華胥が巨大な円形の装置に入ると、地面が揺れ始めた。どうやら昇降装置のようだ
これは……華胥の罠でしょうか?
敵の本拠地ですからね。安全地帯なんて望むべくもない。もし華胥がその気なら、とっくに仕掛けてきているでしょう
ですが……
一同がためらっているうちに、昇降装置はわずかに振動し、ゆっくりと降下を始めた
猶予はありません。今行かなければ間に合わなくなります
全速で向かいます!
昇降装置は沈鬱な音を響かせながら、下で戦う昇格者たちに近づいていく
αがロランの首を斬りつけ、ロランがぎりぎりでかわす。刃先がわずかに顔をかすったようだ
ささいな傷だが、ロランに実力の差を思い知らせるのには十分だったらしい
まだ続けるの?……もしこれでやめるっていうなら行かせてあげてもいいわ
続けたくないけど、勝手に「裏切り者」呼ばわりしてきたのはそっちだろ。僕を消したいんじゃないのかい?
ルナにとってはまだ利用価値があるから、少しの間なら見逃してあげる。どうしても今死にたいというなら、ご要望をかなえてあげるけど
それは遠慮しておこうかな――
グレイレイヴンを目標ポイントに誘導しました
華胥の機械的な音声が響き、昇降装置が最深部で止まった。錆びた滑車が、轟音をとどろかせる
メインゲストがお着きのようだね。じゃあ僕はここで失礼するよ
そうだ。僕の忠誠を証明するためにも、ひとつアドバイスを差し上げよう
あのルシアには、気をつけることだ
アドバイス?よりによってあれに気をつけろですって?
彼女は強くなった。そして、君はもう完璧ではなくなった
どういう意味?
ごめんごめん、言葉のチョイスが良くなかったかもしれないけど、心からの助言だよ。決して、バカにしてるわけじゃないんだ
αの斬撃をかわしたロランはいたずらっぽく微笑むと、黒闇の中へと消えた。残されたαは、昇降装置から降りてくる4人を見やる
グレイレイヴン……ルシア……
あなたが過ちを繰り返す前に……痛みすら感じる前に、消してあげましょう