空は暗い雲に覆われ、太陽の光は地面の骸骨を救おうともがくかのように、雲から幾筋もの金色の光線を放っている
ストライクホークの3人を運ぶ輸送機は暗い雲を突破し、黄砂に周りを囲まれながら、広い地面に穏やかに降下していった
ハッチが開かれるとすぐに、ひとりの金髪の者が飛び出してきた。彼は周りを1周ぐるりと見回すと、がっかりだというように頭を振った
前は廃棄された無人の建物があったのに、今はもう何もないな
彼の足下には火炎に焦がされた大地しか残っていない。本来ここに存在していた全ては屑と焦土になり果て、目の前に広がるのは荒廃した光景ばかりだった
白い煙が巻き上がり、灰になったあらゆるものに代わって遠い空へ助けを求めるように手を伸ばし、また力を失って空中に消えていく
ここは宇宙兵器のメインの攻撃エリアだったからな
クロムはカムイの後ろについて、ハッチから出て周りを見渡している
何も残っていないが、ここのパニシング濃度はある時間帯になると急に上昇することがある
どうやら、一件落着って訳にはいかなかったみたいっすね
とっくに片づいたはずの赤潮は再びその端を現し、隅々まで捜索を行っても、敵のリーダーであるルナはいまだに行方不明だ
それらは全て、巨大な危機の前兆として具象化していた
しかしクロムにとって、この偵察任務は[player name]の状況を知っていればこそ、より重要な意味を持つものになっていた
――昇格者のリーダーの行方さえ見つかれば、[player name]に真実という武器を与えることができる
引き続き警戒しろ、早く異常の原因を確認しなくては
すでにもとの状態が判然としない地表を見て、クロムは端末のマップを開き、現在位置を確認しようとした
以前の調査から、ひとまず西北方向へ進もう。現在探知されている異常なデータは全てそちらに集中しているようだ
カムイ、バンジを呼んでこい
了解です!
ふわ……それは必要ないよ
カムイが輸送機に突入しようとした時、ハッチから寝惚けまなこの者が降りてきた
またお前にあんな揺らし方で起こされたら、意識海が深刻な震とう状態になりかねない
……今回の飛行は安定してたから、いつの間にか寝てしまってた
お前、どんだけ揺れても寝れるじゃん
……まあね、さて、これから何をすればいいんだ?
まだどっかに赤潮が隠れてないかを探すに決まってんだろ!
…………
バンジは眉をぐっと寄せて周囲の焦土を見つめた
エリアポイント設置の任務から数日が経過したが、[player name]はいまだ「監護」されている
バンジはひとり、[player name]が言及していない病状を調べることで治療の一助になろうとしたが、さまざまな冷たい規則によって拒絶されていた
(今は、任務を与えることでストライクホークを追い払っている……)
あるぼんやりとした推測がバンジの心に浮かんだが、情報不足のためそれ以上推測を固めることができそうになかった
(まずはこの任務を完了してから、調査だな)
バンジは前のふたりに続いた。皆が周りに残留している焦げた臭いの中でしばらく西北方向へ進んでいると、クロムの端末の通信表示が再び点滅した
時間からすると、まだ遠くへは進んでないな
その通りです、議長
この任務のリスクを再評価したが、大量の赤潮に接触する可能性があるため、カムも小隊に参加させることにした
授格者の特殊性の関係から、なるべく彼は単独行動するようにしてくれ。それと、アシモフ特製の浄化装置を外させないように
承知いたしました
カムはもう着くはずだ。これからの作戦行動は隊長の君に一任する
それだけ言うと、ハセンは急いでいるように通信を切断した
議長、この任務の危険性が上がったって?
いや、潜在的な危険を考慮して、カムも同行させることにしたんだろう
だが本当にハセン議長の言う通り、ただ見逃した漏れがないかと確認するだけの任務なら
再評価されたリスクの原因とは、その「見逃した漏れ」にあるのだろうか?
はぁ、なんか目新しい任務内容かって思ったのにな
ここ、カムが食い終わったあとのアイスクリームカップより綺麗っすよ。赤潮がないことなんか、一目瞭然じゃないですか
俺が、何だって?
その声が聞こえた3人が振り向くと、あえて少しの距離を置き、しかめ面をして遠くないところに立つカムがいた
いらんおしゃべりをしている場合か
その時、彼らの横目にぼんやりと人影が映った
あれは誰だ?
あ?
誰かが後ろを通りすぎたんじゃないですか?
カムが振り向くと、不毛の地には人影ひとつなかった
行ってみようか
さっきの人物は西に向かった。ちょうどいい。我々の任務の目的地も西方向だ
あの人影と、残ってる赤潮がないかを見つけるんだろ。俺がいく
現在の地形は識別しにくい。カム、皆と一緒に目標地点に行ってから分散する作戦にしよう
ふん
虚ろな大地は海面のようで、黄ばんだ空の下、その地平線も煙で覆い隠されている。そのさまは燃え残った紙の焼け焦げた縁のようだった
カムはそれ以上しゃべらなかった。一定距離を維持しながら3人の後ろについて、周囲を見回しながら手がかりを探している
しかし、どこまで進んでも風景は変わり映えしなかった。燃え尽くされたもの以外、不毛の大地が残るのみだ
ここで分散して調査しよう
クロムが分散命令を出すと、そう遠く離れていない場所から何かの音が伝わってきた。しかし、振り向いても何も見えない
もしかしてここに、他に誰かがいるのか?
こんな何もないところに来る理由……ちょっと想像できないけど
先ほどの人影かもしれん、ちょっと見に行くぞ
皆は音がした方に行ったが、そこにはパニシングだらけの足跡以外、何もなかった
さっきから……見られてる気がする……
カムは少し遠いところに立ち、周りを見回したあと、その視線を彼らをここに運んできた輸送機に移した
チッ
俺もそんな感覚がある。前ここにいた誰か、かな?
……まだ同一人物かは確定できない
これらの足跡のパニシング濃度が非常に高いことから、侵蝕体もしくは昇格者が近くにいるようだという推測に留めるべきだな
カムの視線につられるように、クロムも輸送機が駐機している方向を見つめた
昇格者だとして、なぜ隠れるんだろう?
俺たちの注意を引き付けるため?
もしくは、相手は負傷していて戦闘を避けたいからかもしれない
クロムはひとつの可能性を考えた。もし彼の目標がこの足跡の持ち主なら、何があろうとこのまま追跡を続ける必要がある
今はすぐ結論を出せない。引き続き調査をしよう
検出装置を持ってここで分かれる。カムイはこのまま西側へ
了解っ!
バンジは東側へ、目をシャンと開けて他のメンバーの呼びかけに注意するんだぞ
……ラジャー
カムは北側へ。残りは私が行く
何かを発見したり危険に遭遇しても、勝手な判断で行動するな、常に通信を接続しておくように
了解