Story Reader / 本編シナリオ / 16 永夜の胎動 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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16-13 未確認人型生命体

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走る、走り続ける

地上に戻ったハリー·ジョーたちは、ホワイトスワンに援護されながらプリア森林公園跡へと素早く移動している

遠くの浄化塔周辺は、ホワイトスワンの爆破によって火が燃え上がり、追撃する類人の足を止めていた

しかし、数えきれないほどの類人がプリア森林公園跡の四方八方から押し寄せてきている

ルシア、リー、リーフ、ハリー·ジョー、その場にいる全員が、一体どれほどの数の類人を倒したのかもう覚えていない

彼らの目的はただひとつ、包囲網を突破してサンプルを送り届けることだ

これは、シンプルな競走といえる

時間と、パニシングとの競走だ

10m、5m、1m、果てしない森をようやく抜け、一同の前に草原が広がった時、この競争はついに終わりを告げた

ハンスからバトンを受け取った軍人たちは、自分の使命を成し遂げたのだ

ハリー·ジョーは目の前の景色の変化に体の力が抜け、へなへなと草原に倒れ込んで数mほど転がった

だが彼はすぐ小型ロケットのセッティングを始め、サンプルをロケットにいれてすぐに起動した。この希望を、空中庭園にすぐに届けなければいけない

バネッサは空に向けて信号弾を発射した。空に上がる緑の煙炎でハンスに任務の完了を告げている

何しに来た?無様に撤退した私たちを笑いに来たのか?

違う違う違うってば。ホワイトスワン小隊に感謝を言いに来たんだ

総司令の言う通り、あなたの援護がなければ、僕たちは森林公園から撤退できなかった

あなたたちも包囲網突破の時に負傷しただろ。敵が来ない今のうちに少し休憩しよう。僕と八咫ちゃんは、他のエリアと連絡をとってみる

ハリー·ジョー指揮官、空中庭園からの通信です

こんな時にか……繋げて

先ほど、森林公園から送られた情報を受信しました

公園の外側を旋回中の小型輸送機がプリア森林公園跡から逃げたと自称するスカベンジャー2名を発見しました。彼らが携帯している40号浄化塔の血清もそれを裏づけています

彼が……あの森林公園の最後の生存者……

たとえ……我々は……緊急で……撤退する各部隊に大型輸送機を派遣しました。お待ち……ください

空中庭園の通信は途切れた。その情報をハリー·ジョーがプリア森林公園跡から撤退した一同に伝えると、重苦しい空気が少し緩んだ。この状況下で、数少ない朗報だからだ

シーモンさん、全員が撤退しました。逆元装置は激しい影響を受けましたが侵蝕された構造体はひとりもいません

皆を、首席どのを助けられて……

[player name]の力になれて……よかった……

ああ、まさかあなたひとりで、本当に……シーモンさん……シーモンさん!?

構造体は突然緊迫した口調になった。自分の制服に血が流れているのを見たからだ

その血は、自分にもたれかかったシーモンの体から流れ出ている

今のシーモンは構造体に返事もできない状態になっていた

シーモンのマインドビーコンがいかに強靱でも、ふたりで背負うべきプレッシャーをひとりで担った負荷は健康な人類の脳を数十秒で潰すほどなのだ

だがそんな負荷を、シーモンは数分間耐え抜いていた。全員がプリア森林公園跡から撤退し、敵が逆元装置に影響を及ぼせない場所に逃げられるまで

医療兵!いや、誰か人間の応急処置を知っていますか?シーモンさんが……

構造体の声を聞いて一同はすぐにシーモンの傍らに集まった。ハリー·ジョーがシーモンを地面に寝かせ、数名の補助型構造体がすぐに怪我をチェックし始めた

補助型構造体

シーモンさん……シーモン……

長い戦いのせいと衝撃を受けたせいで傷を調べる補助型構造体たちの手が震えている。イレナがその震えた手をしっかりとつかむ

イレナ

頑張って。適切な治療を施せば、シーモンも[player name]も助けられるわ

補助型構造体

ええ……

補助型構造体はなんとか震えを止め、何かを言いかけたが、目の前のある光景を見て言葉を失った

――地平線の彼方に、ふたりの人影が現れたのだ

その姿の下の草原は色を失い、地面には赤い光が走っている

その人影は、皆がいる臨時キャンプへと向かってきていた

彼らの移動速度は段々速くなり、大地が変異する範囲もすさまじいスピードで拡大している

長い距離が一瞬で縮まった。彼らはすでに生まれた時の危うい鈍さがなくなっており、全力で疾走する豹よりも速い

2体の人影がはっきりと見えた――異重合母体の高度進化個体から生まれた、未確認人型生物だ

今の彼らは、どの生物よりも俊敏で強いものに成長していた

疲れを知らない追撃者であり守護者。領地を侵入した敵を殲滅する存在だ

「ママ」の一部を持ってったやつはただじゃ済まさないってことか

ハリー·ジョーは両手で自分の頬を叩き、常に浮かべているへらへらとした笑顔もなく真剣な表情をしている

時間がないというのに……

首席とシーモンの状況は心配だけど、今僕たちがやるべきことは、目の前の敵を撃退することだ

だからグレイレイヴン小隊とシーモン小隊の皆さん、力を貸してくれない?

ルシアたちはハリー·ジョーに返事をせず、ただ武器を握ってハリー·ジョーが作った防衛線の前に立った。行動でハリー·ジョーに答えている

ああ……そうだよね……

訊く必要はなかった

どんなに絶望的な敵を前にしても、僕らがやるべきことはただひとつだから

構造体たちは次々と武器を構え、防衛線の前に立っていく

八咫は男女をにらみつけ、透明になった機械アームを触手のようにして体を持ち上げ、周囲に溶け込んだ。ただ仮面の赤い光だけが、空中で輝いている

後は、僕たちに任せて

シーモン……[player name]、もう少し、あともう少しだよ……

プリア森林公園跡の全ての類人が集まり、彼らの叫び声が森林に轟いている

男女2体の未確認人型生物は先頭に立ち、無言のまま人類に死の宣告を告げようとしている

今まさにここで、人類とパニシングの戦いの火蓋が再び切って落とされたのだ