直しているシルカを見て、ウィリスは眼鏡をクイッと押し上げると、棚からファイルを取り出し、隣の部屋へ向かった

誰か来たのか?

グリースです。黒野で内輪揉めが起きているようですね

ニコラは彼の言葉を待ったが、ウィリスは話を続ける気はなさそうだった

参謀部の使命が何かを、改めて私が忠告する必要はないと思うが

参謀部の使命は空中庭園に訪れる全ての危機を事前に回避することです。ご安心ください。この件に関して、どちらかに肩入れするつもりはありません

ウィリスは持参したファイルをデスクに広げた

今回の異重合塔事件は、これまでのプランの中で予測されていました。現在はすでにE-14段階に入っています

E-14、参謀部コード「新世界」……

我々の予想を遙かに超えましたがね。人類の状況は悪化せず、むしろ地上の再建計画を早めに考えられる段階になっている

異重合塔は一定エリアのパニシング濃度をゼロにできる。しかし議会は、科学理事会がその原理を完全に把握するまで、軍がこんなリスクを犯すのを許すはずがない

しかも代行者の死亡はいまだ確認できず、昇格者の目撃報告が更に増えていることも忘れてはならない。パニシングの脅威は、形を変えて今も蔓延している……

だからこそ拠点が……希望の象徴となる町が必要です。そこが忍び込もうとする昇格者と戦う前線基地となるでしょう

我々が関連計画を推進し始めたら、参謀部は足並みを合わせてくれると理解してもいいのか?

どちらにも肩入れしないとは言いました。ですがその場所が、人類が地上に戻る足がかりの町となるのであれば、参謀部は助力を惜しみません

わかった

ニコラはウィリスから差し出されたファイルをトントンと几帳面に揃えると、立ち上がって部屋を出ようとした

そうだ、前回の件だが

はい?

工兵部隊は君が会議の内容や前線の状況を、月面基地に勝手に流したことをかなり不満に思っているようだ

ハハ、ニコラ総司令の素晴らしい演説をお聞きする限り、私のやり方にはご賛同を得たとばかり

あそこは議会だ。馬鹿正直には話せない。だが結果的に私は君の選択に賛成している

この件は私が押さえ込んでおく

お願いします、総司令

ニコラはそのまま立ち去り、部屋の中にはウィリスひとりが残された

結果的に私の選択に賛成する、か……

彼はポケットから銀色の徽章を取り出した。それは翼を広げた鷹であり、その鋭い角が持ち主の鋭敏さを物語っている

参謀総長殿

どうした

先週、執行部隊が新しい小隊の編成の審査を始めました。メンバーの候補を各部門から選出するため、指揮官にふさわしい人選を参謀総長殿にうかがいたいと

私に指揮官を選べと?

あの方は総長の選択眼を信じている、そう仰っていました

ふむ……

ウィリスが個人端末を開くと、極秘と書かれたファイルが表示された

ふむ……なるほど。彼の提案がやっと議会に認可されたのか

タイミングとしては……別におかしくはない

私の考えを読んだというべきか?

特別小隊、コード名「アイリスウォーブラー」が……「新世界」の楔になると彼は思っているのか?

コンコン……

入れ

扉が開き、入ってきたシルカがウィリスに一礼した

ウィリス参謀総長

どうした?

実はちょっと妙な申請がありまして……

わかった。机に置いておいてくれ

はい!

立ち去るシルカの後ろ姿を見ながら、ウィリスは指でトントンと机を叩いた

そして彼は端末の極秘ファイルを閉じ、立ち上がると部屋の電気を消してそのまま出ていった