Story Reader / 本編シナリオ / 17 滅亡照らす残光 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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17-16 終点の笛

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8分49秒

この限界ギリギリの戦いの、最後の11秒で、列車はやっとゆっくりと動き出した

人型生物は下車する人々など見向きもせずに、引き続き列車を追ってきている

予定位置についたあと、リーはクロムと力を合わせ、Ω型武器Ⅱ型を合金の板に設置し、列車の端に固定した

これまでなら、人型生物はすぐ合金板を攻撃してきた。その特性を利用して、彼らをΩ型武器Ⅱ型に近づける予定だった。しかし、彼らは何かを察知したのか、攻撃してこない

まさか、一度、Ω型武器と接触したことを、認識している……?

それなら、武器を投げつけても、彼らは避けるでしょうね

リーは頷き、自分の戦術リュックから電極遮蔽ボックスを取り出し、合金板にはめたΩ型武器Ⅱ型を分解して、中へと入れた

この電極遮蔽ボックスはアジール号を修理していた時に発見したものです。これを使えば、スキャンされるのを防げるはずです。試してみましょう

いい案ですね

しかし、彼がまだボックスを投げつける前、車両から体を乗り出しただけで、人型生物は即座に数百mほども後退した

電極遮蔽ボックスは、彼らにとって何か意味があるのでしょうか?

いいえ、おそらく僕たちの攻撃態勢を見て取ったのでしょう。彼らは確実に知能を持っているといえます

Ω型武器Ⅱ型をセットするのが早すぎたのでしょうか?

いえ、私たちは人々を避難させるために、一度、Ω型武器Ⅱ型を使ったんです

もし人型生物と異合生物が何らかのコミュニケーションをとっているとしたら、彼らもここの危険性がわかっているはず

それならば、一番成功率が高い方法は、電極遮蔽ボックスを持って、直接彼らに接触することですね

3名は顔を見合わせ、それから車内を見回した。戦闘の助けになるものを探そうとしたのだ

意外にも、自ら志願した9名の構造体以外に、Ω型武器Ⅱ型の輸送を担当していた構造体が2名、支援部隊の構造体が3名、それとふたりの人間が車内に残っていた

……どうしてここに残ったのですか?

僕たちはもう動けないから

彼は動かない足を持ち上げながら、ルシアに説明した

左脹脛と、右腿の外側に怪我を負った

腱が切れて、もう両脚の感覚がない

僕は医学の知識は未熟だけど、この怪我じゃ……手術をしても後遺症が残るだろう

もちろん、自分でそんな手術はできないし、他にできる人もいない。それに、手術の道具もここにはない

彼は血みどろの足を下ろした。両足の傷口の止血帯に、治療した時間が記されていた。最後に治療してから、すでに2時間が経過している

怪我をしてからかなり長い時間が経過したからなのか、あるいはもう諦めたのか、彼は血流を促すマッサージをやめていた。足が壊死する可能性は、もう気にしていないようだ

僕が避難についていっても、ただ足手まといになるだけ。だからここに残ったんだ。カシアは……

彼は隣にいる青白い顔の青年の体を軽く叩いた。しかし、青年は出血多量により、すでに気を失っている

簡単に確認したら、腎臓が貫かれて、どこかの大きな動脈が傷ついたみたいだ。車内の医療用品はもう、何も残っていない

下車してから、次の策を考えようと思ってたけど、列車が止まる寸前、彼は意識を失ってしまった

だからワタナベに言ったんだ。まだ動ける人たちを優先してくれと

あぁ、マッチは彼と一緒に行ったよ

…………

彼らは、ここに残ることの意味を理解している。にもかかわらず、彼らは皆の足手まといにならない方を選んだのだ

そんな深刻な顔をしないでほしいな、まだやることがあるだろ?

…………

彼の言う通りです。まず目の前の問題を解決しないと、残った人たちを治療することすらできません

人型生物と接触する任務は私に任せてください。短距離飛行で、飛んで戻ってきます

いつもの地上戦ならそれでいいかもしれませんが、高速移動している列車では、いったん降りたら、おそらくもう戻ってこれませんよ

もちろん、命綱が必要です。だから、ずっとこれを探していました

彼女は座席の下で見つけた誰かが捨てたバッグを取り出し、電極遮蔽ボックスを入れた。それから、細いワイヤーを取り出し、その一端を握った

ワイヤーの片方を車内の奥に繋ぎます。万が一の時は、これの力を借ります

ふたりは頷き、ルシアを手伝って準備を済ませ、車両の扉を開いた

後は任せますね

彼女はすぐに車両から飛び立ち、噴射装置で人型生物に向かって突進していった

双方が接触する寸前、人型生物はいきなり加速し、凄まじいスピードで異合生物の奔流の中に隠れてしまった

危ない!

間一髪で、リーがワイヤーを掴んで、全力で後ろへと引っ張った

引っ張られた力のお陰で、ルシアの体は異合生物と衝突する1秒前に後退し、車両へと戻ってきた

今のは……まさか本当に、ルシアが言うように、彼らに遮蔽ボックスは無効なんでしょうか?

あるいは、もうひとつ可能性がありますね――彼らはΩ型武器Ⅱ型の所在を検出できなくなったので、自分に触れようとする者全てに警戒しているのかもしれません

どっちにしろ、非常に厄介なことに変わりはない

まず、どちらなのかを確定させてから、解決策を考えましょう

了解です

リーは1号車に戻り、電極遮蔽ボックスが入ったバッグを最も安全な場所に置いた。それから似たようなバッグを取り出し、中に同じくらいの大きさの石を詰めた

ルシアはそのバッグを手にして、再び車両から噴射によって飛び出した

はたして、結果は前回と同じだった。人型生物は凄まじい速度で異合生物の奔流へ身を隠し、ルシアとの接触を避けたのだ

もう一度、実験しましょう

彼女は石が入ったバッグを合金板の隙間に挟み、それから合金板の一角を外に開いた。するとバッグは数秒間、車体に引っかかり、やがて車両から滑り落ちた

追ってきた人型生物は、今度は隠れずに、石が地面に転がるのを見ているだけだった

結論からすると、彼らは車両から落ちたものに――

ルシアの話の途中で、後ろの人型生物が再び列車に攻撃を仕掛けてきた

残る12両の車両はその激しい衝撃を受け、分断されてしまった。後方車両にいた3名は切断された車体から滑り落ちそうになった

ルシアは前へ突進し、隣を走るリーを掴み、車両の天井に向かって投げ飛ばした。彼は車両の壁をつたって、安全な車両へと飛び移り、ルシアも噴射装置を使って難を逃れた

後ろにいるクロムはまだ繋がっているワイヤーを握りしめ、ガンブレードに入った冷凍銃弾を後方へ撃ち、その反動と氷の力を借りて安全な車両へと飛び移った

シュレック

カシア!!!!

叫びが聞こえ、3名は態勢を整えながら振り返った。大量出血で気絶している男性は、列車が切断された衝撃により車両から吹き飛ばされ、人型生物の方へと転がっていた

ルシア

……!!

ルシアは車両から飛び出し、罪のない人を助けようとしたが、悲痛な表情のシュレックに止められた

彼の視線の先で、人型生物がカシアを受け止めていた。地面に打ちつけられることはなかったが、彼らに抱えられて、瞬時に高濃度のパニシングに汚染されてしまった

シュレック

……手遅れだ。諦めよう

風の音のせいか、青年の声は震えて、それは嗚咽のようにも聞こえた

シュレック

僕が……引き留められなかったから