Story Reader / 本編シナリオ / 14 視線の虜囚 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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14-4 痕跡皆無

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パニシングに覆われていた足跡をたどって、クロムは黒こげになった廃墟に足を踏み入れた

足跡はだんだん消えていったが、クロムはその近くで見たこともない異合生物を発見した

前に見たものよりもっとかつて地球に存在していた生物——サソリに近いものだ

それらを観察していると、サソリ型の異合生物たちはクロムを発見し、そのまま襲いかかってきた

戦闘はあっけなく、彼らは耳障りな叫び声を上げながら、次々にクロムの大鎌に切り裂かれていった

周りに他の敵性体がいないことを確認して、クロムは防護グローブをしてから簡易のサンプル採集と分析を行った

既存資料にはこの異合生物の記録はない。まだ発見されていない種類のようだ

……最近出てきた新種か

どちらにしろ、やるべきことはひとつだ。クロムは迷わず通信を開いて、アシモフの名前をタップした

アシモフさん、ストライクホーク隊長のクロムです。これまでの記録にない異合生物を発見いたしました

送信してくれ

ひとつお願いがあるのですが、今お時間がありますか?

……まずどんなお願いか言ってみろ

この異合生物は最近現れたものかどうかを、知りたいのですが

…………

すみません、お忙しいなら、後でお時間がある時にでも

いや、今お前が送ってきたデータを確認している……

この異合生物、こんな短い時間でまた進化しやがった

ひとつ確実に言えるのは、これは赤潮の産物だってことだな

アシモフがこう言った時、クロムは結論から導こうとしていた手がかりを自らの手にしたのだ

この近くにまだ赤潮が残っているから、異合生物がここを徘徊しているということか……

引き続き調査するのか?

はい、ご協力に感謝いたします。より多くのサンプルを採取できたら、またご連絡します

いや、お前らが帰ってから直接俺に渡してくれればいい。これからまだ用事がある

クロムが解散を告げてから2時間以上が経っていた

それぞれ、担当区域にクロムが持参した探知装置を取り付けている。しかしこのエリアのパニシング濃度は激しい潮の流れのようで、測定が手がかりになるとは思えない状態だった

地質的に何かを探れればいいが、この大地には先ほどの異合生物以外に確実なものは何も存在しない

宇宙兵器の影響か、もしくは建設途中で人為的な撹乱があったのかもしれない

赤潮が地下に戻ったと疑い2時間探し続けたが、全員入り口の類を見つけられず、この地域周辺の地下都市に深く入り込んでいた執行部隊も未踏の区域を発見していなかった

あるいは、もっと単純で乱暴な方法があるかもしれない

…………

クロムはこういった事態を想定して、メルトビートルに匹敵する爆破装置を持参していた

しかし、高濃度パニシングの進行からすると、装置で検知可能な地表から一番近い高濃度エリアは35mのところにあるようだ

設置場所を間違えて爆破装置を使いきってしまえば、いったん戻り支援を要請する手間がかかる

爆破ポイントをもう一度確認しておくべきだな

濃度変動の可能性は多々あった

ここにあるのが汚染された地下水脈なら、赤潮の本流は別のところだろう。皆が大変な時に本命以外に対しての支援行動を要請するのは気が引ける。再度、確認する必要があった

クロムがそんな風に考えていると、カムイの叫び声が通信から響いてきた

隊長!こっちで新発見が!

わかった。今すぐに行く

クロムはすぐにカムイのもとに駆けつけた。その場でバンジがしゃがみ込み、探知装置に表示された高いままで下がらない数値を見ている

うーん……このあたりの数値は全部こんな感じ

距離からすると、高濃度エリアの位置は地表からそう遠く離れてないな……少なくとも前に測定したのよりは近い

計画を実行するタイミングは今だろう。クロムはその場で皆に説明しながら、周りの探知装置から送られてきたデータを確認する

その時、アラームがなったばかりの数値が再び正常範囲に戻った

えっ、消えた?

……あれ、これは一体……?

赤潮のやつ、ここの地下を通過して、そのまま抜けてったんですかね?

その可能性は十分にあるな

爆破装置を使って入り口をひとつ開けてみるか

ふわーぁ……設置はどこに?

バンジは端末に表示されている高濃度が検知された数カ所を指さすと、長いあくびをした

予備の爆薬を入れると、4回分のチャンスがある。まずはこの3つの場所にしよう。予測不可の事態を考慮して、予備を少し残しておく

念には念だ。可能な限り事前に裂け目を開けておいて、爆発力を深くまで届かせるんだ

よっし!俺に任せてください!

カムイは手に持った大剣を勢いよく指定ポイントの地表に次々振り下ろしていく。その裂け目は何やらアルファベットのAの字の形をしているようだ

……この形……もしかして最近、「トレジャーハンター」やってる?

カムイはバンジに首をかしげてみせた。そのゲームは知らないようだ

ふわぁ……違うみたいだね

バンジは爆破装置を器用に組み合わせながら、カムイに告げている

……それ、一体、何なんだよ?

カムイは言いながらも大地に向かって手中の大剣を振り続ける

VRゲーミングルームで流行ったオープンワールドゲーム。内容は今、カムイがやっているそれ

そうやって体を鍛えて、病後の回復を促進させたんだ……あのゲームは運動量が多いから

でも、本当に流行っていた理由は黄金交換チケットが当たるかもしれなかったからだろうけどね

黄金を10tも手に入れた人がいて、無人島を買ったって噂だよ

え、なにそれマジ?任務が終わったら俺もやってみよ!

今はもうその報酬はないんだ

そもそも政府が健康促進のために開発したゲームで、賞品も政府出資によるものだった

報酬がなくなればゲームの楽しみも半減する。あのゲーム関連の記録もずいぶん減ったはずだよ

ちぇ、残念!つーか、バンジってそんなにゲーム詳しかったっけ?

前にね……リハビリをしぶってベッドから出ようとしない小児患者のために、探したことがあるんだ。カムイが遊びたいなら、後で貸してやるよ

やったぁ!マルチプレイできるやつ?バンジも休みに一緒にやろうぜ!

え……いや、やっぱり……休みはゆっくりさせて欲しいな……

バンジは組み合わせた爆破装置を傍らに置くと、厄介だというように長いあくびをした

えーっ?リハビリしたくない患者って、バンジ自身のことなんじゃないの?

…………

…………?

カムイが返事を待っていると、バンジはしばらく沈黙していたかと思うと、立ったままその場で寝てしまっていた

あっ、そういえばカムはなんでまだ帰ってこないんだろ?

歩く速度が速いんだ、遠くまで移動すれば戻ってくるにも時間を要するだろう

その時、待っていたカムが皆の視野に現れた。しかし彼は距離を取ったまま、こちらに近寄りたくないようだ

今回は強化防護だから大丈夫だって、こっち来いよー!

必要ない。遠くに立つのが習慣なんだ

そんなの変えりゃいいじゃん、こっち来てもいいんだって!

これから強化防護のない状態での任務もあるだろう

その度にまた習慣を変えるなんぞ、面倒だろうが!

カムは眉をしかめて振り向き、もうカムイを相手にしないと決めたようだ

その時、クロムの端末が発信者不明の暗号化されたメッセージを受信した

「ルナの情報なのか?」

誰がこんなメッセージを送ってきたんだろう?

クロムはそのメッセージに手がかりが残っていないか念入りにチェックした。しかし何の手がかりも見つからなかった

今はまだ発信者を追跡できない。これ以上試しても時間の無駄だ。今は赤潮を探す任務を優先しよう

追跡できなくても、隊長にはある程度推測できているんでしょ

…………

[player name]の今の状況を考え、クロムは眉をひそめた

彼はルナを探している誰かが発信したと推測していたが、こんな風に情報を探るのはあまりにも愚かだった

おそらく、グレイレイヴンのことを心配する者からだろう

グレイレイヴン?何かあったんですか?

………………

出発する前、父から少し情報を聞いている

[player name]は……この前の任務での規律違反の他に、昇格者を庇った罪にも問われるそうだ

昇格者を庇う?そんなこと、ありえないでしょ

……やはり、監護治療はただの偽装か

このことを知っていたのか?

そうか、最近休みの時に眠っていなかったわけは、これだったんだな?

僕はただ治療を手伝っただけです。[player name]には借りがあるから

でも、すぐにそう簡単なことじゃないって気づいた

グレイレイヴンはまだことの全貌を把握していないだろうな

もし彼らが知っていたら、自分たちの記憶を確認されることには同意しても、[player name]の訴追を許すはずがない

問題はそこだ

[player name]に一番近いルシアも最後には意識を失ってしまったから、[player name]が無実であることの証拠が何もない

ターゲットの行方がわからない限り、彼らは監視され続け、再び任務にも就けないだろう

そういえば今朝、ハセンのおっさん、表情が暗かったな

……ほかにもおかしなところがあった

カムイが更にそれを訊ねようとしている様子を見て、クロムは手を伸ばして隊員たちの会話を中断した

今は話し込んでいる場合じゃない

まず任務を最優先、その後は空中庭園に戻ってからだ

了解