で、あなたたちはここで何をしてるの?
私たちは、この、航空センターのロボットです
仲間を待っていますが、誰も、来ません
だから、組み立てて、宇宙に探しに行きます
宇宙から帰ってくる人間を待っているんだ……
ナナミはふーっと大きく息を吸い込んだ
……悲しまないでいいの……これは本当のことじゃないんだよ!ナナミ、そんなことをさせないから!
少女はハカマの手を握りしめた
ありがとう、ハカマ……ナナミ、過去に戻ってこの全てを変えてくる!
……?
ハカマは自分の手を握る少女を見て戸惑い、その手を握り返すべきか迷っている
……発話データを解析できません
セージ様は時間を過去に戻せるのですか?
ここに来たばかりの時は何が起きてるのかわからなかったけど、悲しい状況ばっかり見てるうちに、ナナミ思い出したの……
ナナミがここに送られた時におばあちゃんロボットが教えてくれたの。ここは地球の未来、本当の終末だって
ここに送ってくれたおばあちゃんロボットは、ナナミがここであったことを調べて、この悲劇が起きないようにして欲しかったんだと思う……
……つまり私は、仮想プログラムがシミュレーションしたデータでしかない……そういう演算結果でしょうか?
ナナミが言いたいのはそっちじゃないよ……!
いえ、私に「悲しい」という感情は存在しません。私がプログラムのデータで構成されているのなら、結果にはさほど影響しません
ハカマはナナミの手を握り返し、真剣に語った
ここで起きたことは、全て現実世界で起きた事実であり、ここは紛れもなく私の居場所です
彼女はしばしうつむき、この「100年近く」の時間について語ろうとしたようだが、結局、ふっと笑っただけだった
あなたの世界で、これからも引き続き努力を続けてください
別れを告げる時間は残り少なく、ハカマが見守る中で、ナナミはパワーへよじ登ると、巨大な端子を自分のうなじに接続した
ハカマ……ありがとう!ナナミ、リアルな世界に戻ったら、なるべくダッシュであなたに会いに行くからね――っ!
リンクが始まると彼女は淡い光に包まれ、まさしく神が雪原に降臨したようだった。風が全ての色を吹き消し、天地の境界線もぼやけ始め、ただ遠くに山と谷だけが見える
ナナミ様……
吹雪に白い髪を煽られているハカマの顔に懐かしそうな表情が浮かんだ。彼女は唇を動かして何かをつぶやいたようだった
激しい光が全てをデータの欠片へと切り分けた。この誰にも救えない冬も、その流れの中へと消えていった