Story Reader / 本編シナリオ / 13 終焉の福音 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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笛を吹く者

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正方形の補助装置から小型メモリーを取り出した瞬間、ファウンスの槍システムの端末がわずかに振動した

ファウンスの槍

新しい情報記録を検出。生成済みの影の映像を更新しますか?

更新

ファウンスの槍システムが新たな影の映像を生成し始めた

更新部分のみ再生

ファウンスの槍

更新地点はここから近いため、そこまで進んで確認してください

指示ランプが点滅して4人の前にナビゲート用のルートが現れた。それは従業員休憩室へと続いている

リーフの言う通りですね。問題は確かにここにあるようです

そうなんです

彼がそう話した時、突然ドアが開き、背の低い女の子が走りこんできた

彼女のそばにはひとつの機械のブロックが浮かんでいる。彼女のための補助装置のようだ

ココ。お帰り、戻る準備をしよう

聞いて聞いて~!ココね、超大発見をしたの!

指揮官風の人物

何?

ココ、赤い潮が死んじゃった人の意識を残せるってことを発見したの。しかも中から出て来て、話すんだよ!

指揮官風の人物

何だって!?

ココ、赤い潮の中で、あの失踪した指揮官を見たの!

その場にいるグレイレイヴン4人とココ以外の3人の影、全員が不可解な表情になった

彼女、ずっとココの名前を呼んでたよ。あと姉を見た?って聞いてきたの

指揮官風の人物

バカな、もしかして神話の冥海になったとでも言うのか?

遅いと思ったら、まだ白昼夢でも見てるのか?ハハハハ!

ココの顔から笑顔が消え、ふたりのからかい口調に怒りで震えて唇を噛んだ。指揮官風の人物も自身の失態に気づき、ココに続きを話すよう促す

失踪した指揮官の他に……ココは他のスカベンジャーから聞いて、2つの共通点を発見したの

ココは無理に愛想笑いをしているが、口調には元気がなかった

まず、彼らが聞いた死者の声は、赤い潮の中で死んだ人のものだった。これは神話の冥海とは違ってて、全ての死者の声が聞こえるわけじゃないの

指揮官風の人物が頷くと彼女は少し落ち着き、モニターを操作して、ある映像資料を3人に見せた

赤い潮で死んだからそうなったのか、それとも死んでから赤い潮に飲み込まれたからか、この点に関してはまだわからないの

だってココはあの指揮官がどうやって死んだのかわからないから。赤い潮の近くで彼女の遺品を見つけただけ

声は聞こえたけど、はっきりしなくて。赤い潮が彼女の意識を保存したのか、彼女を真似てるのかはまだ判断できないけど……

2つ目、スカベンジャーもあの指揮官の声が聞こえたって言ってた

指揮官風の人物

要するに、これは誰でも観察できる現象で、民間伝説の超自然現象とは違うってことだな?

ん~、でも、ココが赤い潮のそばにいる時だけ、あの指揮官が現れるの。誰だって知らない人には挨拶しないでしょ?

そんなことはない。俺は美人だったら、知らなくても挨拶するな

面倒だな。お前、いったん赤潮の中で死んで俺に観察させろよ

その言葉にロラという男性構造体の顔からは笑いが消え、口を歪めてうなだれた。会議室は一瞬で静まり返った

指揮官風の人物

さあ、行く準備をしよう

テーブルの前にいた4人は荷物を片づけ、ここを離れる準備をし始めた

……ロラの声はどこかで聞いたことがあるような……

4人は記憶の中からこの聞き覚えのある声を探っていった

あっ、思い出しました

……廊下で……

???

……助けて……

リーフ

え……?

???

……助けて……

全員

……………………………………

……思い出した。確かに彼の声です

…………

どうしてこんなことに?彼は結局……赤潮で死んだということですか?

私たちが得た手がかりからすると、その可能性が高そうです

赤潮が今のように巨大になったのは、多くの残骸を分解したからでしょう

それにしても、なぜこんなに多くの人と侵蝕体がここに?

いるのではなく、集まって来たのかもしれません

集まって?赤潮に引き寄せられたのでしょうか?

……「ハーメルンの笛吹き男」みたいに……何かに導かれたのでしょうか

あ、なんでもないんです、子供のころに読んだ童話を思い出して……

リーフが説明しようとした時、ドアが倒れる音が響いた

その陰から新しい影が現れたが、その姿は少しボヤけている。しかし人魚のような尾ひれは見間違えようがない

侵蝕体!?ぶっ潰せ!

だが一般の構造体の力では昇格者に太刀打ちなどできるはずもなく、男性構造体は部屋の奥に投げ飛ばされ、少しもがいたあと動かなくなった

指揮官風の人物

ココ!お前は早く撤退しろ!我々の任務は資料を持ち帰ることだ!

指揮官風の人物が命令した瞬間、ただの人間である指揮官の体は天井までふっ飛ばされ、脆くも首は裂け、声もなく倒れた

残されたふたりの構造体は悲痛な声をあげつつも、指揮官の命令を守ってためらうことなく走り出し、別々に逃げていく

……なんで別々の方向に逃げるかなぁ、面倒くさ……

ラミアは逃げるふたりを見やり、身をひるがえしてロラを追いかけた

影はココについて進んだ。彼女は自分の浮遊補助装置を持って下の階へ逃げたが、どれほどもいかないうちにロラの絶叫を耳にした

大変だわ、私たちがかなうような敵じゃない!

なんとか……なんとか……

ココは自分の補助装置を掴んで廊下の隠し扉に押し込み、ドアのカードキーを持って更に廊下の家具を壊し、少しでも食い止めようとした

補助装置が隠し扉に押し込まれた瞬間、目の前の影が全て消えた。そのあとに何が起きたのは判然としないが、ふたりの会話だけが記録されていた

ラミア

何か……なくなってない?

ココ

なんであんなところから出てこれるの……待って、侵蝕体って話せるの?

ラミア

……そこから説明しなきゃなんないの?

ココ

あなたは一体誰……!?

ラミア

誰でも関係ないよ、昇格者の目と鼻の先でコソコソ探ってるんなら、無事に帰れるなんて思わないことね

ココ

昇格者ってなに?目と鼻の先ってどういうこと??赤い潮はあなたが作ったの?

ラミア

一度にたくさん聞かないでよもう、答えにくいなぁ

ひとつだけ教えてあげると、天からの意志だってこと……だから今は情報なんかこれっぽちも漏らさないからね

爆発音とともに階段が崩れ落ちる音を聞き、ココは悲鳴をあげた

ラミア

油断してしゃべりすぎちゃった。ま、彼女はもう死んだし

ラミアはため息をついて2階から飛び降りた。彼女のぶつぶつと言う愚痴も次第に遠ざかってゆく

ラミア

あー面倒くさい、次はあの逃げたやつを追いかけないと……あの怪我ならそう遠くないはず

華胥がここにいるなら、昇格者の拠点がこの近くにあるのも理にかなっていますね

逆に、昇格者の拠点がここにあるから、華胥がここに連れて来られたという可能性もあります

どういう意味でしょう……?

華胥がわざと昇格者の位置を洩らした、ということでしょうか?

この時、メッセージの通知ランプが点滅し始めた

あぁ、やっと繋がった!

なかなか繋がらなくて心配だったのよ

それに、さっきすごい量の赤い何かが、そっちに向かっているのを見たもんだから

そっちとも連絡が取れなくなるんじゃないかって心配してたんだから!

ええ。電波の問題もあるけれど、あの赤い液体みたいなもののせいで、複数の小隊と連絡が取れなくなってるの

一体何が起きてるの?話してくれない?

他の小隊にも注意喚起したいし

赤潮か……

あなたの言う通り、華胥はわざとゲシュタルトにここの座標を検知させた可能性があるわね

昇格者が赤潮で何かしようとしてるなら、彼らの拠点も目の前のはず。まずは昇格者をどうにかする必要あり、か……

目標を勝手に変更するのは、問題になりそうで心配かしら?

いい答えね。変更の件は上層部に報告しておくわ。あともう少し人手も必要よね

でもこのエリアの電波の悪さは知ってるわね?フィードバックできるのは日が暮れる頃だと思う

大胆に任務を進めましょ!それにここまでの情報からすると、華胥が昇格者の本拠地にいる可能性が高いし

確かに

でも調査の前に、ここを出るために手助けがいるでしょ?

オッケー、手配するわ。シンデレラが舞踏会終わりに馬車を待ちわびる気持ちで、私の船を待ってて!

いい知らせはないけど、悪い知らせもないわ

まだあなたたちが離れた時の位置に停まっているようね。ゆっくりと上昇しつつあるけど、すぐにスピードは上げれられないわ。今はまだ地球の近くだから危険よ

ほとんどの人は降りて来たわ。上に残っている人は片づけにてんてこ舞いよ

でも、この件はある人たちのメンツをぶっ潰したわね

空中庭園にいれば安全だと思ってる連中よ

地上のことを解決しない限り、この手のことが何回起きてもおかしくない。毎回うまく対応できるって保証もないし

まあいいわ、上の厄介なことは上の人たちに任せましょう。私たちにはもっと重要なことがある

こっちを解決しない限り、上が完全に安全になるとはいえないわ

ブリギットは爽やかに笑って手を振り、そして通信を切った

……これから忙しくなりますね