Story Reader / 本編シナリオ / 16 永夜の胎動 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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16-7 プリア森林公園跡

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ハンスは準備と自己紹介に10分の時間を与えたが、キャンプ地に横たわる重苦しい雰囲気に、誰もが口を開けないでいる

プリア森林公園跡に入れば、どんな敵に出会うか誰もがわかっている。ここで気が緩んで準備を怠れば、類人に殺される要因になるかもしれない

ルシアはリーとリーフとともに森の付近で状況調査を始めた。それを見ながら、少し離れた草原の石の上に座って武器をチェックしていた

その時、首元に突然殺気を感じた

後ろへさっと避けると、今まで自分の首があったあたりに1本の短刀が見えた

――襲撃者の顔を見るより先に体が反応した

片手で襲撃者の手首をひねり上げ、短刀を落とさせて武装解除し、敵が驚いている隙に足をすくって転ばせた

???

あれえ???

襲撃者が立ち上がろうとするのを、両手でしっかりと押さえつけて拘束する

???

ひいっ、降参、降参だよ。あの短刀は鞘にいれたままだから!やっぱりシーモンの言う通り、首席の反射神経はすさまじいな

押さえつけた下から男の声がした。その時にようやく自分が拘束している男が、空中庭園の指揮官服を着ていることに気づいた

???

プッ、ペッペッ

彼は頭をなんとか横に向け、口の中に入った泥と草を吐き出している

その動きでやっと彼の顔がはっきりと見えた。任務報告の映像に映っていたウッドコック小隊指揮官のハリー·ジョーだった

初めまして、かな

??

こうなるって警告したじゃん。あんたさぁ、バカ?

だって、首席とのタイマン訓練の機会なんてレアじゃないか

隣から女性の声が聞こえた。彼女は背後の機械アームと自分の両手を上へ掲げている。機械アームは見た目よりずっと自由に動くようだ。人のように投降の姿勢をとっている

降参だってば、あのバカを放してくんない?

彼女の声を聞くまでまったくその存在に気づいていなかった。もし彼女にこちらへの害意があったら、後ろの男もこんな状態になっていなかったはずだろう

こうやってきちんと交渉を求めてきたのは相手の誠意ともとれる。これ以上男を拘束し続ける意味はなさそうだ

男から離れると、その女性は機械アームで男の首根っこをつかんで持ち上げた

私はスカラベの八咫っていうの。指揮官は本当はⅤ……あ、ヴァレリアだけど、この任務では臨時メンバーで、このハリー·ジョー指揮官と一緒に行動してる

ハリー·ジョー、それがこのバカの名前

八咫はアームで持ち上げているハリー·ジョーを指さした。逆にハリー·ジョーは、破顔して満面の笑みを浮かべた

もう、ちゃんと紹介してくれよ。バカなんてひどいなぁ

だーめ。こんな変人、バカ呼び以外に知らないし

まあいいか。あだ名で呼び合うことは親しきことかな、だよ。八咫ちゃんがこの臨時指揮官を認めてくれたんだと思っておくさ

??

キャンプの空気が重すぎて、息苦しくってさ。総司令官が時間をくれたから、有効活用しようと思って

正式に自己紹介をさせてもらうね。僕はハリー·ジョー、シーモンと同じく君とは同級生だ

ふふっ、もちろん知ってるよ。シーモンがいつも僕に話してくれるから

ハリー·ジョーは埃を払いながらこちらに向かって来た。八咫は隣でぬかりなく周囲を警戒している

僕たちウッドコック小隊が送った情報、見たよね?僕の仲間はあの戦いで負傷して、今はここから一番近い保全エリアでメンテナンス中なんだけど

心配?もちろん心配だよ。でも命に別状はないしさ

仲間につき添って心配してても何の役にもたたないだろ?仲間を傷つけてくれた類人どもにお返ししてやろうと思ってさ

だから、軽傷だった僕は戦場に引き返す申請をしたんだ。で、八咫ちゃんと臨時チームを組んで、戦場に戻ってきた

類人どもの方が、ってこと?

実をいうとね。内心ビクビクしているんだ。触ってみてよ

そう言いながら、ハリー·ジョーはこちらの手をつかんで彼の腕の上においた

その激しい脈の速さで彼が嘘をついていないことがわかる。類人と言った時の口調を聞いても、心底恐れているだろうことは明らかだった

軍人として僕は強敵をごまんと見てきた。戦場に足を踏み入れた時から、恐怖という感情は捨てたつもりだったけど

類人は外見も能力もたいして怖くはない。ほんとに怖いのは、未知なるパニシングだよね……

パニシングは、すでに我々の地球環境にだんだん慣れてきているように思える

短時間で、類人という人間に近い異合生物に進化できたんだから

だとしてさ、パニシングの次の目標はなんだろう?人類に変わって、地球を統べる新しい生物になるとでも?

考えただけで震えるよね

そんな事態を防ぐためには、当然前線に戻って敵を駆逐するしかない

ここは地球だ。追い出されるべきは招かれざる客であるパニシングだよ

そして恐怖に打ち勝ち、敵を撃退し、勝利を得る。それこそ我々軍人の使命だろう

問題が起きたら、軍隊が解決しなければ。民衆にお任せって訳にもいかないよね?

僕が経験したようなこと、他の人たちには味わわせたくないんだ

あはは、何でもない。そこは気にしないでよ

それと、ガチガチの緊張しすぎは逆効果だ

張り詰めた弓の弦は、すぐ切れてしまう。だから総司令官は僕たちに互いに自己紹介をさせる時間を与えたんだと思う

要約すると、今このキャンプ地の雰囲気は決してよくないよね。僕、ちょっと調整しようかなと思うんだ

あれ?八咫ちゃん、どうしてそんな遠くに立ってるの?

あんたらさぁ、警戒心が低すぎでしょ。初対面なら距離を保って当然じゃん?なんかずっとダラダラしゃべってるけどさぁ

おえ……僕を……呼んだかい?

ハリー·ジョーとの会話中にシーモンの声が聞こえた。彼は隣の構造体にもたれながら、口を拭いている

それを見たハリー·ジョーは、その構造体と一緒にシーモンを支えた

あーあー、シーモン、大丈夫?

う……やっぱり空地輸送には慣れないな……

さっき全員で集合していた時は元気そうだったのに?

ハンス総司令が怖くて……

おやおや、お得意の乗り物酔いが出ないほどに怖かったの?

あ、指揮官、彼らは……

皆で会話していると、ルシアたちがちょうど森から戻ってきた。目の前にいる初対面の小隊を見て、ルシアがすぐに訊いてきた

どうも、ハリー·ジョーです。こちらは僕のベストパートナー、八咫ちゃん

ウザっ。やめてくんない?正直あんたのことよく知らないっつーの

ただの臨時隊員と指揮官っていう関係だから

こちらはシーモン、とその隊員……

ハリー·ジョーは八咫の苦情もどこ吹く風で勝手に紹介を始めている

ハンス

10分経過した。総員集合せよ。森林公園へ進入する

ううええあああ!!??

隣から突然聞こえたハンスの声に、シーモンはかなり驚いたようだ。彼は構造体とハリー·ジョーから弾かれるように体を起こし、ビシッと直立姿勢をとった

静かに

類人の情報が少ない状況下だ。そういった声に反応する可能性もある

ハンスは冷徹にちらっとシーモンを見た。ハンスが手を上げると、隊員たちは散開し、類人からの襲撃を警戒する

バネッサ率いるホワイトスワン隊もどこからか現れ、横に来て立ち止まった

準備中、何か収穫はあったか

ここの植物を採取して、えーっと、ひと口食べてみたんです

今はその分析中です

類人については?

う……何もありません

ですがこの森林公園に関して、我々が送った映像に記録されていない情報がひとつあります

我々ウッドコック小隊は道を塞ぐ植物を伐採し、40号浄化塔へ急行していました。その際赤く光る木を切ったら、液体が流れ、切断面のパニシング濃度が2%上昇しました

切断されない植物にはその現象は起こりませんが、表面に付着している異合植物と関係があると思われます

あっ、異合植物というのは、異合生物の特徴を持ち植物型に擬態した構成物に対して、僕がつけた名前です

赤い物質を破壊せずに植物そのものを破壊することは相当難しいと思われます

簡易的な推測ですが、広範囲における異合植物の破壊はプリア森林公園跡及び周辺エリアに対し、不可逆的な悪影響を与えるかと

進入する時に不必要に侵蝕度が上がらないように、事前に皆さんに報告しておくのがいいと思います

ちっ、面倒だな。たいそうな情報かと思わせやがって

バネッサは冷ややかに鼻で笑うと、ハリー·ジョーから目線をそらした

ちょっとちょっと?なんかうっすら敵意を感じるんだけど

ホワイトスワン、何か進展は?

空路を試してみましたが、駄目でした

短距離飛行で木を飛び越えようとすると、すぐに森林公園の対空砲火を受けてしまいます

ここは森ですよね、どうして対空砲があるんです?

その通り、彼らは自分の肉体を砲弾にして、空中で浮遊している。ひとたび敵が現れるとすさまじいスピードで敵に向かって自爆攻撃を仕掛けてくる

異合生物はそんな攻撃をするまでに進化しているんですか……

幸先が悪いな

はい、それにやつらはかなりの知能レベルがあるようです

空中からあの巨大樹に近づく対象だけを攻撃します。40号浄化塔に近いほど対空火力も激化するようです

私たちの輸送機は森林公園の外周に降りたから、撃墜されなかったんですね

わかった

では、機動力のあるハリー·ジョーは八咫と側面を、他の小隊は1列になり相互に援護しろ。グレイレイヴンは陣形中央で戦力を温存、空中から襲来する異合生物を警戒せよ

類人と遭遇したら自由に攻撃していい。陣形を保ちながら前進だ