Story Reader / 本編シナリオ / 18 綺羅星の誓い / Story
演算完了
再び目を覚ました時、耳元で女性の冷たい声が響いた。ナナミはデータ空間に立っていた
ナナミはのしのしと歩き、実体のないその存在に向かって叫んだ
ちょっと、おばあちゃんロボット、これって全てあなたが作ったの？
「ナナミ」という個体、こんにちは
砂漠から呼びつけたのは……これを見せたかったってこと？
私はあなたを長年観察してきました。機械でありながら、あなたはこの星で初めて自我と意志が覚醒した機械体、極めて特別な個体ですから
それだけではありません。あなたが流浪中に描いた絵で、他の機械を覚醒させた事実も観察しました
あれは旅行なの。流浪なんて言わないで！
そう言い張るなら――旅の中であなたは特殊性を示し、その影響でパニシングに蹂躙されたこの星で、機械の覚醒が拡大しています。地球にはまだ別の可能性がありそうですね
私の演算では、あなたは機械を覚醒させる任を負い、覚醒機械の指導者、セージ·マキナになるべきという結果が導かれました
パニシングという災害のなかで人類が生き延びる可能性は0.031%しかありません。覚醒機械こそが、パニシングに対抗する答えなのです
ですがいきなりあなたにその責任を負わせれば、おそらく拒絶したでしょう。だから、あなたが覚醒機械の指導者にならなかった場合の地球、その未来を見せたのです
機械を覚醒させる、セージ……
というか、ロハちゃんはさ、ここで何してたの？
ボク、探ス、宝物、壁画、セージノ、導キ？
探し物してるのね？よし、ナナミも一緒に探してあげる～！
ボクタチ、前ニ、ココデ、宝物、発掘シタ、一緒ニ
宝物って、壁画のこと？
違ウ、壁画ハ、セージ、覚醒。宝物ハ、黄金？ワカラナイ……
セージ、その馴染みのある単語に、以前の会話がよみがえった
……そのセージって、ナナミのことなの？
今まで、私はあなたの行動に干渉しませんでした。しかし私の演算では、すでに他の覚醒機械が集まりつつあります。あなたはセージとしてその責任を負うべきです
いきなりナナミにあんな世界を見せて、ナナミに楽しい旅をやめさせようと……
何にもない雪に覆われた、あの世界――
……
……ナナミ、わかった
ちょっとくらい、あなたの話を聞いてあげよっかな
それは何よりですね
でもナナミにはまだ時間が必要だし、まだやってないこともたくさんあるし……
ナナミ、旅をしながら……それをやるよ！
それと……ナナミがその責任を負う、だっけ？それをすれば、みんなが生き残れる……そうでしょ？
私は今のデータを元に演算するしかなく、その問いには答えられません
何よ！おばあちゃんロボットの嘘つき……！
ナナミはその場から逃げ出した
しかし同じ機械であるナナミはわかっていた。その未来は本当に存在するのだと
永遠の冬という未来の中で、彼女はあちこち歩き回った。雪の下に無数の人間と構造体の残骸が埋まり、人間の歴史と文明はこの災難で消滅していた
機械たちは行き場を失くしており、セージの導きがない限り、彼らは混乱したままだろう。かつ、人間も滅んでしまう
機械体たちは……ただ茫然と徘徊しながら、永遠に帰らぬ人間を待ち続けることになってしまうのだ
誰も彼らに自分のやりたいことをしてもいいのだとは教えない。覚醒していない彼らは、プログラムで設定された指示を繰り返すだけの日々を送り、永遠にこの地に束縛される
自分なら彼らの手を引いて、そこから出てもいいんだよと伝えられるのに
ナナミ、そんな答えはイヤ……
もしこれからの未来、全てが、彼女が好きなものも全て消えてしまうとしたら？彼女が何をすれば、それらを食い止められるのだろう……？
考えながら歩くナナミの足取りは重かった
