Story Reader / 本編シナリオ / 15 ラストスパーク / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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15-7 野心の墓場

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これじゃキリがない

更に侵蝕体を撃退したが、戦い続けるヴィラの機体はオーバーヒートを起こしそうになっている

ヴィラはすぐにその言葉の意味を悟り、自分をひっつかんで担ぎ上げ、ビルの中に飛び込んだ

ビルの外を歩く侵蝕体は、ふたりの信号を発見できないようだ

思った通りだった。ここの建物の外装にはほとんどの識別信号を遮断できる特別な材質の吸収塗料が使われている。だから機械の「目」では識別できないのだ

危機が去るやいなや、神経を張り詰めていたヴィラは壁にもたれて、ずるずると座り込んだ

彼女の腕の傷から循環液が流れ出ている。さきほど自分の身を守ろうとしてくれた時にできた傷だった

こちらの生死を気にしないとは言われたが、自分は走って少し呼吸が乱れたくらいで、何ひとつ怪我はない――彼女がしっかりと守ってくれている証拠だった

黙ってなさいよ

この状況で何ひとつ役に立たない謝罪をされても、それはあなたの自己満足でしかないわ

私の今の状況が「大丈夫」に見えるの?

ちょっと休憩させて。体を冷やさなきゃ

彼女は壁に身体を預けた。バイオニックスキンが少しずつ赤くなり始める

口を開こうとすると、ヴィラが射るような目つきでこちらを見た

もし「機嫌が悪い?」みたいな馬鹿げた質問をしたら、秒で海に投げ込んでやるからね

長い沈黙が続く

ヴィラの機体は少し冷えたようで、彼女はあえぎながらも「怪我」を手当し始めた

構造体の傷は人間と違い、損傷の大部分は致命的ではない。だが彼らは「自然治癒」ができないのだ

大丈夫だったら。邪魔しないで

あら、私の昔の仕事をご存じないの?

そうは言ったが彼女はその話を続ける気はないようだ

ヴィラはすぐ傷の「血」を止めた。彼女がリーフと匹敵するほど繊細で習熟した手技を持つことに少し驚いた

やがてヴィラは自分の調整をし終えたようだった

……首席の実力って、その打たれ強さなの?それとも面の皮?

彼女はこちらを見ながら、ようやく話しかけてくれた

そうね、私たちが今やっていることは、無意味で馬鹿げていると思う

もちろん議会も……黒野も、今回の作戦も、本質的に馬鹿げているわ

誰もが自分の目論見を優先し、すでに危機に瀕しているのに内部闘争をやめない。愚かすぎるわね

こんなことをあなたに話す私も愚かだけど

ヴィラは頭を上げた

まさか今回の作戦に意味があるとでも思ってるの?

議会と黒野を理解しているなら、彼らがあなたの奪い合いをする意味がわかるでしょう?

黒野は昇格者を探すためにあなたを拘束した。議会は人類の運命に、あなたが全てを捧げることを望んでいる

彼らはあなたを奪い合い、あなたの利用価値を根こそぎ掠め取ろうとしているのよ

一方はおおっぴらに、一方は大義という綺麗ごとでね

ヴィラは目を上げた

私はもちろん怒っている。でも、それは全てに対する怒りだし、それを実行せざるをえない私自身に対する怒りでもある

グレイレイヴンではよっぽど経験が足りないの?それともあなたが甘ちゃんなの?

誰だってパニシングは零点エネルギーリアクターの真空チャンバーから爆発したんだと知っている。一度踏んだ轍をわざわざまた踏もうとしているのよ

皮肉よね。私たちにここを偵察させるなんて。現代文明がなぜ絶滅したのか、彼らはわかってないの?まさか、もう一度零点リアクターの悲劇を繰り返すつもりなのかしら?

ヴィラは目を閉じた

ベッドに横たわり悲鳴をあげる兵士、自分の面前で死んでいく仲間……彼女の脳裏には昔の記憶と悲鳴が川のように流れている

黒野より議会の方が少しはマシだと思ったけど、どちらもが触れてはならないものに自ら手を出そうとするような愚か者だったとはね

そうやって対抗意識を持つから、再び危険な領域に足を突っ込むことになるのよ

「思う」、じゃなくて、これは事実でしょ

零点エネルギーが今の全てをもたらした。そのことをあなたは否定できるの?

ヴィラの話に反論できる訳もない

彼女の言う通り、それだけは揺るぎない事実だった

人類はとっくの昔に、自らの野心への道半ばで倒れている。この都市はそんな野心の墓場なのだ