Story Reader / 本編シナリオ / 19 暁の境界 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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19-11 凡人の信念

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うわああああああああ!!

地面に這いつくばっていたエイハブは、迫りくる侵蝕体に向かって何発も撃ち込み続け、まさに彼に到達するかというギリギリで倒すことができた

エッ……な、なんだ……私だって案外撃てるんだな

しかし喜んだのはつかの間だった。頭上に強い風圧を感じた瞬間、飛んできた巨大な鉄塊が彼の頭すれすれを掠め、背後にいた侵蝕体を吹き飛ばした

エイハブのおっさん、大丈夫か?あんた、思ってたよりやるじゃねえか

あ、ああ……昔はこれでも、軍にいたもんでね……

侵蝕体の襲撃より、カレニーナが振り回すハンマーの方が危険だ!――さすがにエイハブはそうは言えなかった

ここには血清なんてねーぞ、おっさん、侵蝕されたらヤバ……

言い終わる前に、カレニーナの頭の逆元装置が警告するようにピコンと立ち上がった。検知されたのは1体の侵蝕体で、すぐにカレニーナのハンマーで跡形なく破壊された

この特別製の高感度逆元装置は本来、零点エネルギーエンジンの起動時に発生する微量のパニシングを検出するための物だったが、まさかこんな形で役立つとは

しかし1体倒したところで、侵蝕体が続々と集まりつつある状況は変わらない。精密機械だらけの室内ではカレニーナも全力を出せず、増えゆく侵蝕体を傍観するしかない

おい!ドルベ!聞こえてるか!

カレニーナの通信に大量のノイズが走っている。これほどの電波障害はいまだかつて発生したことがなかった

聞こえてる!……ホント、声が大きいのよ。鼓膜が破れるって……もしもし?どうしてそちらの実験室で銃声が?

よーく聞けよ……原因は不明だが、ここに大量の侵蝕体が出現しやがった……しかも数が増え続けてる。新型特化機体の開発用の素体が、全部侵蝕されちまったんだ……

ちょっと、まだ寝ぼけてるの……ここは月なのよ、パニシングがどこから入ってくるっていうの?

そんなのオレが知るかッ!無駄話してるヒマはねえ……すぐこっちに来い!負傷者の輸送や侵蝕の拡大を防ぐのを手伝え!

カレニーナは倒れている黒野の兵士を蹴り飛ばし、それによって侵蝕体の攻撃を回避させた。そしてハンマーを逆手に持つと、その侵蝕体ごと実験室の壁に叩き込んだ

負傷者?誰かが侵蝕されたの?

う、今は……まだだよ!黒野のやつらも、普通に負傷しただけだ

黒野の兵士の負傷がカレニーナによるものだと言える訳がなかった。言えばこの後、ねちっこく調べられるに決まっている

あんたはどうするつもり?

オレは侵蝕源を調べにいく。こんなに大規模な侵蝕、ただの事故のはずがねえ……

この事態に、誰もがあの世界をも揺るがした災難を思い出さずにはいられない

まさか、零点エネルギーリアクターが……でも起動した時、真空チャンバーにパニシングの発生がないかは、細かくチェックしたはず……

考え得る可能性はふたつ――災害の発生源は今回、零点エネルギーリアクターとは関係ない……またはチェックの時に、黒野が何か小細工をしたかだ

エイハブは見るからに無関係だが……他の者はどうだろう?

だからオレが調べにいくんだよ……一体全体、どうして侵蝕が起きたかってことを

カレニーナは頭上の逆元装置を立てて、空気中のパニシングの流れをチェックした。やはり、リアクターの方が濃度が高い

ちょっと、ひとりで行くつもり?せめて私たちを待ってから……

もともとノイズまじりだった通信が、ここでぷつりと中断した。カレニーナはため息をつきながら、ようやく身を起こしたエイハブに通信端末を投げた

あんたにも聞こえただろ……ドールベアたちが撤退を援護してくれる

カレニーナさんはリアクターの中を調べにいくんですね……ならば、これを持っていってください

通信端末を受け取ったエイハブは、お返しのようにカレニーナにカードを渡してきた。そのカードにはノルマン鉱業のマークが記されている

私は名ばかりの開発主任だけど……それなりの権限を持っているから。それはきっと役に立つはずです!

マジでいいのかよ……

もしこの全てが黒野が仕組んだことなら、黒野の一員であるエイハブがカレニーナを助けることは、黒野に対する反逆行為になるだろう

今は緊急事態なんだ……ルールなんて気にしてられませんよ。それにこの危機を解決できるのはカレニーナさん、あなただけだ

カレニーナはコクンと頷き、リアクターの方へ走っていった