ここは安全そうです。少し休憩しましょう
適当に言いつくろってこの場所を離れようとしたが、負傷した構造体が必死に仲間を支えているのを見て、リーは考えを変えた
自分は大丈夫だ、彼の方が深刻だ
もう侵蝕体の信号もないし、ここで一旦止まろう!
緊急休眠状態の構造体を安全な場所に寝かせると、リーは彼の傷を調べ始めた
……傷はたいしたことありません。侵蝕度も下がっているし大丈夫でしょう。万が一に備えて、彼の意識海が安定してから行動する方がいい
よかった。無事でよかったよ……
構造体は見るからにほっとしたようで、振り返ってリーに感謝の言葉をかけた
本当に、本当にありがとう!
……どういたしまして
仲間が危険を脱したと知って、構造体はようやくリラックスしたようで、あれこれ話しかけてきた
まさかグレイレイヴンが支援に来てくれるなんて……君たちが向かうのは、いつも一番危険な戦場だとばかり思ってた
どうしてそんな風に……
ああ、ごめんごめん、別に変な意味はないんだ。君たちほどの精鋭はもっと重要な任務につくだろう思ってね
僕たちみたいな共同作戦小隊に入ったばかりの新兵の任務は、ほとんどが装置の設置とか、拠点の巡回とかで……
そういう任務は安全度がまだ高いので、悪くないと思いますが
それは違う!僕は安全を求めて構造体になったんじゃない!
君は……志願して改造を受けたのですか?
そう。こう見えても、僕は軍人の家庭で育ったんだ……でも子供の時から体が弱くて、歩くのすら外骨格が必要だったけどね
僕の家族全員が……侵蝕体との戦いで命を落としたんだ。彼らの遺志を継ぐことも、仇を取ることも、僕にはできなかった
だから……Ta-193コポリマーの適性があると知った時、心から喜んだよ
最前線で指揮官と肩を並べて戦い、自分の隊員を守る一人前の隊長になりたかったんだ……でも今は……
……自分の仲間を危うく見殺しにするところだった
……
ごめん……気にしないでくれ。僕はリラックスするとつい無駄口が多くなって……どうしようもない、癖なんだ。ハハッ
……いいえ、謝るようなことでは
最初から経験豊富な人なんていません
リーは立ち上がって辺りを見回し、顔をしかめて考え込んだ
ここは座標が示した場所だ。だが、ここに調べなければならない対象や状況等は特にない
まさか何か重要な情報を見逃した?それとも、その情報には何の意味もなかったのか?
あれ?これは……
構造体が何かに気付き、街の反対側にあったガラクタの山から壊れた機械を拾い上げた
こんなものがここにあるなんて……まだ使えそうなのに。どこかの小隊が落としたのかな?
これは……電磁波観測装置?
うん、工兵部隊が持ってたっぽいな。昔、彼らと一緒に任務についた時に見たことがある。執行部隊はあまりこういうのは使わないし
もしGPSシステムが故障したら、これがナビの代わりになる。僕の方向音痴の隊員も、これを見つけていれば、危険な目に遭わずに済んだかもね
……
……この機械はパニシングの影響を受けないんだ。だから検出さえできる状態なら、GPSが故障した時はこれをナビ代わりに使うのが一番いい
でもこういう装置は持ち運びしにくいんだ。小型化できれば、万が一の時の備えになるんだけどな
(万が一の時の備え……)
(時間がある時に改造してみよう)