重傷を負ったリーフの前に立つ2体の未確認人型生物が、彼女にとどめの一撃をさそうとした時、空から降る強烈な光が夜の戦場を真昼のように照らしだした
光は闇を突き破った。これこそが、人間たちが待ち望んでいた希望だ
宇宙武器がついに目指す場所へやってきたのだ
人類最強の兵器が、空からその怒りの鉄槌を下す
人型生物は何かを察知したのか、原始的な本能にかられて目の前の戦利品を捨て、類人を連れて40号浄化塔へと走った
宇宙兵器は、正確に40号浄化塔の中にいる異重合母体に命中した
続いてその白い光は浄化塔に戻ってきた2体の未確認人型生物と類人をも飲み込んだ
異重合母体は白い光で粉々になり、更に砕かれて塵となり、白い光の中へと消えた
巨大な炎は月を隠し、熱波が浄化塔から外へと広がっていく。連続の爆発は、一瞬にして全てを無に帰した。人類の小さな生命も、もう伝えられない思いも
宇宙兵器の攻撃が終わり、その攻撃で類人は灰となり、空中に消えていった
過去に40号浄化塔があった場所は、今はただの大きな穴と化し、周りの地表もめちゃくちゃに粉砕されている
その後、赤い液体が穴から湧き出てきた。それは変化し、集まり、再びあの人類の姿となった
彼らの足下からは異合植物が伸びて、うごめきながら空へ向かって成長を始めた
人型生物は迷いながら異合植物を見ているが、ここに存在しているはずの「母親」がどこにもいない
彼らは穴の横で長い間立ち尽くしていた。2体の人型生物の前にタンポポの種が飛んできて、熱風に煽られて更に高い場所へと飛んだ
人型生物は夜空でふわふわと迷うタンポポの種を見て、考え込んだ
パニシングの造物としての異合生物が何ら制約を持たないならば、パニシングと同じく永久不滅の存在になる
生命の意義は、終わりがあってこそのものだ。別れというのは誰にも必ずやってくる試練であり、成人の儀式だ
彼らの母体はどこにも存在しない。彼らにとってプリア森林公園跡は、ただの生命の起点にすぎない
彼らは、振り返って去って行った
あの夜空に消えたタンポポの種のように、このパニシングに侵蝕された星で、終着点へ向かって学び、成長し、この星の全てを体験して、この星の終わりを見届けるまで漂うのだ