Story Reader / 本編シナリオ / 13 終焉の福音 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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血のつながり

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このエリアの捜索もほぼ終わりましたが、いまだに何の手がかりもありませんね

マップのカバー範囲もここまでのようです。次はどう進みましょうか?

頭を悩ませる一同の目に、何やら慌てた様子の影が飛び込んできた

すみません、この人を見かけなかったかしら?

女性研究員は写真らしきものを取り出し、スカベンジャーに訊ねている

お前さん、お給金もらってる高等人種だろ?人探しなら部下にでも番犬にでもやらせろよ

プライベートのことだから……セキュリティスタッフに頼むわけにいかないのよ

お願いします、どうか見るだけでも……

その言葉を聞いたスカベンジャーは、地面にしゃがみこんだまま写真をちらりと見た

ああ、こいつか。消息を知りたいってなら、誠意を示してくれないとなぁ

研究員は慌ててポケットの袋を取り出し、男に渡す。男は受け取った袋をすぐさま開き、中の乾パンを口に入れた

そいつならあっちに行ったぜ

研究員は何度も頭を下げ、男が指さした方向へと走っていった。男は口をゆがめて笑った

まあ見たことはないんだけどな

スカベンジャーと研究員の様子から見て、かなり前の出来事のようですね

ここはこれ以上の手がかりがないようです。ついていってみましょうか?

一行は研究員の影のあとを追って、暗い路地裏へと入った

まだ捜査してない場所ですね……

入り口が意図的に隠蔽されていたようです

情報をファウンスの槍システムに入力すると、再び先ほどの研究員が現れた

路地を走っていた彼女は、泣きながら何者かに飛びついた。構造体だ

姉さん!

スカベンジャーは適当な方角を指しただけなのに、まさか見つかるなんて……あらかじめ捜索範囲を絞っていたからでしょうか?

ともに育った者同士であれば、行先の予測はある程度可能でしょう。相手の習慣や思考を熟知しているわけですし

そうなんですか……私にはそういう経験がないので……

リーフにきょうだいはいないんですか?

兄と姉がいますが、血はつながってないんです

もしつながっていたなら、少しはうまくいっていたかもしれません……

血のつながり、ですか……

研究員に抱きつかれた構造体は振り返り、驚きの表情を見せた

あなたは……リアドリンの妹の……ええっと、アンジーだったかしら?

あれ、人違いだったんでしょうか……?

まったく、なんでリアドリンがここにいるってわかったの?

姉さんはどこ!?どうしてこんなに長い間連絡をくれないの!?姉さんの位置情報を見て……やっとここがわかったのよ!

……通知がいったはずだけど。彼女は戦闘で重傷を負い、機体を換装してようやく回復したところ。今朝出ていくのを見たわ。まだ戦闘任務があるんでしょう

……姉さん、私のことを忘れてない?

記憶データは損傷していないと思うわ。昨晩私に挨拶してきたし

心配ならここで待ってるといいわ。私は任務があるから。じゃあね

女性構造体が手を振って去ると、アンジーは安心したように地べたに座り込んだ

お姉さんを心配しているんですね。それに自分は研究員なのに、お姉さんが構造体になってしまうなんて……

……当然何か理由があるんでしょう

アンジーは立ち上がって、膝の汚れを払った。近くのベンチに向かって歩き出したアンジーだったが、通信の通知音に再び足を止めた

メッセージ……姉さんから?

彼女は慌ててメッセージを開いた。見守る4人も身を乗り出し、スクリーンの文字を確認する

リアドリン

アンジー、久しぶり。最近連絡できなくてごめんなさい

実は何日か前に戦場で重傷を負ってしまったの。それで、救援キャンプで翼を持つ機械の天使に出会ったのよ。天使は昇格ネットワークというものの力を見せてくれた

リアドリン

かつて研究者だった私たちは、被験体不足を補うために徴用されて研究を続けられなかった……

けれど今また、パニシングを究明するチャンスが訪れたわ。だから私は天使の誘いに応じたの

さよなら、アンジー。生きて再会できることを心から願っているわ

メッセージを読み終えたアンジーはよろよろと後ずさり、またもや地に崩れ落ちた

……昇格ネットワーク……

彼女にはそれが何を意味するのかわからなかったが、本能的にその危険を察知していた

姉さん……私、必ず見つけるから!

アンジーは立ち上がり、体の汚れも気にせず歩き出した。歩きがてら通信端末の連絡帳を検索し、何者かと連絡を取っている

私です、アンジーです。リアドリンの位置特定の権限をください

だめだ、アンジー。姉につきまとうなと何度言ったらわかる。君は戦闘の障害になる。彼女が構造体になったことを快く思ってないのはわかっているが……

彼女だって君たちの生活のために頑張っているんだ。もし今職を失ったらどうなるのか、君だってわかっているだろう?

あぁもう、率直に言います。姉は部隊を脱走してどこかに行ってしまったんです!

なんだと!?証拠はあるのか?

試しに連絡してみてください

わかった、そのまま待て

ほどなく、通信越しの声は言った

……連絡が取れん。わかった、何が起きたかは知らんが、人をやるからそこで待っていろ

彼女が君のことを思って戻ってくることを願う。君の姉上の戦功は目を見張るものがある。我々にとって惜しい人材だ

通信終了後、それほど経たないうちに車が到着した。構造体3体を乗せた車のナビゲーションは、目的地の座標を明確に表示している

車はアンジーを拾うとすぐに出発し、4人の視界から消えた

間違いないようですね。行きましょう、指揮官

彼女、無事にお姉さんを見つけられるでしょうか……?

目的地が本当に昇格者の本拠地だったとしても、再会できる可能性は低いでしょうね

両手を握りしめるリーフの顔が悲しげに歪んだ

血のつながりというのは本当に複雑ですね。ともに成長して強く結びついた結果、相手を深い闇に導いてしまうなんて……

……血の、つながり……

ルシアがそうつぶやくのは2回目だ。彼女はきっと、ルナがなぜ昇格者になったのかについて考えている

なんでしょう、指揮官

……はい

やはり理解できません。なぜルナは昇格者になったんでしょう?

私は「改造に失敗して処理された」と聞いていたんです。本当はその時、何があったんでしょうか?

ルナはなぜもうひとりの私と一緒にいるんでしょう?もし彼女も私であるなら……どうして昇格者とともにあることを選んだんでしょうか?

……つまり?

違う経験……

もしもう一度やり直せるなら……ぬくもりに満ちた環境で生きられたなら……彼女たちは今の道を選ばなかったんでしょうか?

……もうひとりの自分が何を経験したのか知れば、彼女がなぜ今の道を選んだのかわかるかもしれません

ですが……

ルシアは顔を上げ、空に向かって手を伸ばした。厚い雲越しに射す太陽の鈍い光が指の隙間からこぼれる

もし彼女の記憶から、全てが偽りで、私もここにいるべきでないとわかってしまったら……

私も……彼女と同じようになってしまうんでしょうか?

断言されるんですね

もしそうなってしまったら、指揮官はどうされるんですか?

その答えを聞いて、ルシアは空へと伸ばしていた手を下ろした。笑顔には不安と苦渋がにじんでいる

私と彼女はもともとひとりです。彼女と同じ道を選んでもおかしくない私を、本当に信じてくださるんですか?

それは……彼女が私と同じ経験をしたなら、彼女もグレイレイヴンの一員としてここにいた、ということでしょうか?

そう答えても、ルシアの瞳に浮かぶ不安は払拭されない

未知への迷い、喪失の恐怖、真実を知った後に直面するかもしれない別れ……

その全てが太陽を覆う雲のように、ルシアの心を覆っていた

ありがとうございます、指揮官……

ルシアはうなずいた。瞳に浮かぶ不安はそのままだったが、少しだけ笑顔が深まる

ルシアは振り返り、目標ポイントに向かって大股で歩き出した

その足取りはいつも通りに頼もしく、まるで狙いを定めた灰鴉のように翼を広げ、雲に覆われた空へと突進した